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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅱ-3.ダース山の戦い
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Chapter 61.Fantasy of Sword and Deathmatch

タイトル【剣と魔法と死闘】

戦車隊はいついかなる時に伏兵が出現するかを強く警戒していた。対戦車兵器がはびこる現代において一つの見落としがすべての死につながるからだ。



 反対に、進軍速度が遅いことに目をつけた帝国軍は冒険者を使った[実験]をもとに作戦が進められようとしていた。



Soyuz側が進む新山道は斜面の角度を緩やかにする代償として、山をいろは坂のように迂回するように作られている。



それに比べ旧山道は急斜面である代わりに最短距離になるよう作られていた。


ロープや金具が打ち込こまれているとは言っても半ば崖であり、サルバトーレ少佐率いる小隊はそれを勢いよく下ってゆくのだった。





————






本隊が待機していたのはちょうど霧の海が終わりを告げるかという場所であった。

限界まで地の利が使える場所で、時間を稼ぎつつ対策法を伝えるためにここに決められたのである。



副司令官ニールの元で百人近くの勇者部隊が待機しており、通常のガビジャバン崩れであれば殲滅できるといっても良いだろう。




少佐が合流地点にやってくると、副司令であるニールが彼を待っていた。



「成果は得られましたか、少佐」



「もちろんだとも。大まかにだが角付きが2、イノシシ1。あとは得体のしれないのが一ついた。――俺の考えが正しければイノシシが指令部に違いない」



「まともに戦えば師団でも勝てないことは明白だ。雇った連中が10分持たずに始末されたからな。たった4つと思って侮るな、正面からだと中隊が殲滅されるだけの火力を持っている」



「周りにいる歩兵連中も似たような火力で正面からでは相手にならん。」



「構造を見たんだがおおよそまともに視界はない。歩兵が目、やつらが足として動いているのだ。角付きとイノシシだけだが大まかな死角は図解してある。目をつぶすか陽動してから司令部を叩け。この内容を大至急通達せよ。」



サルバトーレは尊い蛮族の犠牲のもとに成り立ったレポート内容をニールに伝えながら、図のついた記録用紙を彼に手渡すと臨時の集会が開かれることに。


記録書の内容が精巧に伝えられた後、少佐を含む兵員すべてが配置についたのだった。

着実にあの怪物部隊をねじ伏せるために。



ダース山の航空写真によると標高150m付近からでないと目障り極まりない濃霧は晴れないという。だからと言って敵は待ってくれないだろう、必ず霧中で勝負を仕掛けてくるはずだと冴島は考えていた。



襲撃をかけてきたのは今まで見てきた帝国正規兵ではなかったことも引っかかる。



OV-10で観測された青紫色の鎧をした歩兵が出てきていないのだ。

であればあの非正規兵の存在は一体何なのか。


深く考えていたが少ないヒントでは答えが出るはずもなく、どこからともなくやってくるゲリラに対して気を配っていた。



また外にいるジェイガン率いる歩兵チームも何かしらの違和感を抱えていた。ゴミのように排除した蛮族とは異なる、また別の視線を感じていたのである。不穏な空気が立ち込める。






—————






――標高280m付近――




 より警戒を強め、少しでも気配がする場所に対してもM4やAKの掃射を浴びせ、着実に下山していった。


1000m以上下っているにも関わらず、霧は晴れない上光景はわけのわからない文字で書かれた看板がある程度で代り映えせず、下山しているのか怪しくなってきたときである。



【LONGPATよりYOGA-01、砲撃開始、フォーメーションB用意。GUNNERも同様、射撃を開始せよ】



【YOGA-01了解】



【GUNNER了解】



少佐は何かに突き動かされたかのように無線機を取ると、ダルシムの乗るT-55とツングースカに砲撃命令を下すと、冴島はBTRの車内で怒鳴りつける



「歩兵に連中を近づかせるな!歩兵を守れ!」



突然の臨戦態勢。それには訳がある。


今までの地形は道に沿って平坦な通路で周囲には柵などが敷設されていたのだが、それが意図的に破壊されているではないか。



つまるところ、山道の脇に敵が潜んでいると踏んだのだ。



――ZDAASH!!!!!――DLALALASH!!!!



