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憂鬱な天国 Ⅰ 幽霊  作者: 倉木英知
生贄様 犠儀式
72/106

そうなるよな…。


 総合体育館に辿り着くと、正面に硝子製の大きな2つの扉があった。そして、その奥に階段が見える。


 「凄いなぁ。建物の中も左右対称とは…。」

 

 天乃の言葉に間違いはなかった。建物の中に構造されたモノ、全てが左右対称だった…。あっ。重そうなんで、お先にどうぞ。でも、左でもお好きな方で。と、【右】を強調して、天乃は怜音の背中を強く押した。


 「えっ?」

 怜音は、少し驚いた表情を見せ…。

 「あっ、はい。」

 と、右側の硝子製の扉を押して中に入る。硝子製の扉を抜けると存在感のある幅の広い階段があった。コンクリート造りの階段だ。踏み面。蹴上げ。段鼻。蹴込み。其のいずれもがバランスが良い。洗練された匠の業を感じる。


 「映画で見掛ける宮殿みたいだなぁ。おい。すっげぇぇぇ。」


 と叫ぶ天乃。


 「よくないと思うよ。そういう言い方。」


 と諭す怜音。完全に姉弟の立場が逆になっていた。幅の広い階段を上がると面積のある踊り場が現れる。其の左右に大きな鏡が、やはり対面する形で壁面に存在していた。よく磨かれていて曇り一つもない。


 そして、其の踊り場は左右の折り返し階段へと繋がっている。


 「何方どちらから上がろうか?』


 天乃は何故か、踊り場で止まり悩んでいる様だった。


 「いや。どっちで上がっても変わらないけど…。」

 「だよなぁ。でもさ雰囲気ってあるじゃない?」

「雰囲気?」

「例えば、右回りか、回りか。」


 天乃は左を強調して云った。


 「どっちでもいいんじゃない?上に上がれるんだからさぁ。」


 怜音は踊り場で悩む義姉に…。そろそろ時間なんだから。と、催促した。


 「こっちでいいでしょ。」

 怜音は、足早に左側の階段を上がっていく。


 そうだよなぁ…。そうなるよなぁ。時間ないしなぁ。と天乃は呟き、伶音の後を追うように階段を駆け上がっていった。


 クルクルと幾度か曲がると、ようやく3階へと辿り着く。えっと…。確か、右だったかな。怜音は右へと視軸を移し…。


 「あった。ほらぁ、もう皆いるみたいだよ。」


 と続けた。


 「あっ。此処からは予定通りで…。」


 そう言葉を告げると、天乃の纏う雰囲気が変わる。純粋な子供みたいな雰囲気だ。


 「ねっ? 怜音お兄ちゃん。」


 キラキラと輝く瞳。猫撫で声。しんなりとした動き。明ら様にピュアを装っている義姉がいる…。


 『えぇぇぇ?』

 怜音は顔面蒼白になった。

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