そうなるよな…。
総合体育館に辿り着くと、正面に硝子製の大きな2つの扉があった。そして、その奥に階段が見える。
「凄いなぁ。建物の中も左右対称とは…。」
天乃の言葉に間違いはなかった。建物の中に構造されたモノ、全てが左右対称だった…。あっ。重そうなんで、お先にどうぞ。右でも、左でもお好きな方で。と、【右】を強調して、天乃は怜音の背中を強く押した。
「えっ?」
怜音は、少し驚いた表情を見せ…。
「あっ、はい。」
と、右側の硝子製の扉を押して中に入る。硝子製の扉を抜けると存在感のある幅の広い階段があった。コンクリート造りの階段だ。踏み面。蹴上げ。段鼻。蹴込み。其の何れもがバランスが良い。洗練された匠の業を感じる。
「映画で見掛ける宮殿みたいだなぁ。おい。すっげぇぇぇ。」
と叫ぶ天乃。
「よくないと思うよ。そういう言い方。」
と諭す怜音。完全に姉弟の立場が逆になっていた。幅の広い階段を上がると面積のある踊り場が現れる。其の左右に大きな鏡が、やはり対面する形で壁面に存在していた。よく磨かれていて曇り一つもない。
そして、其の踊り場は左右の折り返し階段へと繋がっている。
「何方から上がろうか?』
天乃は何故か、踊り場で止まり悩んでいる様だった。
「いや。どっちで上がっても変わらないけど…。」
「だよなぁ。でもさ雰囲気ってあるじゃない?」
「雰囲気?」
「例えば、右回りか、左回りか。」
天乃は左を強調して云った。
「どっちでもいいんじゃない?上に上がれるんだからさぁ。」
怜音は踊り場で悩む義姉に…。そろそろ時間なんだから。と、催促した。
「こっちでいいでしょ。」
怜音は、足早に左側の階段を上がっていく。
そうだよなぁ…。そうなるよなぁ。時間ないしなぁ。と天乃は呟き、伶音の後を追うように階段を駆け上がっていった。
クルクルと幾度か曲がると、漸く3階へと辿り着く。えっと…。確か、右だったかな。怜音は右へと視軸を移し…。
「あった。ほらぁ、もう皆いるみたいだよ。」
と続けた。
「あっ。此処からは予定通りで…。」
そう言葉を告げると、天乃の纏う雰囲気が変わる。純粋な子供みたいな雰囲気だ。
「ねっ? 怜音お兄ちゃん。」
キラキラと輝く瞳。猫撫で声。しんなりとした動き。明ら様にピュアを装っている義姉がいる…。
『えぇぇぇ?』
怜音は顔面蒼白になった。