100mm砲と30mm機関砲がさく裂し、あたりを破壊の渦に包み込む。どうやらその予感は命中したらしく、歩兵からは遠くからではあるが血煙が観測できるほどであった。


 だがその大火力はサルバトーレ率いる部隊を叩き起こすのにあまりにも十分。



指揮車であるBTRの付近にいた隊員がその餌食になった。

T-55が肉盾になるようにして指揮車と横方向に挟み、ツングースカが下方向をカバーし凹の字状になっていた。


その合間を縫って、無数の剣闘士がニンジャのような速さでこちらに迫ってきたのである!

台風の目を突かれたに等しい。



死角をうまく利用し、少しでもこちらが撃てば同士討ちしてしまう位置をうまくとっているのだ。いくらかイスラム原理主義過激派集団の兵士でもここまで肉薄はしないだろう。



今までと何かが違う。



「――クソッ」



隊員は即座にAK102を構えると向かってきた狂戦士相手に発砲する。

至近距離で正確な射撃を食らった敵は地面に転げるが、それはあくまで囮でしかない。



上からはスパイダーマンの如く別の勇者が襲い掛かってきたのである。



今まで相手にしてきた非正規軍とは雲泥の差がここにある、そう彼は確信した。


今まで悠々と射殺してきたのは、あくまで歩兵たちがどのような行動をとるのか見定めるためのモルモットに過ぎない。



 反射で振り下ろされた剣をレシーバーではじき返すと勇者の胸当てに銃口を突きつけ3発ばかりライフル弾をねじこんでやるが、後ろから殺気を感じ振り向きながらフルオートで対応する。



「敵だ!数が多すぎる!」



【LONGPATから各員、撤退だ!車両に飛び乗れ!】



悲痛な叫びが無線チャンネルに広がっていった。



 戦車とツングースカ、そして指揮車を総動員して随伴歩兵を守る体制は続く。


敵が歩兵のいる中央部に入ってくる通り道に対し、同軸機銃や機関砲での圧倒的火力掃射で侵入する敵は鉄と肉の欠片にすることはできた。



しかしながら懐に入られた敵はあまりに多かった。

下手に撃ちあえば同士討ちになりえたことから機関銃以外の火砲類は封じられたに等しい。


そのため霧のない標高150m以下まで撤退し、自走砲からの弾幕射撃で根絶やしにすべく撤退準備を始めていた。



帝国軍側も数と練度にモノを言わせ、撤退を図るSoyuzに対し容赦のない追撃が行われる。



ジェイガンは部下を援護するため自らが囮になりながら弾切れ知らずの銃を振り回す。

突撃銃と明らかに異なる銃身は白煙を濛々(もうもう)と吐き、弾丸は次々と薬室に飲み込まれてゆく。



彼が持ち込んでいたのはソ連製汎用機関銃PKM。突撃銃と比べて圧倒的な弾数を誇る銃でジェイガンはT-55付近でランボーめいて乱射しながら部下を守っていたのである。



「出てこいクソッタレ!」




——ZDLADLA!!!



ひどく鋭く重い発砲音と共に有象無象の薬莢とベルトリンクが吐き出され、敵の死体と共に地面に転げる。


だが敵のバーサーカーはジェイガンに矛先を変えると、砂糖を食らいつくす蟻の如く襲い掛かってきたのである!




四方八方から剣撃が飛来し、機関銃を振り回して排除し続けてもなお、数が目減りすることはない。

それは車両に飛び乗った隊員にも変わらなかった。


勇者という魔具ブーツの力添えを得て、三次元機動を主軸に戦うエリート兵士の前ではある程度の高さは意味をなさない。



藁にも縋るかのようにT-55にたどり着いた隊員にも無慈悲な大群が跳躍しながらその命を狩り取るべく牙を剥く。


一人は車長用DShK38で向かってくる敵を、もう一人は機銃の雨を掻い潜り飛び上がってきた怪物を叩き落とす役割を担う。



———DAMDAMDANG!!!!



強烈な反動とマズルフラッシュは儚くも死闘を繰り広げる戦場に消えていった。






—————







 恐るべき数の兵士はいくら機銃で掃射し続けても勢いは衰えない。


そればかりかタンク・デザントしようとする随伴歩兵を飲み込むほどで、冴島の撤退命令が出てから暫くしても車両に逃れることができたのは隊の半分以下の3人。



帝国軍は恐ろしいばかりの執念で逃がすまいと食らいついていた。



 ジェイガンの周りは辛うじて数をさばいていたが、徐々に弾切れ知らずの銃の限界は近づいていることはおおよそではあるが感じていた。その矢先である。



赤色の鎧に混じって、青紫の勇者が稲光のような速さでこちらに迫ってきているではないだろうか。

今まさに相手にしている敵のさらに上を行く存在。


それに気が付いた時にはあまりに遅すぎた!



