第二話 真実
「…落ち着きましたか?」
「は、はい…ありがとうございます。」
とりあえず聖女のため用意された部屋ではなく自分の部屋へと案内した。
あんな風に王子から言われたら偽物の聖女、見切りをつけられた存在と言われた聖女様が不当な扱いをされたり心ない言葉を投げられてはと思った故に。
ちゃんとした説明も受けていないため自分が置かれた状況も分からず混乱していて部屋に着いた後もソワソワとして落ち着かない様子だったので少しでも落ち着けられるようにとハーブティーを用意し手渡すとやっとホッと一息着いたようだった。
「あ、あの…それでその……。」
「色々知りたいこともありますよね。落ち着いたようですし順を追って説明します。」
ハーブティーを飲み終わり静寂が訪れる。
それを破ったのは聖女様だった。聞きたいが聞いていいのだろうか、葛藤しながらの絞り出すような声に優しい声を心がけて答えていく。
「ここはドラコニア王国、貴方はあの男に召喚されたのです。本当に申し訳ありません。」
「ド、ドラコニア王国?そんな国聞いたことないんですが…。」
「それはそうでしょう。…ここは貴方が住んでいた世界ではない、違う世界なのですから。」
その俺の事実に驚いたように目を見開いた聖女様。こちらの都合で本当に申し訳なかったが、それでも伝えなくてはとできる限り寄り添うように続けて話していった。
貴方は竜が死んだあと体に残った魔力が暴走して過剰な魔力によって死んだ土地、それを広げないように封印しているがそれを封印という一時的な措置ではなく完全に生き返させようと王子は考え独断で貴方を召喚したのです。
この召喚は召喚者と魔力の相性が良い人間を呼び出し、その際に女神から聖女としての能力を授けられるもので今のところ戻る手立てが見当たらないのです。なにぶんこの召喚が行われたのが数百年前だった為…本当に申し訳ないです。
もちろん手立ては俺の力を総動員させ見つけ出して見せます。それまでは俺が貴方の身を保証します。
そのようなことを言い続けているとさめざめと泣き始めたため大慌てでハンカチを渡し何か飲み物を持ってくるよう使用人に言いつける。
落ち着けるよう背中をさすっていると蚊の鳴くような小さな声で両親のことを言う聖女様に混乱していた今日に言うべきではなかったと後悔したが、顔を見て驚く。
目は晴れ渡った空の色で光を失っていなかったからだ。
泣いて絶望の表情をしていたが、どんどん諦めないといった顔に変化していく。
その姿にやはり聖女たる人物なのだと改めて確信し、せめてもう理不尽は味わったのだからこれ以上のことに巻き込まれないようにと決意した。
まずは報告せねばな。そう思い聖女様に席を外すと言い部屋から離れ近くの者に家の主である父へと言伝を頼む。
王への謁見を希望する、聖女と共に。と。
今回は短めです。
次回は長めにする予定なので許してください…。