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1話 猫になった?

「あ~猫になってる。猫飼ったことないんだよなぁ。」

優希は「ニャーっと」ため息をついた。

「とりあえずどうやって生きていくか決めないとな。野良猫になるか、飼い猫を目指すか・・」


「貴方は死にました。」

俯いて座っていた優希が顔をあげると、眼の前に金色に輝く仏像が立っていた。

「お釈迦様?」

優希は思わず口に出した。

「はい。」

お釈迦様がそう仰った後しばらく沈黙が続いた。

「貴方は交通事故のため本来の寿命を全うできなかったので、続きの人生を別の世で続けることができます。」

「生き返るのですか。ありがとうございます。」

「ただ、その世界は人の数が多いため当分の間動物として過ごしてもらわねばならない。」

「動物ですか·····」

「その代わり、不自由なく過ごせるように色々な能力を授ける。」

「わかりました。」

それからお釈迦様はどんな能力を授けるかを優希にお話になった。

そして最後に優希に尋ねた。

「貴方の望む動物は何か。」

(暮らすなら人里が良いな。となると、犬か猫が無難か。人に飼われるか野良か、支配されるのは嫌だな。)

そしてしばらく時が流れ優希は口を開いた。

「お釈迦様、猫でお願い致します。後、外観もお願いがあるのですがよろしいでしょうか。」

優希は手短にお釈迦様に希望を伝えた。

「それでは、また会おう。さらばだ優希。」


 優希は周りを見渡してみた。そこには家というにはあまりにボロボロの掘立小屋が連なって建っていた。そこは明らかにスラム街で、人々は皆ボロボロの服を着ていた。と、その時、突然1匹の犬が吠えながら優希に向かって走ってきた。優希はとっさに身構えたが、自分が猫であることを思い出し、近くに家の壁をよじ登り屋根の上へ移動した。下では犬が優希に向かって吠えているが、犬のことは気にもせず再び周りを見渡した。まず目に入ったのは海だった。そして反対に目を移すつと、家々が連なっていたが、その先の小高い丘の上にお城のようなものが見えた。優希はしばらく屋根の上で思案していたが、立ち上がると遠くに見える城へ向かって屋根つたいに歩き始めた。

 しばらく歩いて行くと、優希は誰かが見ている気配を感じとった。優希は知らぬ顔で歩き続けたが、何者かはジワジワと近づいてきた。いつまでもつきまとわれても面倒なので、優希は歩くのをやめてその場で丸まって寝ているふりを始めた。何者かは警戒をしながら更に優希へ近づいてきた。優希は薄目を開けて相手を確認すると、再び目を閉じた。優希に近づいていたものは、大きな猫だった。その猫は獲物を狙うように少しずつ優希に近づき、優希の後から跳びかかってきた。優希はさっとその猫をよけると、振り向きざまに右前足で強烈な猫パンチをその猫にくらわせた。パンチをくらった猫は屋根の上を何度も転がって、そのまま気絶してしまった。優希はこの猫から色々この世界の事を聞こうと思い、目覚めるのを待った。そして数分後、大きな猫は目覚めた。そして、優希の姿を見ると、両前足で頭を抱え、直ぐに仰向けになった。

「すいやせん。あっしはあなた様の子分になりやす。どうかお助けを・・・・」

「取って食ったりしないよ、俺は優希、お前は?」

「はい、見ての通りの虎猫で、トラと申しやす。」

「安易なネーミング・・・じゃ、トラさん、俺はこの街は初めてなんだ。色々教えてくれるか?」

「あっしはこのあたりのボスをやっておりやす。何なりとお聞きになってくだせぇ。」

 優希は今最も重要なことは食と住だと考えた。そこで最初に食についてトラに尋ねてみることにした。

「このあたりはネズミが多いので主食はネズミでやす。後は人間の残飯を食べているやつも多ござんす。」

 トラの話を聞いて、優希はここには住めないと判断した。次に優希は、この先に見える街について尋ねてみた。

「あのあたりのボスは黒猫のクロってやつで、人に買われている猫も多ござんす。猫好きが多いので、野良でも人が食い物を恵むんで、食うには困りやせん。」

 飼い猫か野良かは今は決められないが、あの街のボスになれば食い物には困らないと優希は思った。続いて優希は、遠くに見える城について尋ねた。

「あの城の周りには貴族のお屋敷が沢山あって、ほとんどが飼い猫でございやす。あのあたりのボスはペルシアンのルークと言うやつで、あっしらを見下していて嫌なやつでござんす。」

