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憂鬱な天国 Ⅰ 幽霊  作者: 倉木英知
幽霊解体新書
56/106

憂鬱な天国 想像の世界


 「笠原が死んだだと?」


 跳ね上がる様に身を乗り出す。テレビの中は出演者達の感想の様な言葉だけが飛び交っていた。


 『何でも良い。少しでも情報を…。』


 憶測の言葉。テロップの文字。画面に映し出された映像。神経を研ぎ澄まし、あらゆる情報を自らに取り込む。眠りについていた思考回路が、ようやく機能し始めた。


 その時、不意にテレビから聞き慣れた言葉が聞こえた。其の言葉に身体は過剰に反応する。


 『聖堂学園?義弟が通っている高校じゃないか…。』


 すぐさまスマホを取り出し、電話をかける。耳障りの悪い電子音だけが暫くの間、耳に響いただけだった…。


 『くそっ。いつもこうだ。』


 寝癖のついた髪の上から頭をむしり、電話に出ない相手に罵声を浴びせる。


 『情報が足りない…。』


 スマホをポケットに仕舞い、ベッドからパソコンが置いてある机まで、乱雑に放り出された衣服の海を脚で掻き分けて向かった。素早くパソコンの電源を入れる。微かに空気の振動で機械的な音が伝わった。立ち上がるまでの時間が、やたらと遅く感じたのだった。


 感情は言葉となり、心を埋め尽くしていく。笠原に何があった?


 カチカチカチ…。と意識の外の彼方から聞こえる起動音で我に帰った。無意識に指がキーボードをピアノの様な音色で奏でていく。次々とネットの海を泳ぎ、るサイトに辿り着いた。


 『目撃情報は無いのか?』


 期待とは裏腹に確信に近付く事は書かれてはいない。ただ、殺害された女子高生についての気になる噂が書き連ねてあった。画面上に散りばめられた文字を自らの欲望を満たすかの様に、貪り読み漁る。


 ✖✖らしい。✖✖みたいだった。書かれている内容の殆どが噂を揶揄する表現だった。だが、噂と云うのは莫迦にしてはならない。噂だからと見落としてはならない。予想外の事柄にこそ、真実が存在している時がある。


 気になる噂を頭の中で整理する。


 『少しずつで良い。』


 そして…。

 パソコンの画面から…。

 記憶に移動した言葉を並べ…。

 あたしは想像の世界へと飛び込んだ。

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