混乱。或いは其処に…。
もう1つの気掛かりな事。何故【心的外傷関連の刺激の回避】が起きなかったのか。笠原にとって廃墟ビルは禁忌となっている場所だ。心が心を守る為に意識、無意識に関わらず廃墟ビルへ向かう事を拒否する筈なのだ。混乱。或いは其処に…。笠原にとって有意義な何かがあったのか…。
「あぁ…。」
天乃は頭を抱える。最悪な考えがグルグルと天乃を取り囲んだ。何か手掛かりは無いのだろうか…。
「あっ。」
過去の笠原との会話の記憶が甦る。
【そう云えば天乃さんは日記は付けてないんですか?僕、未だに手書きで日記帳なんですよ…。】
笠原は几帳面な性格で、其の日の事を日記に事細かく記していた。と云う事は…。其処に鍵となる事柄が記されている可能性がある…。
『彼奴、実家住みだったからなぁ…。』
天乃はスマホの画面を開く…。
「あっ…。天乃です。1つお願い良いですか?笠原の事なんですけれど、笠原の家って家宅捜索しました?えっ。なるほど…。其れなら日記帳ってありました?えっ?無かった?あっ。それなら…。あたし、笠原の家で調べたい事があるので、許可頂けますか?もう大丈夫?あっ…。はい…。ありがとうございます。ではまた…。」
通話を終えると天乃は顎に右手を添えて考え込む。
『無かった?日記書くの止めてたのか?いや、彼奴の性格上、書かない筈は無いんだけどな…。と云う事は…。誰かに持っていかれたのか…。ソレとも笠原が彼処に置いているのか…。まぁ。笠原の両親が落ち着く迄は行けそうもないな…。コレは少し後にするか…。』
また思考を巡らす。
『 さて…。どうしたものか?【身代り人形】から攻めてみるか。』
天乃は、また電話をかけた。
「おっ。今回は早いな。」
「学校が休みだしねぇ。」
「お前の学校で、何か人形みたいなの流行ってる?」
「んっ…。そうだなぁ、魔除けの人形を持っている人が結構いるよ。」
「そんなに流行ってるの?それなら…。例えばさぁ。それを使った遊びみたいなのある?」
「何か降霊術とかで使ってるらしいよ。確か【生贄様】だったかな…。えっ。それがどうかしたの?」
『ビンゴだな。』
天乃は何かを思い付いたのか…。ニヤニヤと意地の悪い笑顔を浮かべている。
「ねぇねぇ、お願いがあるんだけど聞いてくれる?」
天乃は仔猫の声色で甘えた。
義弟にお願いをした後、三度となる電話を掛ける。留守番電話に繋がった。
「璃央、頼みがある。【生贄様】って降霊術について調べてほしい。些細な事でも良いから、何か解ったら教えてくれ。』
吹込を終えると足をバタバタとさせながら
机に頬杖を付いた天乃であった。




