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2話 ペルシアンのルーク

「優希、猫の姿ではお金も稼げまい。夜の間だけだが人の姿になる能力を授けよう。」


 お釈迦様は、人の姿になる能力を優希に授けていた。いきなり猫に転生しては食事もままならないであろう事をお釈迦様は察していた。優希はお金を稼ぐ為にまず冒険者ギルドへと向かった。この世界についての基礎的な知識を優希は持っていたので、まず冒険者となってお金を稼ごうと考えていた。冒険者ギルドの場所はトラに教えてもらっていたので、直ぐに見つけることが出来た。ギルドに入ると直ぐに冒険者として登録をして、それからギルド内の酒場で簡単な食事を摂った。優希が持っていたのお金で食べることが出来たのはコッペパンと野菜のスープくらいだった。優希はこの食事なら猫たちのえさの方が栄養はありそうだなと思い、お金を稼ぐ重要性を実感した。食事を終えると優希は依頼が張り出してある掲示板へと向かった。依頼は街の外での魔物討伐が多かったが、優希はその中で一つうってつけの依頼を見つけた。


 ”迷い猫ミーシャの捜索。無傷で連れ帰った方に金貨3枚。クリントン伯爵”


 これなら猫たちを使えば直ぐに見つけることが出来そうだなと優希は考え、直ぐにギルドを出て猫の姿に戻り猫の家へと帰った。猫を探して飼い主の所へ連れて行くだけの簡単な仕事だったが、優希が人間に変身できることを隠したままでは少しやりにくいと思ったユウトは、ユウトが人間に化けることが出来ることを猫たちに教えることにした。まず始めにトラとクロを呼んで、ユウトが人間に化けることが出来ることを説明し、目の前で人間の姿になって見せた。優希は二匹がすごく驚くと思っていたが、二匹の反応は意外とあっさりしていた。

「優希さんならそれくらいのことは出来ると思っていやした。なぁクロ、お前もそうだろ?」

「ああ、優希さんならそれくらい出来て当たり前だぜ。」

 優希は二匹に同じような能力を持った猫がいるのか聞いてみたところ、二匹とも変身できる猫は始めて見たと言った。優希は初めてならもっと驚けば良いのにと思いながらも、話が早くて良いなと思い直し、優希の能力のことを他の猫にも伝えるように話し、更にギルドの依頼についても二匹に話した。しばらく二匹は考えていたが、クロが口を開いた。

「優希さん。その猫は貴族に飼われている猫ですね。このあたりで新しい猫を見たら報告が来るのですが、今のところそんな報告はきていません。トラんとこはどうだ?」

「俺んとこにも報告はきていやせん。貴族の街にいるか、誰かに掴まっている可能性が高いですぜ。」

「優希さん。この際ルークも手下に加えたらどうですか。なんならこのクロがお供いたします。」

「トラもご一緒させていただきやす。」

 優希は一瞬考えたが、直ぐに二匹と共にルークの所へ行くことにした。そして優希は二匹以外の猫にミーシャの居所を探すように命じてルークの住む城へと向かった。道々ルークについて二匹に尋ねると、ずる賢い年寄り猫でほとんど城で寝ているが、配下をしっかりまとめておりとにかく隙が無いと言うことだった。

「優希さん、ここから貴族の街です。」

 クロがそう言い終わると同時に、数匹の猫が優希達に近づいてきた。

「ここは貴族の街だ。お前達のような猫の来る所ではないと思うが。」

「こちらの方は俺たちの新しいボスの優希さんだ。お前さんのボスに会いに来てやったんだ、黙って通してくれないか。」

 クロはそう言うと貴族の街の猫たちを睨み付けた。今にも跳びかかっていきそうなトラとクロを見た貴族の街の猫達は、後ずさりしながら言った。

「待て待て。争うつもりは無い。だがルーク様にお伺いしてからだ。しばし待ってもらおう。」

 優希は二匹を下がらせて貴族街の猫にルークの元に行ってくるように言った。すると一匹の猫が城へ向かって走って行った。それからしばらく貴族街の猫たちと睨み合いが続いたが、やがで先ほど走って行った猫が戻ってきた。

