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序章
八月、茹だるような暑さの中、玲は自転車を押しながら坂道を登っていた。
「あっつ...」
真上から降り注ぐ日差しと、アスファルトから照り返す熱気にうんざりしながら家を目指した。
真白玲 田舎に住む高校2年生。家族構成は父、母、8歳年下の妹、犬。それと高齢の祖母が近所に住んでいる。
部活は天文部という名の帰宅部。趣味は読書。
一学期の期末テストの結果は400人中200番。クラス内順位も40人中20番という平凡…ある種奇跡的な数値であった。体育祭でもリレー選手に選ばれることはないもののクラスの足を引っ張らない程度には活躍をみせた。
容姿はセミロングの黒髪に黒目、どこからどうみても多くの日本人の特徴と似ている。身長は157.7cm、体重は...詳しく書かないが一般的な女子高生の値だ。
近所からの評判はたまに挨拶をするぐらいの、妹の面倒をよくみている大人しそうな娘さんといわれることが多い。
つまり、玲は平凡すぎるほど平凡で事件なんかに巻き込まれるような性質ではなかった。
そう、この日までは。