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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅱ-1.ダース山飛行場侵攻
50/327

Chapter 46.Air operation[The Mist] 1/2

タイトル【航空作戦:The Mist】

——ウイゴン暦 6月11日 既定現実世界6月18日午前2時45分——


ついに作戦は動き出した。

ハリソン飛行場に搬入された航空機を動員して帝国空軍基地を空と陸の二方面で抑えるのである。



長距離の空撮写真、そしてあらゆる証言を照らし合わせた結果は予想通り厄介だった。

ダース山に防空壕のように敷設され、自然の防御力を活かした構造をしていることが容易に推定される。



長距離砲や爆撃によって陥落せしめることは容易いが、ほとんど山を更地にするような勢いでないと戦闘能力を削ぐことは難しいこと。

そしてSoyuzは戦闘の長期化を防ぐ観点から、二方面作戦が取られることになった。



また、地上部隊要員のZSU-23-4はジャルニエ城を出発しており、合流地点で待機している。



15日未明、ハリソン飛行場に設けられた大陸めいた格納庫の扉が開かれた。


出てきたのは戦場の目ことOV-10であり、深夜から準備が進められていたのである。


 ジェット戦闘機と比較すると華奢(きゃしゃ)な図体と武装を基にエンジンを始動し、滑走路へと向う。


証言と航空写真という大雑把な条件下ではまだまだ情報が足りない今、変わりゆく敵地の偵察が必要になる。レーダーだけではわからない[()()()()()]を調べに行くのだ。



「さてと、遊覧飛行と行きますか」



OV-10のパイロットが狭いコックピット内で指を組みながらつぶやくと、管制塔から来た無線を助役が応答する。



【こちらハリソン管制塔。2番滑走路を使用せよ】



【OSKER01了解】



本作戦では重要度合いの高いものから離陸した後、足の遅い航空機から先に離陸する。


OSKER01の離陸後は早期警戒機A-50とその護衛に就くMig23の4機編隊。


それからは5式軽戦車を吊り下げた輸送ヘリと、随伴歩兵を乗せたヘリ部隊が。それを経て本命の戦闘機部隊が出撃するのだ。





—————






 OV-10が離陸すると、アイオテの草原とはまた違う光景が広がる。


今までのビリジアンの絵具をぶちまけたような平原から、次第に荒々しい山へと変化していく様は趣があるものだ。



 数十分飛行すると電飾されたテーマパークのような城が見えてきた。

それがジャルニエの城であり作戦が行われるのはその先。



ここまで来ると平原のやわらげな土地は終わりを告げ、荒々しい岩肌が見える山へと情景は変わる。


不思議なことに森林は広がっておらず、まるで浮島のように赤い山が現れるものであるから次元を超えても自然とは奥深いものである。



 旅人を試すような小さな山を越えた先にはスモークを炊いたかのような霧が広がっていた。ここで気流がぶつかり、何かしらの作用で幻想的な光景を生み出しているのだろう。



【こちらOSKER01からハリソンHQ。高度1500mより濃霧が発生しています】



だが無常かな、これは任務である。


現実世界では到底見ることのできない空浮かぶ赤い島を悠々と楽しむことは許されない。

パイロットが無線を取るとハリソン司令へと連絡を取った。


視界が命の航空機にとって濃霧は死活問題であり、視界不良は命綱のない綱渡りに等しい。


少しでも霧の充満する空域に踏み入れたOV-10とそのパイロットの視界は、今や真っ白に覆われていたのである。


頼みの綱は計器だけ。



 ハリソン飛行場から偵察機が離陸すると、後を追うように航空機が並びだした。


静寂に満ちた闇の中、サーチライトによって煌々と照らされる飛行場にジェットの甲高い轟音が木霊する。



——FizzhhhhhhHHHH!!!



【こちらservice01、離陸します】



【了解。目標地点高度1500mから濃霧あり。留意せよ】



早期警戒機A-50が離陸した今、まるで剣のような鋭利で洗練された姿をしたMiG23が離陸しようとしていたのである。


燃料と言う名の血液と、ターボジェットの心臓を高鳴らせながら滑走路へと出ると、未だ広がる闇にアフターバーナーの青白い炎で照らしながら空へと消えていく。





————

 