「ルーク様はお会いになるそうだ。ただし条件がある。」

「条件ってなんでぇ。」

「ルーク様がお会いになるのは優希殿だけだ。一匹で来るならお会いになる。」

「なんだとてめぇ。あんなクソ意地のわりぃ爺の所に優希さんだけで行かせられる分けねぇだろう。」

「ならばお引き取り願おう。」

 貴族の街の猫は震えながらトラに言った。

「なんだとてめぇ。」

「トラさん落ち着いて。私一人でも大丈夫ですよ。」

優希はそう言ってトラを制止した。

「優希さんがそう仰るならわかりやした。」

 こうして優希は一人でルークの元へ向かった。貴族街の猫たちが城に向かって走り出したので、優希の後に続いて走った。城の門に着くと、門番にとがめられることも無くそのまま城門を抜け、城の中には入らず、壁から突き出ている板をピョンピョンと登っていった。優希は一瞬戸惑ったが、俺は猫だと心の中で言い聞かせてその板を登り、かなり上の階のベランダに飛び乗った。そして猫用の通路を通って部屋の中へと入っていった。

「ようこそ優希殿。私がルークです。」

優希にに声をかけた猫は人間が使うようなフカフカのベッドの上に座っていた。トラたちの言ったとおり結構な老猫で、フサフサの白い毛と鋭い眼光の持ち主だった。

「ルークさん。初めまして。実はあなたにご相談があってここまでやって参りました。」

「どんなご相談があるのですかな?」

「私の配下に入っていただきたいと思います。」

「そうですか。」

「お年寄りを力ずくで従わせたくはありませんので、出来ればすんなりと受け入れて欲しいのですか。」

「そうですねぇ。トラとクロを従えているところを見ると、力ではあなたに太刀打ちできそうもありません。」

「では、配下に入っていただけますか?」

「何もせずにあなたの配下に入ったら、他の猫たちがあなたに従いません。ですので、一つ私の願いを聞いていただけたら、配下に入らせていただきましょう。」

「では、その願いを伺いましょう。」

「私の願いは、ペガサスのように空を走ることです。」

 優希は思わず天を仰いだ。そして目を閉じてしばらく考え込んだ。

「やはり無理ですか。ではお引き取り下さい。」

 ルークは残念そうにそう言った。

「出来ますよ。」

 そう言うと優希はルークに立ち上がるように言った。そしてフーッと口から息を吹いた。するとルークの足に小さな空気の渦が出来た。

「ルークさん。そのままベッドの外へ歩いてみて下さい。」

ルークは一瞬驚いたようだったが、言われるままにベッドの外へ歩いてみた。すると、ルークはベッドから落ちることも無く同じ高さの空間を歩き始めた。他の猫たち驚きのあまりポカンと口を開け、ルークを見つめた。

「おおお。浮いている。私は空を歩いている。優希様この瞬間より私はあなたの僕になりましょう。」

「さぁ、ルークさん。外に出て思う存分空を走ってきて下さい。」

 優希達はベランダに出て、空を駆け回るルークをしばらく見ていたが、やがてルークは貴族街の猫にトラとクロを呼んでくるように言った。しばらくするとトラとクロがベランダにやってきて、空を駆け回るルークを見た。

「あのじいさん、えらくはしゃいでいるな。あれも優希さんのお力ですかい。」

「風魔法を少し応用しただけの簡単な魔法だよ。今度トラにもやってみると良いよ。」

 優希達は30分ほどルークが空を瓶まわるのを見ていたが、そろそろ疲れたのかルークがベランダに戻ってきた。ルークは床に頭をこすりつけて優希に感謝の言葉を言った。ルークが話し終えると優希が人に変身できることをルークにも話した。空を飛んだ後だったので、ルークは少しも驚かなかった。そして一つ気になっていることをルークに尋ねた。

「ルークさんはペルシャ猫だと思いますが、なぜペルシアンと呼ばれているのですか?」

それから優希は本来の目的であるミーシャについてルークに質問した。

「クリントン伯爵の所の雌ですね。我々も行方を捜しておりますが、まだ見つかっておりません。ただ、猫を誘拐して身代金を要求する連中がおりますので、多分その連中の仕業かと思います。」

「それでは皆で手分けして、街とスラム街を探索するように。ルークさん達も手伝って下さい。それから身代金の要求に来るかも知れませんので人間の出入りにも注意して下さい。」

 優希はそう言うと、トラとクロを連れて猫の家へ戻った。


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