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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅱ-4.シルベー城制圧戦
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Chapter80. Death under 452

タイトル【死へと続く地下452m】

かくして司令部を得た突入部隊だったが、肝心のGチームは通路前で待機していた。


帝国の基本ドクトリンとして、城に攻め込まれた場合屋内で疲弊させて追い出す、免疫のような動きをする。そのため敵は一切出てくることなく、少佐の指示を待つばかり。


その間、ある情報が飛び込む。ある魔道の件だ。


物体の硬度を一切無視して切り裂く光るギロチンが飛んでくるとのことらしい。

当然被弾すれば腕が持っていかれば良いもので、最悪真っ二つにされ即死。


「爺さん、なんか知らないのか」


あまりに非現実的なことに多くの隊員が信じられない中、トムスがミジューラに問う。すると彼は淡々と答えて見せた。


「風の魔法ファントン、それが光る斬撃の正体。金属以外ならなりふり構わず切り裂くことができる魔道。受け止めてはならぬ。いくら強靭な体でも容赦なく切り刻んで死ぬ。

このことだけは頭に入れておかれると助かる。あれが来たらまっさきに逃げるかこの儂を盾にしてほしい。——本来、竜を討伐するために使われてきたが今では殺しの道具。魔道の都を仕切っていた身としてはどうも。」


言葉一つ一つは重々しいものだった。

生身であれば止め際なく切断することができる便利な魔法なのだろう。

危険な反面、正しく使用すれば芸術品も作れるナイフと同様で使い方を間違えてしまえば残虐な道具に化してしまう。

爺さんは便利な道具が生み出され、それが兵器に転用される様を見てきたのだろう。


「なんというか…悪いな爺さん、こんなこと聞いちまって。」


「…世は所業無常、誰かが動かねばこの状況は変えられんでしょうな。いつまでも綺麗事ばかり並べていないで儂も動かねばならんのです」


ミジューラの決意は固い。

たとえ元味方だとあっても、裏切りものと罵られようとも。変わり果てたこの国を戻すには動かねばならない。分厚い装甲の奥で熱い炎がのぞいているようにトムスは感じた。



———————



「司令部まで推定450m、長い戦いになる。——作戦開始」


ニキータの一言で作戦が動き出した。扉を爆破し暗視装置を装備したGチームのメンツが一斉になだれ込む。

ミジューラはなんとか後れを取るまいと早歩きで先陣を切る。暫くしてから少佐の乗ったBMDが扉を跡形もなく破壊し栓をする。

これから先敵味方双方、逃げることができなくなることを意味していた。


——ZoooM!——ZooM!!——


装甲50mm、重量3t超えるジェネラルの新式鎧を身に纏ったミジューラ。

歩くたび地面が揺れ天井から塵が零れ落ちる。それに地響きもする有様だ。こんなのが敵になったらと思うと寒気を覚える。

無数の魔力灯が隊員たちを照らすが敵が待ち伏せる深淵まで見えるものではない。


————PAONN!!!!————PAONN!!!!———


「来やがった!」


「クソッ…!」


遙か奥から無数の稲光と風の刃がゴードン、トムスら全員に向けて一斉に牙を剥く。

あれに当たったらゲームオーバーどころかまともに骨が拾ってもらえるか分からないだろう。うかつにRPGを使えばこちらも危うい。

Gチームは一斉に壁に張り付き反撃の機会を伺うが、ミジューラは無数の魔法を食らってもなお突き進み続ける。


———ZAAAAAAAPPPP!!!!!—— Bash!!BaaAAASH!!!!


「やべぇな…歩く戦車じゃんかよ…!」


5cmの鋼鉄板を隙間なく身に纏う彼にとって魔法は微塵も効かないといって良い。

勝負は始まったばかり。


———————




戦車(ミジューラ)を盾にしながらニキータは銃を構え、敵を見つけるとすかさず引き金を短く引く


———BANG!! ZTATATANG!!!


