幽霊に生贄を捧げる。②
ギィと音を立て扉は開いた。天乃の眼前には七瀬の姿があった。
「ようこそ。星月天乃さん。私、色々と調べたのですけれど、生贄様から逃れる術は無いみたいです…。」
「ほほぅ。と云う事は…。あたしも猫を被らなくて良いって事だな。助かるよ。狐狗狸さんの様に騙し合わずに済むからな…。あたし達は、狐でも狗でも、ましてや狸でもないし…。」
七瀬は真っ直ぐ、天乃を視界に捕らえている。そして…。えぇ。遅かれ早かれ、こうなっていたみたいなんで…。と云った。
「じゃあ。単刀直入に聞くわ。お前…。」
と言葉を区切り…。何処まで関わっているんだ?と訊いた…。
「何処までとは?」
「生贄様を考えたのはお前じゃないよな。生贄様を考えた奴、知っているのか?」
「知ってるも何も私が考えたモノよ。」
「嘘吐くなよ。生贄様を考えたのは…。」
天乃は冷静に七瀬を見つめ…。
「笠原慎二って奴だ。」
「笠原?誰それ?」
七瀬の表情が曇る。
「違うわね。生贄様を考えたのは私と…。」
そう云いかけて七瀬は1呼吸置き…。
「誘導尋問?小賢しいじゃない。騙し合いは止めだって言ったクセに…。」
と嗤う。
「そうか…。名前すら記憶してないんだな。お前にとって笠原は、記憶するまででも無い相手だったのか…。まぁ。そう云う事だとしたなら、お前も利用されていただけか…。所詮は、ただの小者って訳だ…。」
天乃は挑発するかの様に…。
言葉を投げつける。
「どう云う意味よ…。」
「どうもこうも無いよ。言葉の通りだ。お前も生贄の1人だったって事だ。まぁ。あたしとは【生贄の意味】が違うがな…。だとしても、お前も生贄だよ。生贄。」
2人の間の空気が変化した。
天乃は呪言の様に言葉を重ねていく。
「今回の1連の事件。お前は理解していないみたいだな…。そりゃそうか…。三件の事件が絡み合っているのだから…。無理ないか…。誰の描いたシナリオなのかは、今の処、解らないけどな。」
天乃は七瀬の方へと1步近付いた。