降下する。
人で賑わう表通りから一つ外れた裏通りを私は歩いている。雑居ビルが建ち並んではいるのだが、迚も静かだった。音の無い空間だ。人の気配すら無い。薄暗く陰鬱で生気すら感じられない。
暫く歩いていると、何年も使用されずに廃墟と化したビルが視えた。其の廃墟ビルは私達3人の秘密の場所だ。元はアパレル関係の会社が入っていたらしく、その名残りが見え隠れしている。ビルに足を踏み入れると、部屋の中にはバラバラとなったマネキンが散在していた。ただ其処に転がって、夢の跡先を語っている。
上へ上へと階段を上っていく、少しでも空へ近い場所へと上っていく。少しでも、ほんの少しでも天国に近い場所へ…。屋上に辿り着くと、星空が広がっていた。綺麗だった…。美しかった…。久しく感じていなかった感情だった。この気持ちの儘、消えようと思った。鞄を地面に置く時、私の視界に人形が映った。身代わり人形だった。
『意味無かったな…。』
身代わり人形を手に取る。
『あれ?左眼の釦、何時の間にか外れてたんだ…。ごめんね。直してあげられなくて…。』
左眼の付近を優しく撫でた。
『今まで、ありがとね…。』
胸元ほどの柵を乗り越える。
『やっと楽になれるんだ…。』
飛び降り方が解らなかった。解らなかったから歩く様に足を前に出した。ゾワッとした感覚が身体に疾走った。
『あっ…。』
視線の先に誰かがいた…。
『ごめんなさい…。視たくないよね…。』




