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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅱ-4.シルベー城制圧戦
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Chapter82. Another General again

タイトル【ジェネラル再び】

シルベー城での戦いは最終局面へ突入する。

最後の砦と言わんばかりに数こそ魔導士よりは劣るものの、出てくるのはアーマーナイトばかりになっていた。Gチームの隊員は自動小銃で気休め程度に動きを止め、グレネードランチャーで排除していった。


それでも最前線を張るのはミジューラだ。数が少ないとは言えず武器の損耗を防ぐためあえて鋼の槍をニキータに預け、盾と拳一つで戦っていた。


「AHHHHHH!!!!」


重装兵は声を上げながら槍を突き立てる。

逃げ場はもうないことは知っている、そうだとしても。この身を盾に足止めすることが自分たちの役目なのだから。

ミジューラは重心を前に向けながら恐ろしき質量の盾で襲い来るアーマーを壁に叩きつけ、兜を引きはがす。


———GRaaaaAAAAACH!!!!!!——


自動車事故のような衝突音と共にあっけなく重装兵は押さえつけられ、兜を引きはがそうと悪魔の手が迫る。

缶の蓋を開けるようにして剥がすと将軍的鉄拳が突き刺さった。

完全に動きを止まっている間、三人の兵士が集団で襲い来るも戦っているのは一人ではない。


【後方から斧持ちだ爺さん、振り向くな!】


【——わかっておる。】


ニキータの指示で隊員がMGL140の照準に槍をもった敵二人の後頭部へ向けた。まだ撃つ時ではなかった。何故か。

いくら頑丈な彼とは言え、スリットがある以上爆風の影響を受けてしまうだろう。丁度ミジューラがそれを受けないタイミングで引き金を押した。


———BAROOM!!!——




シリンダーが回転し、2発の40mmHEATが放たれる。正確無比な一撃が着弾する。

先ほど三人が襲い掛かっているとあったがもう一人はどうしたのか。

なんと正面から来ていたのである。凄まじく巨大な両刃斧が牙を剥く。


——THUNK!!!——


衝撃が確かに伝わる重い一撃に変わりはない、アーマーナイトであろうが食らおうものなら良くても気絶してしまうだろう。

だが50mmの装甲を持つジェネラルの装甲相手にはモヤシめいた攻撃にも及ばない。


「いただいておくぞ」


斧の柄をプレス機にも匹敵する握力でつかみ上げると重量を一転に集中させ、慌てふためく兵士に向けて蹴り飛ばす。


造作もない動き一つであろうが装甲を身に纏えば凶器に早変わり。

自動車が衝突したのと同程度の一撃が襲い、斧を奪われた重装兵はまともに動ける筈がないが現実は残忍だ。

追撃と言わんばかりに3tのスタンプが押される。こうなればもう助からない。


鋼の斧を頂戴したミジューラは水を得た魚のように暴れまわる。槍は力任せに扱えば曲がる。だが鋼鉄の塊である戦斧は話が違ってくる。限界こそあるが彼の馬鹿力に追従することができるのだ。


彼は狂った祖国の兵士を倒し続ける。国家の要である人民を虫けら同然に扱うだけに留まらず、民を搾取し、異を唱える立場の人間を踏みにじり続ける。

シルベー将軍とて大なり小なり、加担している以上手を緩める理由にはならない。


「爺さん、大丈夫か」


ニキータは何度も攻撃に晒される彼を気遣う


「儂はな。——ここで止まるわけにはいかない、だろう」


かつて栄光を手にした英雄、この程度の弾幕を受けても平然としていた。

だがニキータにはどこか気がかりなところがないわけではない。


前の陸軍研究施設制圧作戦の時、ミジューラが激怒したことがある。その時は作戦行動に問題なかったものの、同じ国の人間を殺し続けるのは精神的に良いとは言えない。


自分もカウンセリングを受けて改めて気が付けるようになることがあるもの。

心が軋んでいく過程と言うべきか、筆舌にしがたいが感じることができるようになったからだ。


「俺たちも爺さんを突っ込ませてることは悪いと思ってる。だけど俺たちは一人じゃない。野郎を捻る時もそうだが…そうでない時もそうだ。ダメな時は呼んでくれ」


その言葉にミジューラはどことない違和感を抱いた。普段そんなことを口にしないのもそうだが、新兵に言うようなことを自分に言うものだから。


「——儂は新兵ではない。あり方は心得ているが…用心しよう。」


ニキータの言葉を受け止めながらそう返した。何にせよ己を気遣っていることに変わりない。信頼する仲間からの忠告、無碍にはしたくない。


「俺もそうだった。プロ程ドツボにはまるもんだ。——行くぞ!」


——ZooM!!ZooM!!——


地響きを響かせながらGチームは進む。最深部に潜むシルベーの心臓をえぐりだすべく。



——————




 ——シルベー城司令部地下通路 380m付近


司令部が存在すると思われる区画にSoyuzは侵入していた。

冴島少佐が乗るBMDとはかなりの距離があり、ここで火竜といった携行自動火器が通用しない敵が現れた場合後退を余儀なくされるだろう。


RPGばかりか、もし30mm機関砲やミサイルが効かない相手が現れたら。

そんな嫌な予感がするがまずは突入、たとえ悪魔が出てきたとしても倒す方法はある。


ともかく、足踏みしていては進まない。


それに加え最深部まで来ると流石に兵士は出てくる様子がなかった。

ニキータはその状態に疑問を呈した。ジャルニエではこういった重要な場所には必ず騎士将軍が現れるはずである。

例外もあるだろうが戦場では時に直感も必要だ。


【こちらG TEAM READERからB TEAM READER。そっちにうちの爺さんみたいな鎧を着た敵か、今までとは異なる敵を見たか。——紋章を付けているような】


