第20話【盤外戦】危険生物 評価リストにおける、人間(国家)の評価について
●問題.もし、ハンター協会(ネテロ)がキメラアントとの戦いを《《拒否していたら》》どうなっていたのか?
答え.V5(6つの大陸を代表する主要国)的にはその選択肢は『《《そもそもない》》』。
というか、『《《与えない》》』。
HUNTER×HUNTERの世界には『危険生物 評価リスト』というものがある。
人間(個体)の危険度は総合で『C』。
“破壊力”の項目だけを見ると『B〜E』。
人類全体から見れば、シルバも、ゼノも、ネテロですらも、最大でも『破壊力:B』ということになるらしい。
つまり、百式観音ですら破壊力B。
ちなみに、キメラアント(亜人種タイプ)の破壊力の評価は『A』。広範囲に渡って地形を変えたメルエムの放出系攻撃は破壊力Aということなのだろう。
評価リストを見ると、改めてメルエムたちのヤバさが分かる。
そんなヤバい奴らに対して、どうしてネテロ(ハンター協会)が対処しなければならなかったのだろうか?
ほぼ公的な機関とはいえ『いち民間団体』に過ぎないハンター協会に、V5はなぜ責任を丸投げしたのだろうか?
本稿では、HUNTER×HUNTERの世界の『政治的なダイナミズム』について、マンガの中の記述を元に紐解いていきたい。
『政治力』も立派な異能の一つである。多分。
●法律問題
キメラアントとの戦いのためにとはいえ、『V5による東ゴルトー共和国への軍事侵攻』ということになれば、理由はどうあれ大局的には
『《《V5対東ゴルトー》》』
ということになるのだろう。
そうなると、たとえ勝てたとしても戦後処理を巡って地域紛争や冷戦、下手をしたら“世界大戦”とかの引き金ということにもなりかねない。
だから、V5首脳たちには『自分たちの国の軍隊で、東ゴルトー共和国内のキメラアントと戦う』という選択肢はそもそもない(義務も責任もない)。
しかし、キメラアントは人類全体の脅威。
V5列強からしたら「……じゃあ誰に戦わせよっか?」という流れになる。
●問題.なぜハンター協会(ネテロ)がキメラアントについて全責任を背負わされたのか?
答え.作られた偶然。
“キメラアント女王の腕”発見からの経緯を鑑みて
V5からしたら、
「《《最初に》》キメラアントの危険性について、《《公的に》》言及したのはハンター協会側の人間(カイトたちのチーム)でしょ?」
という言い訳が成り立つ。
『自分たちはそれに後から巻き込まれたのだ』、と。
キメラアント案件が、V5からハンター協会に丸投げされた理由は、身も蓋もない言い方をすれば
・『下請けいじめ』
・『パワーバランスを加味した政治的圧力』
そんな辺りかな、多分。
ハンター協会は、一側面では“全員が念能力者”という一国家にも匹敵する『強力な武力集団』でもあり、ある意味ではV5にとっても怖い存在な訳だ。
だから、自分たち(V5)の責任逃れ+V5とハンター協会との力関係を分からせるために『下請け(ハンター協会)にババを引かせることにした』。
つまりは、そういうことなのだろう。
●……お気付きだろうか?
しかし、思い出していただきたい。
カイトにキメラアントについての情報を流したのは、『《《カキン国の役人》》』である。
カキン国の役人が、カイトから視線を背けつつ『一人言』として“キメラアントの女王の腕”についての情報を伝えている(18巻183ページ)。
そしてキメラアントの掃討終了後、カキン国の暗黒大陸への渡航を契機として、《《V5にカキン国を加えて》》『新たにV6の発足』。
……おやおや、キナ臭いですね。
つまり、『キメラアント案件の発端』と『V5によるハンター協会への丸投げ』という流れをつなぐのは、《《カキン国》》。
そして、騒動終結後の
『カキン国の列強加入と暗黒大陸への進出』。
『キメラアント−カキン国(ビヨンド?)−暗黒大陸』
という細い糸のつながりとともに、大国同士・人間同士の思惑が透けて見えるような。
キメラアントの騒動終結後、
・東ゴルトー共和国は、『国際保安維持機構からミテネ連邦の国々へ』分割。
つまり、《《独裁国の解体》》。
・NGLは、永世自然保護区に指定され『国際保安維持機構からハンター協会へ』と管轄責任を一任。
これも、《《実質的なジャイロの独裁国》》であったNGLの解体と、ハンター協会に対するキメラアントの生き残りの責任移管。
・そして、本物のディーゴ総帥は某国で晴耕雨読の生活『30年目突入』。
……さて、ここで問題です。
『“この状況”は《《いつから》》始まっていたのでしょうか?』。
そして、
『《《誰が》》始めたのでしょうか?』。
【総括】
『危険生物 評価リスト』における
キメラアント(亜人種タイプ)の危険度は、
『総合でB』。
それに対して“人間(国家)”は、
『総合でA-〜B+』。
“人間”って怖い。
そう考える次第である。
人間の中には恐ろしいやつもいっぱいいる。
『でも、気のいい奴もいっぱいいて... オレの周りはバカばっかりだけど...そんな奴らばっかりで。 だから...だから人間全部を...人間全部を嫌いにならないでくれ…』。




