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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅱ-4.シルベー城制圧戦
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Chapter79. Attack!Attack!Attack!

タイトル【進め!進め!進め!】

ここで騒動の渦中にあったシルベー城と潜入員に話を移そう。



遠方からの響く数多の羽音と、瞬く間に監視塔が破壊されていく様に城内は大混乱に陥っていた。


桁の次元が違うだけの資金を投下して改装した、まさにカナリス将軍の手腕とそれから生み出される血税の結晶が。



波が砂をさらっていくように崩れ去っていく。



 戦場は無情なもので、そんな状況を利用しパルメド、少佐、そしてガンテルは合流地点にたどり着き、Bチームを待機している。

偽装が済んでいないPALに関しては適当な魔導士の装備一式を身にまとい、成りすましていた。



「生きてる心地がしやしねぇ、人生4番目に死ぬかと思ったぞこの野郎!」



合流ポイントにてガンテルはわめき散らした。しかし混乱は想像を凌駕するものであり悲しいことに人ひとり叫び倒しても誰も気にしないありさまだ。



「この鎧もどき…サイズが合ってないらしい」



PALもPALで大変だった。


屈強な彼にしてみれば本来しなやかな男などが着用する魔導士の鎧はきつくて仕方がないのである。

ズボンはドイツのソーセージにパンパンに膨れ上がり、胴体の鎧はまるで涎掛けに見えるありさまだ。



そんな哀れな様を見てガンテルは腹を抱えて笑う。



「HAHAHA!!!!!!そいつ女兵士用だぞ!くーっ、だめだ腹がよじれる。まぁ装備は対して変わんねぇけどな!バカみたいなサイズ以外!」



「お前と違ってその辺のものじゃない、そもそも性格と技量が見合わないやつに一番言われたくない」



ごもっともである。彼のサイズが合ってないならまだしも、目の前にいる器と性格が反比例するような人間に言われたくないのだろう。



「野郎!人として言ってはいけねぇことずかずか言いやがって!」



そんなことが繰り広げられる中、少佐はただ機を待ち続けていた。






——————






 少佐らが待機している間、合流ポイントに向かって侵入するBチームとそれを阻む帝国二個小隊との激しい戦闘が繰り広げられていた。



銃声に交じって雷鳴や魔術音が鳴り響く。



——PAONN!!!!———



だが相手は同じながら、ジャルニエ戦と比べて全く異質なものだった。火球を一切飛ばさずこちらへ向けて直進する雷や斬撃を飛ばしたかのような光線ばかりが飛び交っている。



雷に当たれば行動不能に、そして斬撃にカッターをもってしても切断困難な木扉を豆腐のように切り裂いてくる。

こんなもの直撃してしまえばスプラッタ映画のような最期を迎えることになってしまう。



大方、動きを止めた相手を容赦なく切り刻んで仕留める気だ。今までとは練度が明らかに違うことは隊員全員が肌で感じていた。


「連中も侮れん」


ジェイガンは壁を盾にしつつ大柄なPKMで援護射撃しながらつぶやく。


隊員は敵を倒してこそいるが数が多い上、たとえ壁で攻撃をしのいだとしても雷撃に関しては曲がってくるため進軍困難な状況が続く。


バックアップに少佐が搭乗する予定のBMDがついているが車長を欠いているために進むことしかできず、でたらめに攻撃することしかできないだろう。


辛うじて、光る波のような光線は銃弾や床などに当たると効力を失うことはかろうじて理解できるほどだった。


特殊部隊という名を冠している以上、突破しなければならない。いや、突破する訓練を自分と隊員は受けている!