【いや。シャーマンみたいなのを見たが、紋章つきは見ていない】


【了解】


ジェイガンによればそのような敵を見ていないという。

いくらジェネラルのような鎧をつけていたとして、司令部に侵攻を掛けられていると分かれば徒歩でも駆け付けるだろう。その様子が見られていない。

であれば騎士将軍はどこにいるのだろうと考えていると冴島少佐より入電が入った。


【こちらLONGPAT.司令官と思われる画像を端末に送る。】


話を聞いていた少佐はそのことに気が付き、あるデータを送信した。


「爺さん、そしてお前ら。ちょっと来てくれ!」


画像が来たことを確認すると、モニターを展開し隊員らを集めた。



——————



「俺こんなの昆虫図鑑で見たことある、たしかオウゴンオニ…」


「こんな時にふざけるなゴードン」


そこに映されていたのは画質が荒いスクリーンショットではあったものの、黄色いアーマーナイトと銀色のジェネラルだった。

情けないものの、黄色いのが騎士将軍と見て間違いない。

画像データによれば爺さんの鎧と同じものとある。戦車の装甲と何ら遜色ない目標に40mmグレネード弾で歯が立たないだろう。


ニキータはRPGを持ったトムスに話を振る。


「爺さんみたいな鎧をつけたのが城主だな。…トムス、いけるか」


「破片はなんとかなるでしょうが、爆風はまずいと聞きます。それさえなければ。」


どう無力化するか話し合っていると、ミジューラが割って入った。


「待たれよ。銀色のジェネラルは主ではない。」


一体どういうことを意味するのか。突拍子もないことにGチーム全員、彼に振り向いた。ニキータは静かに頷き、説明を要求した。


「——ここの将軍は黄色い重装兵、カナリスだ。儂の記憶が正しければシルベーはヤツの手腕で栄えてきた。ただでさえ資源や武器を作って儲けているにも関わらずにな。

だがカナリス自体戦いは知らぬ貴族。ジェネラルになれずアーマー止まりで、あべこべ将軍と言われていた。」


「横にいる男はオンス。経済の手腕はあるが指揮に不安を覚えたカナリスはオンスに一任を置いていたはず…赤の他人だったが隣から来る賊、ロンドン討伐や数々の冒険者の暴走に対し兵を派遣、損害を出さず鎮圧してきた。その功績を称え、家の紋章と勲章を授与されている。ジェネラルは動けないがアーマーは素早い。カナリスには気をつけよ」


——————



 情報を整理すると銀色のジェネラルはハズレ、黄色のアーマーが将軍とのことらしい。

下手に新式鎧を装備していない分、重装兵特有の機敏さを持っていることを忘れてはならないだろう。

策士であるカナリス自体、司令室に何等かの手を打っている可能性がある。


罠を仕掛けていることもあるだろうが、最も考えられるのは目標が逃げ出すことだろう。


それに加えて大型バイクにも匹敵する重量の目標の動きを止め、捕縛するのは至難の業。

スタングレネードがあるとは言ってもゲームの如く気絶させることは稀である。


またいくら戦いに慣れていないとされていても、非常識な装甲からくる質量で暴れられたら隊員らは間違いなく殴り殺されることは簡単に想像がつく。


考え込んでいたニキータは立ち上がると簡易的ではあるものの、ブリーフィングを行った。


「Bチームの報告を基に、この先に騎士将軍が待ち伏せている可能性が考えられる。おおよそ爺さんが携行する武器では装甲を貫通するのは難しい。よって動きを止めた後トムスが携行するRPGで決める。撃つときは知らせるから声がしたら全力で後ろを向いてくれ。」




「更に司令確保についてだ。通常通りフラッシュを焚き、突入せよ。その時トムスとゴードンは目標の背後に回れ。無力化に関しては爺さんに一任する。40mmグレネードの使用は認められない。」


暗礁を抜け、魔力灯で辺りを照らされ視認できるとしてもその道は敵の悪意で舗装されているも同じ。

人間の重要な五感の一つ、視界が戻ってきたからこそ気を引き締めるのだ。

あと少し、勝てるからと言って油断を誘っていることは明らかだ、勝利は確実に押し込んでから得られるもの。


最後の一押し、負けてたまるか。

次回Chapter82は7月18日10時からの公開となります

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