完成された美術品と女神。
ある夜の事。半ば自暴自棄になっていた私は酒を煽り職場付近の公園を彷徨っていた。公園の中央にある時計塔を見上げた後、時計塔を囲んでいるベンチの1つに横たわる。微睡みの中、夢と現を行き来していた。不意に声が聞こえる。
「大丈夫ですか?風邪引きますよ。」
綺麗な聲だった。聲が聞こえた方へ視線を滑らすと、完成された美術品の様な男性と女神の様に美しい女性が此方を見下ろしていたのだった。
「あら?貴方は…。」
「あ。どうも…。」
「マリア、君の知り合いかい?」
「えぇ。知り合いって程でもないけど、顔を何度か拝見した事があるわ。私の勤め先の病院の薬を配合している薬局の…。」
「白井雄介です。いつもお世話になってます。」
「二階堂マリアです。こちらこそ、いつもお世話になってます。そして…。彼は…。」
「初めまして、柊冬馬と申します。」
時計塔が静かに音を刻んでいる。
「どうかなされたのですか?何やら悩み事が有る様に見受けられますが…。宜しければお聞かせ願えますか?」
完成された美術品は私の瞳を覗き込む。その聲は穏やかで温かく、自然と言葉が浸透していった。彼の雰囲気に充てられてか、気付くと心に抱えている悩みを話していたのだった…。
私が話を終えると、柊と名乗った男性は、私の視界を掌で覆った。目眩がして意識が遠退いていく…。誰かが何かを囁いている様な気がした。だが、言葉の意味は解らない。刹那的に意識が途絶えた気がした。ふと我に返ると、また言葉が聞こえ初める…。
「なるほど…。ソレでしたら、とある機関を紹介しましょう。其処でしたら貴方の希望を叶えられると思いますよ。あと…。」
完成された美術品は…。
其処で言葉を区切り
「貴方が本当に為さりたい事も…。」
と云った。
その日を境に、私の研究は眼に視えて進んでいったのである。ソレと引き換えなのか、完成に近付く度に悪夢と呼ばれる様な夢を見る様になったのだった…。




