第三話 嫌な再会
「あのバカ王子がすまなかった。我が息子ながら情けない…。」
「王よ、聖女の前です。あまり不安にさせるようなことは。」
「あぁ、そうだな。すまなかった。」
呼ばれた聖女が最初に見たのは王の頭のてっぺんだった。
王様のような偉い人に頭を下げられるような体験をしたことがない聖女様はあわあわとしているものだから助け船を出すが明らかにほっとした顔をする。そして縋るような目でこちらを見てきた。
「申し訳ございません、聖女は緊張しているようです。王のような位の高いものと話す機会などなかったようで…。なのでまずは応急を案内してやりたいと思っております。いかがでしょうか、少し時間が経ってからまた再度の面会と言うのは。」
「そうだな、気遣いが足りすまなかった。私は一度、私たちの身勝手に巻き込んでしまった聖女様に謝罪をしたかっただけなのだ。…まずは図書室へと行くのが良いだろう。そこならばもしかしたら戻る手段があるかもしれん。…聖女様、それにユカリ。すまなかった。」
「王…。」
王は常々、自分に奔放なところのある王子を律してほしいと望まれていた。だが、今回の事を機に王子の王位継承は見送る予定だと父は出る前の自分へと言っていた。それが本当ならば憔悴しきっている様子も分かるというものだ。
「かしこまりました。では行きましょう、聖女よ。」
「は、はい!」
聖女がありがとうございました!と感謝を言ってぺこりと頭を下げる。素朴なその姿に王も疲れ切った顔をしつつも、ゆっくりするといいと微笑んだ。
「おや、偽聖女じゃないか。ここは君みたいなやつがいるところではないのだけれど。」
まぁ、こんなことになるなら図書室など行くことは無かったけれども。
「聖女様は王の正式な客人としてここにいます。誰かに阻まれるいわれはありませんよ王子。」
「王子が去れと言っているのだから素直に去ればいいのだ!」
そうだそうだと取り巻き共がうるさい。じろりと睨むとひっと悲鳴を上げ情けなく引き下がる。その程度なら最初から噛みつかなければよいものを。王子もそう思ったのか自分の取り巻きを情けないといったばかりに見てため息をつく。
「そもそも、聖女様はこの国を救う装置や、ましてや王子の欲望を満たすものでもありません。…王から謹慎を言い渡されていたはずの王子はさっさと部屋へ戻らねば謹慎程度ではすみませんよ。」
「くそっ覚えていろよ。」
まるで小物のようなセリフを鼻で笑い見送る。
アイツらの顔見ましたかと声をかけようとした瞬間、ぎょっとした。
泣いていたのだ。ポロポロと声も出さず大粒の涙をこぼして。
「だ…大丈夫ですか!?何かアイツらにされましか?ぼ、僕が言ってあいつらを「違うんです!」
アイツらの仕業ならただじゃおかないと混乱した頭で後を追おうとする僕を慌てて引き留める聖女。
涙を流しながらも顔には悲しみなど負のものが見当たらないことにほっとして聖女に向き直った。
「その…嬉しくて。俺これからどうなるんだろうとか。召喚された理由を聞いて生贄とか…変な事されたりとかするんじゃないかって気が気じゃなくて…俺の味方なんて誰もいないと思っていたから姫様がはっきり言ってくれたことが嬉しかったんです。」
ありがとうございます、俺を助けてくれたのが貴方で本当に良かったです。
そういって泣き笑う姿は、部屋の西日も相まってとても神秘的なものに思えた。
遅くなって申し訳ありません!!!これからは投稿頻度もあげて……いきたいなぁとはおもっているのでまた読んで頂けたら幸いです。