憂鬱な天国 扉は開かれる。
あたしの眠りを妨げたのは、消魂しく叫ぶスマホの音だった。起きたばかりの脳は思考を放棄している。無意識に手を伸ばし、瞳を閉じた儘、スマホを耳にあてる。
「あぁーい…。」
言葉なのか吐息なのか理解しづらい音が唇から漏れた。
「✖✖警察署の楠木と申しますが、星月さんでしょうか?」
低く、落ち着きのある声が聞こえた。
「はぁ…。」
想像もしていない電話に…。
気の抜けた返事で答える。
「天乃さんで間違いないですか?」
「はい。あたしですけど。」
まだ思考は追いついてこない。
「突然で申し訳無いのですが…。捜査に協力をして頂きたいのですが宜しいでしょうか?」
「大丈夫ですけど…。何か?」
「ありがとうございます。昨晩、笠原慎二にお会いしていませんでしたか?」
「はい…。会いましたが、其れが何か?」
棒読みの様に言葉が漏れる。
感情はこもってはいない。
「笠原さんに何か変わった様子はありませんでしたか?」
そう云えば昨晩、彼奴はあたしに【幽霊が存在するのか、しないのか】と云う様な事を話してきた。だから、あたしはあたしなりの考えを告げた。結局は自分が決める事だ。とあたしが言うと彼奴は満足したかの様な表情を浮かべ。そうかも知れませんね。気にしない様にします。と返してきた。其の後、特に変わった様子は無く普段通りの下らない雑談を小一時間程して別れた筈だ。
その後、彼奴に何かあったのか?
「いや…。特に変わった様子は無かったですよ。何かあったのですか?」
いや…。それなら良いんです。ありがとうございました。と一方的に話を終え、通話を静かに切られた。モヤモヤとした想いが頭を支配する。
ちっ…。舌打ちをしながらテレビの電源を入れた。
『さっきの電話何だったんだ?』
うつらうつらと画面を見ていると、見た事のある風景と、先程、聞いたばかりの【笠原慎二】と云うテロップが画面に映っている事に気付く。
『ん?』
意識を集中させる。
【✖✖区の路地裏で2人の学生の遺体を、通り掛かった新聞配達員が発見しました。女子高生とみられる遺体は頭部の損傷が激しい状態で、男子大学生の遺体は両眼が潰されている状態だったとの事です。】
テレビのアナウンサーが…。
造ったかの様な悲しそうな顔で告げた。




