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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅱ-4.シルベー城制圧戦
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Chapter77. In the pouring steel rain

タイトル【鋼鉄の雨が降りしきる中で】

——ウイゴン暦6月22日 既定現実6月29日 午前5時46分

必要な情報を得て、作戦は一気に加速する。


大型機を運用するジャルニエ城飛行場では、無数のクレインクインを排除するIl-2が25機と城内制圧用の空挺戦車を搭載したIl-76が。


ハリソン飛行場においては兵員を満載したMi-24Pと輸送ヘリが一斉に飛び立とうとしていた。


当初はTu-95による爆撃が予定されていたが、制圧を目的とするため行われなかった。


ここで作戦内容を振り返ろう。


まず最初にジャルニエ城に展開されているカタパルトを無数のシュトルモヴィークにて全滅させる。

その後BMDとその乗員、制圧要員を降下。潜入部隊と合流し一気に司令部に殴りこむ作戦だ。



これによりジャルニエ城制圧作戦と比べ大幅に人員を少なくすることができ、作戦の高速化に寄与している。


現代の軍隊において最もコストがかかるのは歩兵。帝国軍との戦闘において損耗が激しい以上こうなるのもやむを得ないことだろう。



——ジャルニエ城飛行場





作戦の先陣を切るil-2部隊が揃えられていた。

当機は襲撃機シュトルモヴィークの名を冠した最初の航空機である。


強力な機関砲は基より、ロケット弾や破壊力抜群の250kg爆弾を搭載し、地を這いずる敵を根こそぎ排除するのだ。


投下されるのは5編隊25機。

何を積載しているかは隊によって異なるものの、凄まじい火力であることに変わりはない。


また今回の戦闘においては対空設備がまるでない帝国軍を相手には、対地攻撃専門のCOIN機として使われている当機が選ばれるに至った訳である。


そうして出撃前の滑走路に来てみれば、最終点検を終えたおびただしい数のレシプロ機が立ち並んでいた。

これは第二次世界大戦の光景ではない、21世紀の今、現実に起きていることなのだから驚きである。



———VLooowwwWWW!!!!!———



各々がエンジンに火を灯すと、まるで蜂の大群が訪れたかのように辺りは轟音に包まれた。


【こちらJ-HQからBEELegion(第一編隊)01 1番滑走路より離陸せよ】


【BEE FIGHTER 01了解、離陸する】


管制塔からの指示を受けた最初のペンギンは(il-2)滑走路に躍り出ると長い助走を経て空へと駆けていく。






——————







——午前6時15分 シルベー城郊外 シューター陣地 


200門という戦後類を見ないカタパルトを運用するにあたり、多くの人間が駆り出された。


シルベー城に所属する大隊と補助小隊合わせて400人余りの兵士が動員され、湿地を超えてきたSoyuzに備えている。


ここで設置されるクレインクインとはシューターの中でも鋭利なものを飛ばす巨大な設置型バリスタで、基本的に攻城に使われるが攻め入る軍勢に対しても運用される兵器。



1基を運用するには最低でも4人が必要で、魔具をつけた装填手と牽引手、照準手、砲手員がいなければただの置物だ。


単純計算で200門すべての運用は不可能であり、実際の所稼働するのは半分の100門程度。


それでは少ないと思われるが、真の恐ろしさはそこではない。


敵の進行方向を狙える位置のものを優先的に使用するという運用を取っており、敵が安全地帯を見出してそこから逃げようとしても、波状攻撃を仕掛けることができるのだ。


砲塔のように旋回できない代わりに人員が移動し刻一刻と変化する戦場に対応した陣形で質量兵器が降り注ぐ。陸は想像もしたくもない地獄と化すはずだった。


あれが現れるまでは。



「照準狂いなし、発射準備できてるな」


射手が照準手に声をかけた。異端軍はどこからやってくるかわからない。いつでも発射レバーに手をかけ、その機を伺う。


「いつでもいけます」


そんな時、遠方より蟲の羽音をゆがめた轟音を吐き出す黒い影が現れた。シュトルモヴィークの大群だ。


———wwwWWWWWeeeeeee!!!!!!———


Il-2はシューターにめがけ機銃掃射をし始めた。



———ZDADADADSH!!!!!———


戦車や野砲を完膚なきまで破壊するように装備された23mm機関砲を前に、木製のクレインクインはチーズのように穴をズタズタに引き裂かれ、あっという間に崩れ落ちた。


