犠儀式④
コインは動かなかった。
「どうして…。動かないの?」
消え入りそうな声で天乃は、そう云うと大きな瞳に涙を浮かべている。
「【生贄様】は、お帰りになられてしまったのかも知れません…。」
七瀬は、天乃の肩に優しく手を置いた。
「どうしたら親友だった子と、話す事が出来るのですか?【生贄様】でも駄目なのでしょうか?」
大きな瞳から涙が溢れていく。
「日を改めましょう。もしかしたら、次は成功するかも知れません…。」
七瀬は俯きながら、そう云い。折原の方へと向き直り…。
「録画は終わりです。」
と云った。
「解りました。」
折原は、そう返すと置いてあったスマホを取りに向う。
「何で話させてくれないの…。何で。」
天乃は机にあった儀式道具を手で払う。紙とカード、身代わり人形が床に落ちていく。伶音は天乃を宥め、七瀬は儀式道具を拾っていた。
「あっ…。」
手にした身代わり人形を観た七瀬は言葉を告げた。
「これ、視て…。」
その身代わり人形を机に置く。
其処には左眼の釦が無くなった身代わり人形が横たわっていた。
「嘘でしょ?」
折原が此方へ視線を向け…。左眼が無くなった人形は生贄の証なんです…。天乃さんは生贄に選ばれてしまったのだと思われます。と言葉を紡いだ。
「ソレって…。本当なんですか?」
伶音はポツリと言葉を吐いた。
「解りません。ただ、智絵の時も響子の時も身代わり人形の左眼が無くなってから、ああいった事がありました…。」
と、七瀬は答えた。
「どうしよう。あ、あたし…。」
天乃は何かに怯えているのか、落ち着かぬ様子でキョロキョロと辺りを見渡していた。
「大丈夫ですよ。天乃さん。今日は遅いので、お二人はユックリと休んで下さい。この後、私達は対策を考えますから。また後で連絡しますね。」
そう折原が言葉を発して…。
その日は解散となった。




