悪夢の欠片
気が付くと…。私は密閉された空間の中にいる。2メートル四方の硝子ケースの中だ。硝子の向こうは純白の景色が広がっている。『夢だ…。』普通にそう感じた。あまりにも現実とかけ離れているからだろう。平常心を取り戻し、夢が醒めるのを待つ事にした。
どれくらい刻が流れたのだろう…。私は飢餓状態になっている。浮遊感が漂い、意識は朦朧としている。ギィィ…。真上から音がした。ギィィ…。硝子を擦り合わせた時の様な不快な音が響く。ギィィ…。ギィィ…。
天を仰ぐ。天井が歪にスライドしていくのが視えた。巨大な瞳が其処にはあった。
そして声が響く。美しい聲だった…。
『ヨウコソ オイデクダサイマシタ。』
『アナタ ハ エラバレタノデス。』
『サア メザメナサイ。』
それと同時に、蜥蜴。百足。蜘蛛。蠍。蝦蟇。蛇。蛞蝓。其れらがビチャビチャと大量に音を立て降り注いだ。
『うっ…。』
私は口を両手で押さえる。生臭い匂いが辺りを覆い尽くす。声は出なかった…。嗚咽だけが零れた。凄まじい悪寒が躰を駆け巡る。ピチャピチャ…。ビチャビチャ…。グチャッ…。艶々と体液を光らせた生き物が箱に満ちて、私を埋め尽くしていく。
呼吸困難に陥り、深く息を吸った時だった…。口の中に違和感を感じた。ヌメヌメとした感触が喉元を通過する。粘着性の液体が口から零れてくる。やがて蟲は肉体の内を這いずり、胃の中で消化され吸収されていく。トロリとした粘膜が肉体を覆う。
其れが余りにも甘美的で…。
淫靡的だったから…。
最後の一匹まで残さず…。
綺麗に美味しく食べて…。
私は毒になった。




