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流浪の獄/2番街の秘宝  作者: ゼルダのりょーご
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ごめんなさい


「ごめんなさい」恥じ入るように彼女が呟いた。

「彼はこんなに近くに居るんだから、また会いにくればいいさ」


 今度はそっと肩を抱き、優しく言った。オニョはコクリと頷いた。

 先程のギルの態度には、オニョもバスケも驚いている様子だった。

 それにしても少年の身で商売に勤しまねばならないとは、如何なる理由からなのか。


「道具屋と宿屋とでは、一人の客から得られる利益が段違いだと以前にも説明をしたはずだ。家の様にガポガポ稼げる訳ではないのだ!」

「──うん。ほんと、ごめんなさい。また顔見せに来てあげるからね、バスケ」


 顔を見せに会いに来るではなしに、来てあげる、という上から目線が少々気にならないでもないが。





 期限切れや不良品の返品物、包装材料、金銭の保管場所などが店舗内には見受けられない。奥の部屋へ続く扉が一つずつ、カウンターの両端に見える。


 片方が住居に通じていて、もう片方が恐らく倉庫に繋がっているのだろう。

 小規模店のためお手洗いの線はない。


 宿屋の主ギルが曰く。

 宿屋は、宿泊もある。飲食もある。土産の売店もある。風呂でもあれば、上がりがけに冷たい飲み物にも手が出るだろう。宿を取らず、荷物だけ預けられるロッカーもある。個室での休憩スペース。客が寛いだ分さらに儲かる、と。リピーターも居る。料理が美味いだけでも客が客を運んで来てくれる。


 お向かいの宿が、あっという間にホテル張りに成長していった可能性はある。


 目の前の店のロビーやフロントは多様な従業員で華やいでいる。真面目に店内の手入れを抜かりなくこなしながら。それらを毎日のようにバスケは羨ましそうに眺めていたのだろう。


 だから宿屋の主人と娘が来店した途端、声のトーンが変わり、相手を持ち上げるようなことを言って気持ちを掴もうとしたのかも知れない。接客に慣れないうちは、たとえ悔しくても、お上手を言ったりして相手の機嫌を取りに行くのが無難と心得る者も、世の中に少なくはない。


 裸一貫、叩き上げの現場主義の商売人を経験してきたギルが、娘のバスケに対する言動を叱責する理由の一つがそこにあるのかも知れない。


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