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憂鬱な天国 Ⅰ 幽霊  作者: 倉木英知
闇が嗤う
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有り得ない程の偶然。


 天乃が霊園から出ると眼の前にユラユラと黒い闇が揺れていた。その闇は天乃に気が付くとユックリと歩き出した。


 「すまない…。遅くなった。」


 天乃は闇に向けて、声を投げる。


 「いや。気にしなくて良いよ。」


 と闇は答えた。闇は徐々に姿を現していった。闇から影へ。影から人へ。帽子を深く被り、天乃と似たパーカーを着た女性が立っていた。


 「そもそも、呼ばれた時点で、ある程度は覚悟していたよ。いつものようにね。」


 天乃に向かい微笑む。その女性は天乃の幼馴染でジャーナリストをしている神木かみき璃央りおだった。天乃が心を許している数少ない人物である。


 2人は余計な会話は交わさなかった。


 《さぁ帰ろうか。》と二人の声が重なる。そして、同調しているかの様に歩き始めた。


 お互い無言の儘だった…。


 暫くすると…。

 神木は天乃に問い掛ける。


 「笠原君には、真実・・を報告出来たの?」


 天乃は少し哀しげな顔を見せた。


 「いや…。言えなかった事が幾つかあったよ。彼奴あいつには安らかに眠っていて欲しいんだ…。」


 「そっか…。」


 沈黙が暫しあった。夜空に浮かぶ三日月が少し揺れた。


 「まぁ。方便・・って言うしね…。」


 神木は天乃の顔を覗き込む。


 「詭弁だよ。詭弁…。」


 神木に眼もくれずに天乃は返した。そして…。溜息を吐く。


 「云えない事もあるんだ。知らなくて良い事は知らなくて良いんだよ…。もし、知ってしまったら、其れこそ笠原が化けて出てくる事になるぞ…。」

 「ソレはそうだけどさ…。」

 「其れに何て伝えれば良いのか、あたしには解らなかったんだ。様々な偶然・・が重なった結果、笠原には、ああいう悲劇が起こった。其れも有り得ない程の偶然がな…。でも…。」

 「でも?」

 「笠原が殺害・・された方法だけは、どうしても偶然・・でなければならないんだよ。」


 そう。笠原は自殺して死んだのでは無かった。司法解剖の結果、笠原は【毒殺・・】されていた事が判明したのである。


 「偶然でなければならない。ってどういう事?」


 「笠原は薬品を投与されて死んだんだ…。問題は、その【薬品・・】だよ。」


 闇が嗤った…。

 そんな気がした。

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