この動画は非公開です
「この動画は非公開です」
誰もが一度は目にしたであろう。動画共有サービスの非公開動画ページを開くと表示される一文である。
さて、どういうことであろうか。この文を一般公開動画で目撃した者がいるらしい。それは「とある動画」(タイトルは敢えて伏せておくが)で、ある操作をすることによって見られるという。
その動画は1分22秒という短い動画(昼間に、誰もいない公園を撮影したもの。音声はない)であるが、コメント欄に「7:51」とだけ書かれたコメントがある。そのコメントをクリックすると、動画の7分51秒の位置から見ることができるのだが、もちろん、1分22秒しかないこの動画に7分51秒の位置など存在しないので見ることができない。
普通だったら、である。
しかし、「とある動画」では「続き」が見られるというのだ。
この動画を初めから1分22秒の位置まで飛ばさずに見た後、コメント欄にある「7:51」という文字をクリックする。すると、のどかな公園の景色が映っていた映像はすぐさま灰色に変わり、「この動画は非公開です」と表示される。それから数秒間、その画面のまま待ち続けていると、再び公園の景色が映し出されるのだ。灰色に目が慣れていたせいか、やけに公園の景色が色鮮やかに感じられるという。そこで初めて、無音だった動画に音が入る。
風に揺れる草木の音、鳥の鳴く声、ブランコの軋む音……
それはどこか懐かしさを感じさせ、とても心地の良い音なのである。聞く人が思わず眠りに落ちてしまうほどに。
その動画は夕方、日が沈む時間帯まで続く。しばらく目を閉じて音だけを聞いてうとうとしていると、急に音声が途切れてしまう。目を開くと、そこには薄暗い夕方の公園の景色が広がっているが、まるで時間が止まっているかのように草木が固まり、空に浮かんでいる雲も動かないのである。すると急に後ろから
「あ」
と男の声がして、振り返ると、大きめの黒い袋が置いてある。その袋を開けると、カメラの部品がバラバラになって入っており……
おっと、いけない。あまりの心地よさで眠ってしまい、そのまま夢を見ていたようだ。
時間が経って暗くなったコンピュータの画面をオンにすると、画面いっぱいにこちらをうかがう男の顔が映し出されていた。