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幽き霊
妻の遺体を視た日から…。私は妻であろうモノが視える様になった。気が触れた訳では無いとは思う。通常通りの生活は出来ているし、鬱の様な症状も無い。けれども、妻であろうモノが視界に映り込む様になってしまった。ただ何気無く視界に映り込む…。何かを云う訳でも無く、何かをされる訳でも無い。時には家具の隙間から、時にはカーテンの裏側から此方を覗いている…。ただソレだけだ。
首をグニャリと180度曲げ、此方を睨んでくる。其の瞳には生気が無かった。ソレはそうなのだろう。妻は死んでいる。首を締められ、殺されたのだ。生きている筈が無い。身体構造を無視した状態の妻は、半開きの唇からチラチラと舌を幾度と無く出し入れしている。
『私が悪かったとでも云いたいのか?何で此方を視るんだよ…。』
と私は問う。
勿論、返事が返ってくる筈は無かった…。




