憂鬱な天国 死神の慟哭
あたしの脳内で【記憶に取り込んだ言葉】が【想像した映像】として再生されていく。
①廃墟ビルの前で殺害された女子高生は聖堂学園の三年生。名前は片桐 響子。
②片桐は虐めを受けていたらしい。
③片桐が殺害された二週間程前、廃墟ビルで飛び降り自殺をした女子高生がいた。同じく聖堂学園に通う三年生。名前は水瀬智絵。
④水瀬も虐めを受けていたらしい。
⑤彼女達が通う聖堂学園では、黒魔術や降霊術の様なモノが流行っている。【生贄様】と云うらしい。
⑥廃墟ビル近辺では複数の人間が幽霊らしきモノを目撃している。
⑦2年程前から、都内の至る所で猟奇的殺人事件が多発している。
⑧水瀬智絵と片桐響子の幼馴染である七瀬紗希が次に殺されるのでは?
⑨左眼が無くなった身代わり人形が不幸を呼ぶ。
あたしが知っていた事。知らなかった事。総てが虚しさを感じさせるモノだった。
『まだだ…。情報が足りない。』
想像の世界から現実の世界へ戻るのと同時に、スマホが着信音で、あたしを呼ぶ。
画面に表示された名前を視て…。
『彼奴か…。遅いんだよ。』
と呟きが漏れる。
通話ボタンに親指を押し付けようとするが、早まる心臓の鼓動の所為で指が震えていた。何とかボタンを押して、スマホを右耳にあて、あたしは声を発する。
「遅いんだよ…。この莫迦…。あたしの電話は6秒以内に出ろって、いつも言ってるよな?」
ふぅ。とスマホ越しに溜息が聞こえ、少しの沈黙の後、聞き慣れた声が言葉を紡いだのだった。
「悪かったよ。でも何でいきなり暴言を吐くの?そういうの人としてどうかと思うんだけど…。」
義弟である怜音の聲を制する様に、あたしは言葉を重ねる。
「お前の学校でさ。二週間前に自殺した女子生徒がいたんだろ?」
「いたよ…。でも、その事は姉さんには、言ってた筈なんですけど…。」
『?』
「その時に、興味ない事は覚えてないんでしょ?」
『確かに聞いていた気がする…。』
刹那的に…。
その時の事が脳内で再生された。
『まぁ…。いっか。』
「昨日、殺された女子生徒も、お前の学校だよな?」
「そうだよ。緊急集会で話があった。かなり酷い殺され方をしたんだって。」
『笠原…。何があった?』
また想像してみる。
『幽霊に脅えていたのに何故、あのビルに行ったんだ?もしかして…。』
あたしの考えを打ち消す様に、義弟は言葉を重ねてきた。
「それがどうしたの?あっ…。僕の事が心配で電話くれたんでしょ?」
あたしの気持ちを無視する言葉に怒りを覚える。
『誰に似たんだ?此奴…。』
「誰が、お前の心配をするか…。その女子生徒の傍で死んでいた奴は、あたしの知り合いだ。昨日、別れた直後に事件に捲き込まれたみたいなんだ…。」
『もしかしたら…。また…。あたしの所為で…。こういう事が続くから陰で 【死神】呼ばわりされるんだ…。』
過去の忌まわしい記憶が脳内から漏れ出す。両親も。姉の様に慕っていた人も。恋人も。友人も。皆死んだ…。
感情が暴走し、義弟へ向けられる。
「何で、あたしの周りばかり…。親しい人は…。いなくなる…。」
泣き声ですら無い…。
嗚咽に似た心の叫びが漏れた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁあ…。」
静寂が世界を飲み込む。
あたしの世界は時を止めた。




