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憂鬱な天国 Ⅰ 幽霊  作者: 倉木英知
蠱毒 毒と成る。
34/106

暗転…。


 だが、幸福の日々は永くは続かなかった。最愛の妻は連続婦女暴行絞殺魔に殺されてしまったからだ。凌辱され首を締められ殺害されたのである…。


 後に犯人は発見される事となった…。そう。逮捕された訳では無い…。何故なら、彼は遺体として見つかったからだった。死んだ人間は捕らえる事は出来ない…。罪を償わせる事が叶わなくなり、行き場の無い感情が渦巻いた。


 身元が判明した。

 犯人は妻の元教え子の男性だった。


 妻が彼を棄て、私とりを戻した事への嫉妬心が動機だった。寝取った男が寝取られ返され嫉妬する。本末転倒だ。木乃伊ミイラ取りが木乃伊ミイラになった様なモノだ…。


 遣る瀬無い想いが溢れていった。妻を思い返して、ようやく、私は妻が死んだ事を実感した…。


 涙が溢れた。

 泣いて。

 泣いて。

 泣いて。

 涙が出なくなった頃。


 ふと鏡を眺めた。


 鏡の中には…。

 首をグニャリと曲げた妻がいた。

 何も云う事も無く…。

 ただ私を睨み…。

 舌をチラチラと出し入れしている。


 視線を反らしても…。

 反らした先にも妻はいた…。

 私を監視・・するかの様に…。

 き。ている。


 『気付いてたのか?』

 『私が、覗き視ていた事を…。』

 

 返答等ある筈が無い。


 妻は私を視ている。

 息を潜め…。

 家具の隙間から…。

 カーテンの裏側から…。

 机の引き出しの奥から…。

 そして…。

 天井に空いた穴から…。

 砕けた首をグニャリと曲げ…。

 此方を覗き…。

 ただ視ている…。

 

 『っていたのか?』

 『私がっていたを…。』


 勿論、返答は無い。

 ただグニャグニャと…。

 首を揺らし…。

 卑猥な舌を出し入れしていた…。

 チラチラと出しては入れて…。

 入れては出した…。

  

 妻は無言で此方を視ている…。

 蛇の様な眼差しで覗き…。

 ただ此方を視ている。


 その眼には、私が映り込んでいる…。

 

 『知らなくて良い事は…。』

 『知らなくて良かったんだ…。』

 『視てはいけない事も…。』

 『視なくて良かったんだよ…。』

 『そうしていたら…。』

 『私達は幸福になれていたのかな?』


 そう、呟いて私は…。

 妻の瞳に注射針を刺す。

 勿論…。

 其処には何も居る筈が無かった…。

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