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憂鬱な天国 Ⅰ 幽霊  作者: 倉木英知
蠱毒 毒と成る。
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悪夢の欠片


 気が付くと…。私は密閉された空間の中にいる。2メートル四方の硝子ケースの中だ。硝子の向こうは純白の景色が広がっている。『夢だ…。』普通にそう感じた。あまりにも現実とかけ離れているからだろう。平常心を取り戻し、夢が醒めるのを待つ事にした。


 どれくらい刻が流れたのだろう…。私は飢餓状態になっている。浮遊感が漂い、意識は朦朧としている。ギィィ…。真上から音がした。ギィィ…。硝子を擦り合わせた時の様な不快な音が響く。ギィィ…。ギィィ…。


 天を仰ぐ。天井が歪にスライドしていくのが視えた。巨大な瞳が其処にはあった。


 そして声が響く。美しい聲だった…。


 『ヨウコソ オイデクダサイマシタ。』

 『アナタ ハ エラバレタノデス。』

 『サア メザメナサイ。』


 それと同時に、蜥蜴トカゲ百足ムカデ蜘蛛クモサソリ蝦蟇ガマガエルヘビ蛞蝓ナメクジ。其れらがビチャビチャと大量に音を立て降り注いだ。


 『うっ…。』


 私は口を両手で押さえる。生臭い匂いが辺りを覆い尽くす。声は出なかった…。嗚咽だけが零れた。凄まじい悪寒が躰を駆け巡る。ピチャピチャ…。ビチャビチャ…。グチャッ…。艶々と体液を光らせた生き物が箱に満ちて、私を埋め尽くしていく。


 呼吸困難に陥り、深く息を吸った時だった…。口の中に違和感を感じた。ヌメヌメとした感触が喉元を通過する。粘着性の液体が口から零れてくる。やがて蟲は肉体の内を這いずり、胃の中で消化され吸収されていく。トロリとした粘膜が肉体を覆う。


 其れが余りにも甘美的で…。

 淫靡的だったから…。


 最後の一匹まで残さず…。

 綺麗に美味しく食べて…。


 私は毒になった。

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