不条理劇 正邪
私と紗希の仲に、少し溝が出来た。その溝に互いの感情が流れると、急激に溝は深く広くなっていった。築くよりも壊れてしまうのは容易いのだろう…。紗希は別人の様になった…。髪を短く切り、服装も変わり、喋り方も変わった。彼女は、もう私の知る彼女では無くなってしまった…。
紗希が私から離れてしまうと、全ての矛先は私に向けられた。智絵の時と同様、陰口を言われ、無視をされる…。私の存在を否定するかの日々が訪れた。紗希は、何をする訳でも無く、ただ無言で此方を視ているだけだった…。
きっと…。
其れも間違ってはいないのだろう…。
自己保身の為だ。
仕方無い事だとも思う。
でも…。
悲しかった。
『信じていたのに…。』
哀しかった。
『何で視て視ぬ振りをするの…。』
私は、私の存在を否定される。此方が語り掛けても、誰も振り向きはしない…。視えているのに…。視えている筈なのに…。私は存在しない様に扱われる。
【幽霊】にでもなった気がした…。
いるのに…。
私は此処にいるのに…。
何かを伝えようとしても…。
誰も聞き入れてはくれない…。
いるのに…。
私は此処にいるのに…。
視界に映り込もうとしても…。
その瞳に私は映ってはいない…。
あぁ…。
智絵も、こんな感じだったの?
こんなにも息苦しくて…。
こんなにも苦しかったの?
『お願い…。』
『誰か助けてよ…。』
『この不条理な世界から…。』




