不条理劇 私へ
また私は此処にいる。2日前にも訪れた場所。廃墟と化したビルの屋上だ。此処は貴女が飛び降りて死んだ場所…。
私は誰も居ない空間に言葉を放る。
「私、決めたよ…。負けないから…。だから貴女の処に行くの遅くなるよ。遅くなるけど…。其れまで待っててね…。」
流れ星が夜を彩る。
綺麗だった…。
美しかった…。
私の迷いは完全に無くなった。
階段を下りる。1段1段着実に下りていく。その時だった。静寂を切り裂いてスマホの着信音が響いた。画面には七瀬紗希の文字が浮かんでいる…。
「はい。」
私は迷わず通話釦を押した。言いたい事が溢れる程にあったからだ。
「今更何?」
私は会話を続けながらも、確実に階段を下りる。決意を固める様に力強く、1段1段着実に下りていく。
紗希はスマホ越しに…。
ヒステリックな声で何かを喚いていた…。
「だから。何を言ってるのか解らないのよ…。」
紗希の言葉に憤りを感じた。視て視ぬ振りをし、私の存在を否定していたのに…。紗希は謝罪もせずに、言い訳を始めた。
私は廃墟と化したビルを出る。生温かい風が身体を包んだ。その何とも云えない感覚が私の感情を昂らせる。私は地面を睨みつけながら、歩いていく。
感情的になった私は…。
叫ぶ様に言葉を投げ付けた…。
本音だった…。本心だった…。
視て視ぬ振りしてたくせに…。
存在を否定したのに…。
ソウルメイトだって言ってたのに…。
助けもせずに視ていただけだ…。
その時だ。人の気配がした。顔を上げると、眼前に眼鏡を掛けた男の人が立っている。ブツブツと訳の解らない言葉を呟きながら、コンクリートブロックを手に取り、私に向かって振り上げた…。
『あぁ…。世界は不条理だ…。』