【突破口を開く】



ジェイガンは無線越しでただそう告げる。隊員は即座にヘッドフォンを着用しあらんかぎり光から逃れるように蹲る。


 敵はびこる通路は瞬く間に光と爆音に包まれた。人間の視覚と聴力を失うということは戦場において死活問題。


炸裂し終わった途端、ジェイガンは身を乗り出し機関銃を振り回した。


———ZRDADADADA!!!!!———


ソビエトの大地からやってきた鋼鉄が薬莢をばらまきながら雄たけびを上げる。


荒っぽい射撃に見えるが、その照準は正確無比。次々にまともに動くことのできない魔導士の脳天を撃ちぬいていくのだ。


また、機銃掃射は突撃命令という意味も持つ。

陣形を突き崩し攻撃が止まったとあれば大量の突入隊員が押しよせるだろう。



隊長の射撃で仕留めきれなかった敵を彼らで排除するのである。形成を翻し、最早彼らを止められるものは誰もいない。


——ZDANG!!————ZDANG!!——


魔法音はすっかり掻き消え、戦場は銃声のみに支配されていった。


帝国軍もただでは引き下がろうとしない。密度はかなり落ちたとは言ってもいまだに雷などが隊員に襲い掛かる。


「——ッ!」


鍛え上げられた反射神経と生存本能が雷を間一髪で回避したその時である。


扉をいともたやすく八つ裂きにしたあの弓状光線が差し迫っていた。頑張って体を動かしても右半分が持ってかれるかもしれない。


こんなところで死ぬのか、脳裏に走馬灯が上映され始めた時である。


———ZRAAAAAAAAAAAPP!!!!!——


目の前には大きな人型の影、そこからまばゆい光がアーク溶接のように漏れ出しているではないか。浮き出る機関銃のシルエット、敵に対する殺意が最も高い男。ジェイガンである。



「立て!撃て!殺れ!」



身を張った叱咤を受け隊員は敵に瞬時に照準を向け、トリガーを引くのだった。


———BANG!!!!——


光に包まれながら銃弾は敵に向かって一直線へ飛んでゆく。






——————







激しい抵抗と猛攻を食い破りながらBチームは進む。命を懸けあうのは何も彼らだけではない、敵である帝国軍も同様である。



雷を躱し、光に触れず。

続いて手から次弾が放たれてから、逃げられる前に引き金を引く。



一歩間違えれば即死しかねないが、一番確実に敵を排除する方法はこれしかない。



映画のようにフルオートで弾丸をばらまくまでもなく、着実に殺すのが特殊部隊のやり方。

背後からジェイガン隊長が援護射撃を行い、それを追い風に隊員たちが押し寄せていく。


「——すぐか…」


ジェイガンは赤く過熱しきった銃身を素早く引き抜くとその場に放り投げ、スペアのバレルを装着する。続けて射撃すればコイツがやられかねない、弾数は残り200。一気にカタをつけなければなるまい。


彼が止まっている間、他の隊員が一瞬高らかに右手を上げると総員感覚を遮断する。


フラッシュ・バンの合図だ。隙を作ってなるものか、Bチームは隊員から隊長まで一心同体である。そのため誰かがつけ入るスキを作れば他の面々が補いあうのだ。以心伝心で戦ってきた間柄に言葉など不要。


ジェイガンは弾薬ベルトを開いたレシーバー上に乗せると力強く叩きレバーを引いて戦線へと復帰する。


———DLALALAA!!!!!——


隊員は援護射撃を背に天高く上る竜の如く、ビーコンへと向かっていった。






———————




———シルベー城合流ポイント付近


——KA-BooooMMMM!!!!——


最終防壁の壁が突如爆破された。


「やれ!怪物を何としてでも止めろ!」


指揮官だろうと推定されるソーサラーが決死で叫ぶと扉に向けて一斉攻撃が始まった。

まばゆい光と電撃が向こう側に向けられる。逃げ場のない一斉攻撃にBチームは成す術もなく散っていったのだろうか。


———ZAAAAAAAPPPP!!!!!——


否。無数の電光が散らばり、ファントンが激しく減退していくではないだろうか。Bチームにはジェネラルどころかアーマーナイトすらいない状況だというのに何が起こったのか。


——BrooooOOOOOMMMM!!!!!———


猛牛めいてエンジン音と粉塵を巻き上げてバックアップのBMDが姿を現した。

金属で魔法が打ち消せるならば装甲だらけの空挺戦車はまさにうってつけ。


何も攻撃する必要などない、すべてを踏みつぶしてしまえば良いのである。



怒り狂ったじゃじゃ馬の如く、城内に押し入ったBMD-2は歩兵に向かって突撃し始めた。


正面から履帯をきしませ、排気管からおびただしい量の白煙と轟音を吐き散らしながら進む!