それだけではない、機関砲弾は威力を失わないまま地上に着弾し、湿った土壌を巻き上げ操作要員に牙を剥く。


「グワーッ!」


時折叫び声が上がるが、大概の兵士は叫ぶ暇も与えられることなく散っていく。


「撃て!撃て!」


混沌とした状況ながら指令官は決死で声を上げるが着弾音にかき消され意味をなさない。


機銃座でもない限り、襲い来るil-2を叩き落すのはまず不可能。シューター陣地で行われたのは最早戦いとは言い難い虐殺であった。


どんな過酷で劣勢であっても逃亡は許されない。たとえそれが負け戦であっても立ち向かうしかない。


「角度を立て右方向に敵!」


「発射!」


それに一方的に破壊を待っている程帝国軍は腰抜けではない、無謀ながらil-2に向け旋回し発射レバーを倒したその時、空飛ぶ黒い怪物の腹から何かが落下した。


——whizzzZZZZZ…——


250kg爆弾だ!






——————








 シュトルモヴィークの真の恐ろしさ、それは機銃だけではない。あくまで機銃掃射はおまけに過ぎず、その本領は搭載した爆弾やロケット弾にある。


爆弾を投下し終えたil-2はV字を描き空高く上がっていった。放たれた大きな攻城槍とすれ違いになりながら爆弾は地面に向けて一直線に落下していく。


————KA-BoooooOOOOMMM!!!!———


これまでの爆破魔道や23mm機関砲とは比較にならない大きな土柱を巻き上げた。

尋常ではない衝撃波と爆風、そして破片を四方にばらまきながら破壊の渦に巻き込んでいく。


爆心地にあった5基のシューターが跡形もなく消え去り、周囲100mのシューターも根こそぎ倒壊していた。



———ZDADADADSH!!!!!————KA-BoooooOOOOMMM!!!!———


無慈悲な攻撃は続く。

幾度となく爆弾とロケット弾の雨が容赦なく降り注ぎ、生き残りを残らず死体に変える。


竜騎兵部隊を偵察機戦にて喪失しているため、対抗するには巨大な攻城槍を直撃させる他ないが、ドラゴンナイトを上回る運動性を前にバリスタの攻撃は止まって見えるようなもの。


「装填急げ!」


「発射!」


射手がレバーを引くなり蓄積された力が解放され、大男一人分あろうかという巨大な矢を加速させた時である。


——————wwwWWWWWeeeeeee!!!!!!———


悪魔の羽音が迫る。

戦闘機よりは重く小回りが利かないと言っても最低限の運動性を有している。

多少無理を掛けながら、操縦桿を握りしめ右旋回して射出される攻城槍を避けながらロケット弾を放つ。


——VRASH!!!!!——


何故シューター陣地襲撃をヘリコプターで行わなかったのか。すべての答えはここにあった。積載量の限られる攻撃ヘリ、特にハインドは便利な反面酷く鈍重な機体である。


古い設計も相まって輪にかけて鈍間なためクイン・クレインの餌食なる疑惑が浮かび上がった。


だが攻撃機、シュトルモヴィークが遅れをとるわけがない。

Il-2を狙った攻城槍は空を切り、代償といわんばかりにロケット弾が近づく。


——KA-BooooMMMM!!!!———


土柱がはるか高く立ち、蹂躙されていった。





——————





防ぎようのない空からの大火力攻撃に大半のシューターは成す術もなく駆除されていく。

その一方il-2部隊は無傷なはずもなく、1機が射出された槍をかすめ作戦に支障はないものの作戦続行可能状態でとどまっていた。


シューターを完膚なきまで破壊しても、彼らの任務は続く。


———ZTATATA!!!!


地上に張り付いた敵は翼前方に設けられた7.62mm機関銃で薙ぎ払っていく。弾丸の雨を受けた逃亡兵は水をかけた羽虫のように物言わぬ物体と化した。

なぜ逃げる兵士を攻撃するのか、血も涙もない攻撃には理由がある。


シューターを動かしている兵員は城の兵士が雑多に集められたもの。

つまるところ制圧作戦が進められている城へと向かわれた場合押し負ける場合が考えられる。


絶対に作戦を成功させるために、連中を一人残らずつぶさねばならないだろう。


———WeeeeEEEEE!!!!———


周囲に死の羽音が木霊する。

黒いハゲタカの攻撃によって逃げ延びようとする兵士は一人、また一人と倒れていった。


次回Chapter78は6月20日10時からの公開となります。


編集ミスが見つかったため再投稿させていただきました。ご迷惑をおかけし申し訳ありません


・登場兵器

Il-2

ソビエト連邦 イリューシン製造の攻撃機。襲撃機とも。

かなり機動性が高く、空から降り注ぐ20mm機関砲やロケットポッドは敵を全て薙ぎ払い、搭載する250kg爆弾は絶望をもたらす

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