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不条理劇 善惡
誰かが話している会話が聞こえた。
「聞いた通りだったね。理恵の動画、確認したら映ってたよ。【生贄様】で使われた身代わり人形。やっぱり左眼の釦が外れてた。あれ、本当みたいね。左眼が壊れた人形を持っていたから【生贄様】の生贄になったのよ。」
私は…。
反射的に…。
鞄に付けていた身代わり人形を視る…。
『左眼の釦が外れてる…。』
その様子を視ていた人達がチラリと私を視て、ヒソヒソと何やら話しをしているのが視えた。
其れから暫くしてからだ。周囲の人間は視て視ぬ振りをしながらも、此方に向かってスマホを翳してくる様になった。どうやら私が【生贄様】に取り憑かれる瞬間を撮ろうとしているらしい。勿論、私が話し掛けても、返答は無いし、相変わらずに視て視ぬ振りをされた。
其れは場所も昼夜も問わず続いた。気の休まる空間も時間も無くなった。でも私の親は片親だったから余計な心配をかけたくはない…。周囲の人間の不条理に殺されるのも厭だった。だから私は陰湿な虐めに立ち向かおうと誓ったのだった。
負けたくなかった。
此の不条理な世界に…。




