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憂鬱な天国 Ⅰ 幽霊  作者: 倉木英知
生贄 片桐響子 供えられた後に殺された物
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不条理劇 私へ


 また私は此処にいる。2日前にも訪れた場所。廃墟と化したビルの屋上だ。此処は貴女が飛び降りて死んだ場所…。


 私は誰も居ない空間に言葉を放る。


 「私、決めたよ…。負けないから…。だから貴女の処に行くの遅くなるよ。遅くなるけど…。其れまで待っててね…。」


 流れ星が夜を彩る。

 綺麗だった…。

 美しかった…。

 私の迷いは完全に無くなった。

 

 階段を下りる。1段1段着実に下りていく。その時だった。静寂を切り裂いてスマホの着信音が響いた。画面には七瀬紗希の文字が浮かんでいる…。


 「はい。」

 私は迷わず通話釦ぼたんを押した。言いたい事が溢れる程にあったからだ。


 「今更何?」

 私は会話を続けながらも、確実に階段を下りる。決意を固める様に力強く、1段1段着実に下りていく。


 紗希はスマホ越しに…。

 ヒステリックな声で何かを喚いていた…。


 「だから。何を言ってるのか解らないのよ…。」


 紗希の言葉に憤りを感じた。視て視ぬ振りをし、私の存在を否定していたのに…。紗希は謝罪もせずに、言い訳を始めた。


 私は廃墟と化したビルを出る。生温かい風が身体を包んだ。その何とも云えない感覚が私の感情を昂らせる。私は地面を睨みつけながら、歩いていく。


 感情的になった私は…。

 叫ぶ様に言葉を投げ付けた…。


 本音だった…。本心だった…。

 視て視ぬ振りしてたくせに…。

 存在を否定したのに…。

 ソウルメイトだって言ってたのに…。

 助けもせずに視ていただけだ…。


 その時だ。人の気配がした。顔を上げると、眼前に眼鏡を掛けた男の人が立っている。ブツブツと訳の解らない言葉を呟きながら、コンクリートブロックを手に取り、私に向かって振り上げた…。


 『あぁ…。世界は不条理だ…。』

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