「——くっ!」



ジェイガンは脊髄反射でPKMの銃口を上げると、知覚できない恐るべき速さで斬撃が飛んできていたのである。


かの剣豪、宮本武蔵をはるかに凌駕するような一撃を辛うじて防ぐと、筋肉に無理をさせて機関銃の照準を向け、引き金を思い切り引いた。



目の前の敵に銃弾をぶち込むことができたが、彼はどこか手ごたえがなさを感じていた。


それもそのはず。散々見てきた自動小銃の死角を見出したサルバトーレに同じ手は何度も通用しないのだ。



限りなく姿勢を低くして銃撃から難を逃れると、再び足元を光らせながら敵を切り捨てるべく力を込め踏み出そうとした瞬間である。



——BANG!BANG!



その銃弾はジェイガンの援護によって戦車上に逃れた隊員のものだった。


Soyuzにいる以上一人ではない、お互いが団結しあうのだ。


思わぬ反撃を受けたサルバトーレは盾を構えながら半歩下がると、それ補うかのように別の勇者が砲塔にいる隊員に向かって飛び掛かるが、即座に砕け散った。



——FIZZ…——


ツングースカの機関砲身から硝煙が立ち上る。Soyuz一人ではない、団結し互いを助け合う存在。それがSoyuzなのだ。






————






 青紫の鎧をしたサルバトーレがフェードアウトしてもなお、敵の猛攻は収まる兆しを見せない。


3両の4式中戦車【Edmond】たちも、峠を攻める様に機敏に動き回りながら敵兵士に向けて突撃を敢行したのである。


見たことのない図体から発せられる聞きなれないエンジン音と、あまりに無機質なその姿がこちらに向けて迫っているのだ。



勇者たちは金縛りにあったかのように恐怖で動けなくなった。そんなことつゆ知らず、装甲の悪魔は情け容赦なく迫る。



「グワーッ!」



「キエーッ!」



中戦車と言ってもその重さは異界まで吹き飛ばすトラックの何倍も重い質量をもつ物体。



一度でも履帯に引きずり込まれることや、まして接触すれば命はないだろう。

思わぬ挙動にひき潰された勇者は悲鳴を上げる。



同士撃ちが怖ければ飛び道具を使わない方法で排除すれば良いのである。



【LONGPATからEdmond各車、後退援護せよ】



【Edmond01了解】



冴島の乗るBTRから無線が入ると、前進を続けていたチトらは迫りくる敵に対して壁になるようにして立ちはだかったのだった。



4式中戦車1号車長、本田は迫りくる敵兵士の群れに晒された。並大抵の執念でさらに後方に居る歩兵を排除しようというのだ。それを黙ってみている程Soyuzはお人よしではない。


少佐の命令で盾になったからと言って何もしない訳にいかない。



【こちらEdmond01からEdmond02・03へ、各車砲塔を後ろに向け後方で支援、03は02のさらに後方に移動せよ】



「機銃と砲を駆使し蹴散らせ!」



Edmond01の車長、本田は騒音あふれる中無線機をより口元に近づけて連絡した後、人が変わったように怒号を下す。


本田の指示を受けたチト2両は砲塔をぐるりと回しながら、少佐たちが後退していった方向に車体を向いて1号車と距離を取り始めた。


相手は歩兵と侮ってはいられない、あの驚異的な身体能力をもってして車内に入られれば命があるか怪しい。近づかれたら終わりだ。



———DLAAAAASH!!!!



KA-BooOOOMM!!!——BooOOOMM!!!