その間もひっきりなしに爺さんは魔法をこの身一つで受け続けていた。少なくとも二人は倒したのは確か。

仕留めそこなったが打倒すことは出来た。だが攻撃の勢いはこの程度で収まるほどではない。

おおよそ司令部を守るためにこれだけの戦力を固めてきたのだろう。

そんな時、少佐から一本の無線が入った。


【LONGPATよりTEAM KING、支援攻撃を開始する。】


通常、味方の歩兵が目の前にいる時絶対に下されない支援攻撃の連絡だった。何故下されないのか、理由は簡単。味方を巻き込んでしまうからだ。

だが冴島は知っている、こんな程度で死ぬような隊員おろか銃弾を耐えうる隊員がいることを。


———ZDADADADSH!!!!!——


Gチームの隊員は壁に目いっぱい張り付く一方、銃弾を背に受けながらミジューラは進む。



———————




 ———50m付近


「このままじゃラチが明かない」


未だに魔法の雨あられは収まる気配を見せない。たとえ倒しても圧倒的な数故にすぐさま補填され、ミジューラしか進むことができない。

たとえ彼だけが進んだとしても肉の壁に阻まれ対処しきれなないため想像以上に進むことが困難となって

いた。


攻撃は肉壁だけではなくその後ろにいるGチームメンバーにも及んだ。横向きのファントンの斬撃が突如縦になりながらニキータに迫る。


敵も人間だ。勝てない相手にいつまでも攻撃をし続ける程無能ではない。盾さえ飛び越えてしまえば攻撃は届く。


「——ッ」


彼は咄嗟に身を翻すと光の刃は壁にぶつかり消えていたがそんなことで止まっていられない。隊員たちは最前線で攻撃を受け続けるミジューラに向けて走り出した。


———DLATATA!!!!——


滝のように打ち付ける雷を避け、吹き荒れる風を飛び越え少しでも照準に入った敵に対し躊躇なく発砲しながら。

人間のできる所業ではないが、彼らGチームは人を超越しかけた精鋭の集まり。プロフェッショナルだからこそできる業だ。



「むぅん!」


薬莢が地に転げ、飛び出た弾丸は魔導士たちを打倒す。その間にもミジューラは槍で容赦なく敵を刺殺し続けていた。ちぎっては投げ、ちぎっては投げるが如く。


戦いはいつになく熾烈だ。


—————-


 固い敵には魔法を用いて立ち向かえ。その言葉が通じるのはアーマーナイトまでである。

徒歩でしか移動できなくなるまで装甲で密閉したジェネラルには強力な魔法とて出来損ないの手品と同じこと。

スキをついてスリットの間にファントンを撃ち込んだはずだった。


——ZAAAAAAAPPPP!!!!!


無残にも盾で防がれ、敵に対し血も涙もない一閃が深々と突き刺さった。

そんな時、ニキータから一本の無線が舞い込む。


【爺さん、俺たちは避けられるがアンタは分からん、全力で避けてくれ!】


【——うむ。了解した】


今まさにミジューラの背後にはエンジンをBMDがエンジンを吹かして突撃をかけていたのである。

それに対し大鎧を着た彼は一つ返事だけを返した。歩くことしかできない程重く、ぴっちりと装甲が詰まったものであるが横跳びくらいはできる。


できる限り注意を己に向けさせながら、後ろより迫る鋼鉄の悪魔を避けられる限界を探るチキンレースをしなければならない。

生きるか死ぬか。あまたの戦地を駆け巡ってきたミジューラにとって些細なことだ。


「——そろそろか」


無限にわき続ける魔導士たちを殺しまわりながら注目を集めていると遠くから耳障りなエンジン音が装甲内に反響し始めた、それも刻一刻大きくなっている。

頃合いは近づいているが、まだまだひきつけなければなるまい。


———DANG!DANG!DANG!———DLALALAA!!!!!


装甲兵器から発せられる進軍と機関砲の音はあと数メートルと言った場所まで迫っていた。得体の知れない音に恐れなどないと言えば嘘になるが、歴戦の身は恐怖の足枷は存在しない。


ミジューラは限界までBMDを引き付けると、あらん限りの力を魔具に込めて翻った。

現代の装甲、そしてこの世界の装甲が擦れ合い火花を散らしながら空挺戦車は人込みに突っ込んだ!