 ここまでの話しをトラから聞いて、優希は街に住もうと考えていた。そしていっそこの街の猫を支配してやろうと考え始めていた。

「ところでトラさん。そのクロさんとルークさんはトラさんより強いのかい?」

「優希さんの猫パンチにかなうものはこの街にはございやせん。」

 優希はその言葉を聞くと、まずクロの所へ連れていてくれるようにトラに言った。クロの元へ向かう間に優希は寝泊まりはどうしているのかトラに聞いてみた。トラが言うには、スラムには人の住んでいないボロ家が沢山あるのでそこで寝泊まりしており、街の野良猫は人間が用意した空き家で寝泊まりしていると言うことだった。また、そこに猫のえさを持ってくる人間も沢山いるらしく、この街の住人は猫好きが多いんだなと優希は思った。次に、犬についてもトラに聞いてみた。犬はスラムに少し野良犬がいるが、街の犬はほとんど飼い犬で、野良犬はほとんど居ないと言うことだった。優希は猫に優しい街を選んでお釈迦様が転生してくれたのだと思い、心の中でお釈迦様に感謝した。 それからも色々質問していると、トラが猫の家に着いたと言った。

「優希さん。着きやしたぜ。」

トラがそう言ったと同時に、猫の家から複数の猫が出てきて、トラと優希を威嚇し始めた。

「トラ、ここはクロ様の縄張りだぞ。何しに来た。」

「このお方は、新しい俺のボスだ。クロに会いてぇと仰っているのでお連れしたんだ。クロはいないのか。」

トラがそう言うと、中からトラよりも一回り大きな猫だ出てきた。

「トラ、相互不可侵の約束はどうした。とっとと消えろ。さもないと・・・」

「クロ、こちらは俺の新しいボスの優希さんだ。挨拶しな。」

「そのちっこい猫が何だって。」

「痛い目に遭いたくなかったらおとなしく優希さんに従うんだ。クロ。」

「俺を従わせたいなら力ずくできな。それがこの街のルールだ。」

 トラは振り返って優希を見た。優希はトラに後ろに下がるように言って、クロに話しかけた。

「クロさん。私は優希と申します。トラさんの様子を見ても分かるとおり私は強いです。おとなしく私の傘下に入っていただけませんか。」

「俺様の猫パンチを受け止められたら言うこと聞いてやるよ。」

 そう言うとクロは優希に向かって突進してきた。そして優希の前に来ると、右前足を大きく振りかぶって思いっきり猫パンチを優希に向けて振り下ろした。優希は余裕の表情で、その猫パンチを左前足で受け止めると、右前足で強烈な猫パンチをクロの顔面に打ち込んだ。クロは悲鳴を上げるまもなくその場でのびてしまった。最初に出てきた猫たちは恐れて後ずさりしていった。

「いわんこっちゃねぇ。クロ起きろ。」

トラはクロの元へ行き、身体を揺さぶった。しばらくするとクロは目を覚ましたが、何が起こったのか分からずボーッとしていた。

「クロさん大丈夫ですか?」

 優希が声をかけるとクロはハッと我に返り、仰向けになって優希に服従の姿勢をとった。

「お許しくだせぇ。あっしも優希様の子分にしてくだせぇ。」

「様はやめて下さい。じゃクロさん。これからは仲良くやっていきましょう。」

 こうして、トラとクロを子分にした優希は、スラムの猫も街の猫もお互い助け合って生きていくように二匹に命じた。そして、当面の住処をこの猫の家にすることにした。


 その日の夜、優希の前に、トラとクロが食べ物を持ってきた。その食べ物はネズミの死骸や、人間が持ってきた残飯であろうものだった。周りの猫たちはヨダレを垂らしながら見ていたが、元々人間の優希にはとても食べられそうも無かった。優希は、食事は自分で用意すると言いその食事は皆で食べるように行った。そして、誰も付いてこないように命じて猫の家を出た。優希は猫の家を出ると、周囲に誰もいない所まで移動して物陰に入った。そしてほんの数秒後、その物陰から出てきたのは、若い青年だった。優希はお釈迦様に頂いた夜の間だけ人になる事が出来る能力を持っており、今初めてその能力を使った。優希は人間になったとき裸では無いかと心配だ他が、街の人間が来ているような衣服を着用していて、ポケットには小銭も少しだけ入っていた。


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