預言者。若しくは…。
神木の思考回路も徐々に起動する。感じた事の無い嫌悪感を感じ、身震いをしていた。
「確かに偶然じゃないといけないよね。でもさ…。もしその仮説があっていたとしても…。どうすれば、そんな事が出来るって云うの?偶然すら利用したって事?」
神木は下に俯き、思考を巡らす。
「あたしの内で得体の知れない違和感が膨れている。そもそも、不自然な迄に偶然が続くものなのか?」
夜の闇が2人を包む。ひんやりとした冷気が肌に触れた。闇とは何かに対する畏れを膨張させるのかも知れない。そして心が畏れで飽和した時、日常的なモノ総てを非日常的なモノへと変貌させるのだろう。
「笠原君が体験した偶然が総て偶然じゃないとしたら…。」
「笠原に起きた出来事、総てが導かれていたのなら…。」
神木は冷静に言葉を紡ぐ。
「笠原君に起こった事、起こすであろう事を予知した?それとも、笠原君の運命を知っていた?未来を見透してるって事?でも、どうやって…。」
天乃は想いに任せ言葉を吐く。
「もし仮にそうだとしたのなら…。其奴は預言者か?」
「それとも神様?」
神木は言葉を繋げた。
そして…。また声は重なる。
《しかも…。完全なる悪意で…。そうだとしたら…》
「其奴は…。」
「その人は…。」
「此の世界に存在してはならない…。」
2人の声が重なり、同時に歩みを止めた。闇が瞳に映らない程の速さで、ノロリと浸食してくる錯覚を感じる。天乃は何かを振り払う様に頭を揺さぶった。
「だから…。笠原が殺害された方法は偶然じゃなければならないんだ…。」
神木は無言で頷く。
そして2人は闇に吸い込まれる様に再び歩き出した。その先が…。 【憂鬱な天国】へと続く道とは知らずに…。