同士撃ちという檻から解き放たれた戦車は、恐ろしい数で迫る敵向けて機銃の雨を巻き起こし、砲撃の雷を齎した。


水を得た魚のように暴れまわるチトを前に、オリエンタル文明から出てきた勇者どもは成す術く倒れ、砕け散ってゆく。



「装填急げ!」



「装填完了!」



「発射!」



外で起こる華々しい鋼鉄の雨の裏では懸命に榴弾を取り出し主砲に込めて、即座に砲撃を繰り返していた。



——ZDAASH!!!!!——



主砲の75mm砲が火を噴くと車体を揺るがす反動が襲う。


それで終わりではない、砲撃が終わった後は砲手が機銃を操作し、霧のせいで視界が悪くても確かに存在している敵に対して放水するかのように撃ちまくるのだ。


決死の後退援護戦は始まったばかり。






—————






 鋼鉄で出来たバケモノ相手に剣を持った仲間は次々と死んでいった。


形がのこれば良いほうで、跡形もなく吹き飛ばされる兵士もいる。

だが戦争を生き残り、加えてサルバトーレによって鍛え上げられた精鋭中の精鋭はただ突撃しているだけではない。



 正面からダメならば飛び越えてしまえば良いのである。そのことに気が付き始めた勇者たちは飛蝗めいて4式中戦車を飛び越え始めた。



「やはり図体だけか!」



ある勇者は魔具ブーツを光らせワイヤーアクションのように跳躍すると、本田の駆る中戦車砲塔上に取りついたのである。


それだけではない。手にした剣を振り下ろし、車長用ハッチを破壊しようときているのではないだろうか。



——QRAM!QRAM!!——



いくつも甲高い金属音を上げてもなお、無残にもハッチはびくともしなかった。


機関銃の弾丸に耐えうるように作られた砲塔上面、古代文明の剣闘士如きでは人間の指を噛むアリのように無意味な所業。


そればかりかその真下にいる本田に敵が取りついていることを察知させてしまったのだ。



「落として潰せ!」


恐れていたことが起きても彼は冷静に命令した。

するとチトはエンジンを吹かして急発進の後、殺人ブレーキをかける。


その時丁度真上の敵は剣を振り上げようとした瞬間だった!



バランスを大きく崩し、戦車右側に落下した勇者を待ち受けていたのは鋼鉄の履帯と30tの車体。車体を一回転させ入念にひき潰そうとしているのだ。


——ZDAASH!!!!!——


真下で砕け散ろうとする生々しい音を砲撃がかき消したのだった。





—————





ここ戦場では残虐無慈悲が横行するのが当たり前である。


斧で頭を勝ち割られようが火竜に生きたまま食われようが、その屍を乗り越えて食い込まなければならない。


目の前にいる怪物が倒せない以上迂回して敵の喉に食らいつかんと敵兵士は飛び掛かっていった。



霧で視界が取れないことはSoyuzや帝国軍にも多大な影響を及ぼしていた。


戦車同士は無線でこそ会話できたものの、チトに備え付けられた砲手用の赤外線暗視装置を装備しながらの砲撃ができていた。



それ以上に割り喰ったのは帝国軍側である。1両の戦車を飛び越えて追跡する。


剣すらまともに通じず死体を作る怪物とて、相手にしなければ良いこと。

本来こいつらの相手は後。


彼らはバッタのように着地しては飛び跳ねて移動しており瞬発力に優れている。


足止めのために止まっていた戦車を振り切ったこともあり、この先には奇怪な歩兵がいると思っていた。



——VooOOMMM!!!!——


悪魔の心臓が鼓動する音が高山に響いた。しばらく進むと忌々しい悪魔がもう一体いるのだ。まやかしを使ったのか、否。飛び越えたヤツとは違うマーキングが施されていた。



そう、エンジンを止め息を殺していたチトに気が付かなかったのである。敵を探る手段が事実上音し

かなく、サルバトーレが撤退した隊を混乱させるには十分だった。



「ネズミ一匹通すな!」



2号車長、五十鈴の意気込みが車内に走ると着地した敵に向けて掃射が始まった。



——DLLAAASH!!!!——


跳躍準備を行うがためこの鋼鉄の雨を多くの兵士がもろに受け、次々と精鋭が地獄へと脱落してゆく。鋼鉄で出来た人に操られる死神によって。


ツングースカ自走対空砲

シルカの後継型。強力な30mm機関砲とミサイルによって低空を飛ぶ哀れな飛行物体を地上へ叩き堕とす。

対空砲を地上に向ければ歩兵殺しにクラスチェンジ。


4式中戦車

大日本帝国陸軍のマトモな中戦車を2018年の技術で再構築したもの。

量産型がベース。これまでの旧軍戦車とは一線を画す火力を持つが、終戦。

日の目を見たのは何十年後の異世界とは思うまい。

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