当然猛攻を受けるわけだが、生物ではない装甲車両に魔法など微塵も効くはずがない!



「逃げるな!殺せ!」



それでもなお指揮官は声を張り上げるが、自動車という存在を知らない帝国人にとって傷一つ着かない得体の知れない怪物を相手にしろというのが無理な話で逃亡兵が続出した。



「…悪魔だ…悪魔がやってきた…」



果てしない絶望に叩き落とされた魔導士はがっくりと膝をついてそう漏らした。

最早戦線維持すらままならなくなった群れを排除するのにそう時間はかからなかった。指揮官を射殺し、合流ポイント付近を制圧完了すると一報を入れた。



【こちらTeam B 制圧完了】


【LONGPAT了解、合流する】


【了解】


どうにか冴島少佐らはあの激しい戦闘に巻き込まれず無事なようで、ジェイガンは機関銃を肩に担ぎ捜索命令を下すのだった。






———————




「おい、ここだ!」


隊員がビーコンを頼りに捜索していると誰かに呼びかける。

念のため銃口を向けながら声がする方向に振り向くと、細身の槍をもった一体の重装兵が立っていた。



敵として見慣れているアーマー兵に思わず引き金を引きそうになるが、周囲の面白いメンツを見るとようやく冴島であることを確認できた。


「絶対お前見られてたよな、おもしろすぎる、最高!」


「…潜入任務ではよくあることだ、覚悟している」


コーカソイドが身に纏えば似合う魔導士の鎧をやたら目力の強いアラブ人と絶望的にくだらないことでゲラゲラと笑う男。パルメドとガンテルだった。


「少佐…ですか?」


メガゾードそっくりの鎧を被った冴島に隊員は声をかけた。


「そうだ。こんなふざけた格好ですまないな。任務ご苦労横にいるのが——」


少佐が他の潜入員について説明しようとすると不謹慎極まりないシュムが割り込む。


「こいつが…ッ パッツパツの男…パルメドだ!」


人間として恥ずべき言動の彼にPALは鋭い視線を向ける。この身なり、どう考えても潜入員の一人である。


かくして合流が確認されると引継ぎが行われた。隊長の誘導でBMDを持ってくると水を得た魚のように冴島は乗り込み、車長用ハッチから身を乗り出すと次なる任務に関して話す。



「諸君らの活躍は輝かしいものがある、だが戦いが終わったわけではない。今後はGチームの援護に回るように。報告すべきことはあるか。———ジェイガン曹長、何かあるか。」



少佐はジェイガンに報告すべきことがあるかどうか話を振ると、彼は長々と口を開いた。


「体感ではありますが、ここに居る敵兵はジャルニエで戦ってきた連中とはまるで違います。今までは火球で弾幕を張り稲光で阻んでいましたが、今回では稲光と弓状の光線を放ってきました」


「この光線なのですが、分厚い扉等を切断することができ人体に直撃した場合即死は免れないかと。」



「しかしながら戦って分かったこともあります。この光線はBMDといった装甲は基より機関銃のレシーバーでも防御することが可能です。現に私がPKMで部下の盾になったときまるでショートするかのように光が散らばり無効化したのが証拠です。」



戦ってみて掴んだ感覚をありのまま報告する。



ここに居る兵士はまるで練度が異なり、確実に殺しにかかっていること。魔法の性質がこれまでとはまるで違うこと。

そしてその防御の仕方。新たな英知がここに蓄積された瞬間である。



「了解した。この件に関しては俺がGチームに報告を上げておく」



少佐はそう言い残すと装甲の棺桶に自らの身を埋め、考えた。


いかに犠牲を出さず作戦を遂行できるのかと。ジェイガンの報告からするに、歩兵との相性が絶望的までに悪い。その分、ミジューラや装甲兵器が盾にならねばならない。


だがいくら50mmの装甲を身に纏っているとは言え、中身に入っているのは人間だ。


【突入ポイントに向かえ】


冴島はスタッフ全員を無傷で帰還させる。そう意気込むと、Gチームの待機ポイントに向かうよう操縦手に命令した。


これから地下の司令部に乗り込むまで続く長くい戦いが幕を開ける。

次回Chapter79は7月3日10時からの公開となります

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