———————



将棋倒し。世の中にはそんな言葉がある。多くの群れを成している人やモノが少しの衝撃で折り重なり、大惨事になることである。


———GRASH!!!!!!———


想像を絶する音が地下通路に響き渡った。それもそのはず、機関砲と機銃を乱射しつつ大型トラックにも匹敵する質量の物体が速度を出して衝突したからだ。


いくら奇術を使えると言っても元を正せばただの人間に過ぎない、逃げ場もないまま自動兵器の的になり決死の勢いで立ち向かおうが悪あがきと化してしまう。

轢死すれば良い方で、多くの兵士は将棋倒しの如く折り重なり圧死していった。


当然ながら陣地を再生不能な段階まで破壊された以上、これ以上Soyuzに立ち向かうことはできず、高貴な戦いは掃討戦に様変わりし突入チームは今だ決死の抵抗を続ける敵を蹴散らしていく。


脇ではミジューラが武器を使う価値すらないと思ったのか槍を使うまでもなく殴りつけて止めを刺していた。


トムスとゴードンはニキータに続き逃亡兵を排除していく最中だった。


「死ねい!」


ジグザグに逃げていた魔導士が突如振り向き手の甲から稲妻を放った。二人は反射的に体をよじり避けようとするが、弾丸とはまるで性質の違うアドメントは避けられても敵を追いかける性質がある。あわや直撃するかと思ったその時、大きな影が遮った。


———ZAAAAAAAPPPP!!!!!——


「——儂に魔道が効くと思うな。」


まともに直撃すれば行動不能になる一撃をミジューラは易々と引き受け、振り払ったのである。すかさず二人は敵を射殺すると三人息を合わせ進んでいくのだった。


———————


――地下通路200m付近


「第一区画が突破されたか。やはり司令をたたかねば死なずと言った所らしい。」


魔力灯もない真っ暗闇で男がつぶやく。その言い草から魔導士隊が敗れ去るのを予期していたかのように。遠くから響く、唸るような音からして悪魔を連れていることがわかる。


カナリス曰く、人員を割くことはできないが詫びとしてそれなりの装備をよこしてくれたことが幸いというべきか。

魔力にて幻影を作り出す小さな装置、深淵の槍が使っていたとされる相手の生命力を直接可視化できる仮面。


埋め合わせはしてくれるがどうにもあの貴族は戦で必要なものを理解しているのか怪しい。


「相手は師団相手でも勝てないとされた連中。どうすれば…」


その背後にはボラン伍長が控えている。

彼の言う事も正しい、歩兵大隊をもってしても随伴する歩兵一人に傷すらつけることができなかったからだ。しかしサルバトーレには秘策があった。


「あの図体、閉所ならまともには動けないはずだ。アレ(装甲兵器)は同士討ちを恐れ攻撃はしてこない。——ここから先、直接異端との闘いになる。伍長、ついてこられるか」


装甲を付けた悪魔の弱点、それは機動力を生かさなければでくの坊になってしまうこと。

至極真っ当なのだが大火力を持つ存在に対しあまりにも自分たちは無力だ。


それを封じ、初めて同じ土俵に建てるというもの。だが相手は小回りの利く連発銃を持っている以上同じ場所に立っているかは懐疑的である。


 しかしながら装甲兵器に蹂躙されない、という二度とあるこのチャンス。多少のリスクに目をつぶり、相手に有無を言わせず仕留めようとサルバトーレは思っていた。


突き刺せば魂を引き出して殺す、ソウルキラーでの必殺の一撃。決められるか否か。

ここまでくれば自分の腕がものを言う。


「後に引こうが先に進もうが地獄、少佐、私にもう捨てるものなどのこっておりません」


あの熾烈な戦いで残ったのは立った二人。伍長とて自分と同じ、後には引けない。


「——やることはやった。あとは腕次第。こんな時だというのにゲル公のように高ぶってくるとは。俺もまだまだ青い…」


適当につかんだネズミにデコイを括り付け、腰元には鎖を出し、腰から魔剣ソウルキラーを引き抜いた。

伍長は仕上げるだけ仕上げたが、まだまだといったところ。囮にもなるかどうか怪しい。


そんなことをつゆ知らず、Gチームは深淵に向けて進み続ける…

次回Chapter81は7月10日10時からとなります

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