殺したい程、恋してる
後日出てくるであろう妹ちゃんの物語。
この武器使ってんのかなぁ。使ってたら楽しいけど。
「殺したい程憎いってのは、殺したい程愛してるって同じ意味だと思うんだよ」
長い艶やかなロングヘア。鋭い眼光を宿す双眸には眼鏡が掛けられてた。
彼女は棺のような箱の中から細長い物を取り出して、地面に突き立てた。それは日本刀。彼女の肩まである刃。そのすらりとした等身からは禍々しい気配を放っている。
それを知ってか知らずか、彼女は僅かに口角を上げた。したり顔だった。全て計算通りだとでも言うように、そんな怪しげな日本刀を撫でる。
「可愛いだろ? 『お前を殺す』ってひしひしと伝わってくる」
「..............」
剥き出しの身に触れようとしただけなのに、彼女の指にはぱっくりと切り傷が出来ている。それでも尚、彼女は楽しげに声を上げた。嘲笑うように。手の届かぬ弱者を見下すように。
怖くなって息を呑んだ。その刀だけでは無い。彼女の思考、振舞いについて、理解が及ばないからだ。黙っている私に気を良くしたのか、彼女は金属質な笑い声を上げる。傷口を舐め上げて、今度こそ彼女は剥き出しの刀身を握り締めた。先程までの比じゃない。血が溢れる。組まれた足元に赤い水溜まりが出来ている。
「あぁ、可愛い。全てをかなぐり捨ててでも、私の事で頭がいっぱい。それって恋やら愛やらと何が違うのかねぇ。ん?」
その言葉を否定するように、刀自身は気配を強めた。澱みがこれまでの比では無いほどに強く、強くなる。それさえ愛おしむような目をして、彼女は上から押し付けた。地にめり込ますようにして、その刀が暴れないように牽制しているようだ。
「これからも嫌いで居続けてよ。嫌って憎んで恨んで、一生私を殺しに掛かってよ。ねぇ、可愛い可愛い――さん」
彼女の歪められた愛の言葉は、今も尚、煽り続けているという。
殺したくなるほど憎いって、死んでも愛したいって同じだと思うんです。ベクトルの方向が違うだけで、長さは大して変わらないんじゃ無いかなぁ。
まぁ、敵に対してはイカれてますが、身内には普通の子です。




