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憂鬱な天国 Ⅰ 幽霊  作者: 倉木英知
生贄様 犠儀式
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混乱。或いは其処に…。


 もう1つの気掛かりな事。何故【心的外傷関連の刺激の回避】が起きなかったのか。笠原にとって廃墟ビルは禁忌となっている場所だ。心が心を守る為に意識、無意識に関わらず廃墟ビルへ向かう事を拒否する筈なのだ。混乱。或いは其処に…。笠原にとって有意義な何かがあったのか…。


 「あぁ…。」

 天乃は頭を抱える。最悪な考えがグルグルと天乃を取り囲んだ。何か手掛かりは無いのだろうか…。


 「あっ。」

 過去の笠原との会話の記憶が甦る。


 【そう云えば天乃さんは日記は付けてないんですか?僕、未だに手書きで日記帳なんですよ…。】


 笠原は几帳面な性格で、其の日の事を日記に事細かく記していた。と云う事は…。其処に鍵となる事柄が記されている可能性がある…。


 『彼奴あいつ、実家住みだったからなぁ…。』


 天乃はスマホの画面を開く…。


 「あっ…。天乃です。1つお願い良いですか?笠原の事なんですけれど、笠原の家って家宅捜索しました?えっ。なるほど…。其れなら日記帳ってありました?えっ?無かった?あっ。それなら…。あたし、笠原の家で調べたい事があるので、許可頂けますか?もう大丈夫?あっ…。はい…。ありがとうございます。ではまた…。」


 通話を終えると天乃は顎に右手を添えて考え込む。


 『無かった?日記書くの止めてたのか?いや、彼奴あいつの性格上、書かない筈は無いんだけどな…。と云う事は…。誰かに持っていかれたのか…。ソレとも笠原が彼処あそこに置いているのか…。まぁ。笠原の両親が落ち着く迄は行けそうもないな…。コレは少し後にするか…。』


 また思考を巡らす。


 『 さて…。どうしたものか?【身代り人形】から攻めてみるか。』


 天乃は、また電話をかけた。


 「おっ。今回は早いな。」

 「学校が休みだしねぇ。」

 「お前の学校で、何か人形みたいなの流行ってる?」

 「んっ…。そうだなぁ、魔除けの人形を持っている人が結構いるよ。」

 「そんなに流行ってるの?それなら…。例えばさぁ。それを使った遊びみたいなのある?」

 「何か降霊術とかで使ってるらしいよ。確か【生贄様】だったかな…。えっ。それがどうかしたの?」


 『ビンゴだな。』

 天乃は何かを思い付いたのか…。ニヤニヤと意地の悪い笑顔を浮かべている。


 「ねぇねぇ、お願いがあるんだけど聞いてくれる?」


 天乃は仔猫の声色で甘えた。


 義弟にお願いをした後、三度となる電話を掛ける。留守番電話に繋がった。


 「璃央りお、頼みがある。【生贄様】って降霊術について調べてほしい。些細な事でも良いから、何か解ったら教えてくれ。』


 吹込を終えると足をバタバタとさせながら

机に頬杖を付いた天乃であった。

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