 一方、随伴歩兵を担うスタッフらのヘリ搭乗は完了していた。彼らはジャルニエ城制圧Gチームを中心として構成されており、その中には5式軽戦車の乗員も含まれている。


 作戦に備えていたとは言え、彼らに取りついた睡魔はぬぐい切れず、トムスは時折大きなあくびをする程であった。



 輸送ヘリ3機で構成された部隊は1機が弾薬を満載した軽戦車を直接釣り上げ、もう一機が随伴歩兵と戦車乗員。


最後の1機は玉掛けしたミジューラ一人を吊り下げることになっている。



 離陸したチヌークに軽戦車と元はホーディンの所有物だった鋼の槍を手にした彼が吊り下げられると、一斉に飛び立っていった。



エンジン騎士(5式軽戦車)を吊り下げたヘリは流石にモノがモノなため、かなり出遅れてはいたが無事飛行に成功し、真下に広がる高原風景を流しながら進む。



 暗闇が抜けきらぬ空をしばらく低空飛行していると、ゴードンがヘリのドアを開けて身を乗り出すと、こう叫んだ。



「おーい、爺さん!空の旅はどうだい?」



その言葉に反応したのだろうかミジューラは彼に向けて拳を突き出した。


サムズアップと同様、不満はないという意味を持つものである。


驚いたことに槍を、持ったままマネキンのようにピクリとも動かないではないか。

最早ここまで来ると人間かどうか怪しくなってくる。


そしてドアを閉めて内側に戻ろうとすると後ろから何かが聞こえてきた。



「この野郎、冷えるだろ!」



いくら6月とは言え空は冷えるものである。吹きすさぶ風にトムスはヤジを飛ばした。



「そんなことよりよぉ、爺さんマネキンみたいに固まってつるされてやがる。なんなんだ一体。人間じゃあねぇよ、俺ならちびってる」



彼の一言を無視しながらゴードンはありのままを伝えるとトムスは機嫌を悪そうに踏ん反り返りながら吐き捨てるようにこう言った。



「——そもそも城の時からクソたれアーマー相手にスパルタンXなんて見せられた時から人間じゃねぇと思ってる。」


彼らを乗せた鋼鉄の箱舟は敵の待ち受ける山に向けて飛び続けてゆくのだった。






————







日の出を間近にした頃、ダース山頂に設けられた監視塔では一晩中いつやってくるか知れぬ敵を見つけ出すべく交代しながら目を光らせている。


(ふもと)とは比べ物にならない程冷える頂上付近では火鉢が欠かせない。


風を防ぐ構造になっていようと空気そのものが冷たいためだ。


山越えした先に広がるベーナブ湿原から馬鹿らしい程取れる泥炭のおかげで小声死ぬことなく監視が続けられるが、なかなか体に堪えるものである。



中佐の指示で臨戦態勢を取っているここダース山基地では、射出器(カタパルト)用の窯を一晩中温め続けている人間もいるだろう。


自分らが怠けるわけにはいかなかった。


そんなある時、後ろから誰かが呼びかけてくる。



「交代する頃だろ、少しでも寝といたらどうだ。——炭は足しとけよ」



「わかってる。不審な物音と影なしだ」



交代が来ると業務にあたっていた監視員はあくびを拵え、固まり切った体を伸ばす。


引継ぎを行うと、重い体を引きずって炭をくべる大きな鉄匙を手に取り、4個ほど赤黒く燃える火鉢にくべる。


気が付けば空は真っ暗闇から少しずつ明るくなっており、あと30分もすれば朝と変わらない程明るくなる頃合いか。



しかし凍えるのに十分すぎる程空気は冷たく、休憩に行くにも氷に放り込まれた方が幾分かマシな寒さを味わうのであれば監視塔内に居た方がよっぽど良いだろう。



そんな錘をいくつも括り付けたかのような疲れがどっと伸し掛かる時、遠方から何やら妙な音が聞こえてきた。



———VMoooshhhh…——



報告にあった音と同じような耳障りな低音が降ってきたのである。

それも刻一刻と音は大きくなり耳奥を揺らすまでになっていた。


二人は途端に目をナイフのように尖らせると、片方は伝声管に向かい、もう一人は双眼鏡を片手に音の正体を探り始める。



【敵だ!数不明!出撃準備急げ!】



静間に帰ってきた基地にこの一言が伝わると、途端に基地内すべての魔力灯が点灯すると、蒸気を生む窯に注水が始まった。


それと時を同じくして昇降器を動作させる滑車班も持ち場に就く。


兵士は一斉に、積み上げられたように狭いベッドから跳ね起きて鎧を素早く着用すると、辺りは鋼鉄のソールレットの足音で埋め尽くされていった。



これが異界のスクランブルなのである。





————






山頂付近上空200m——



 零式戦52型 6機からなる空戦主力隊は、遙か上を飛行する早期警戒機A-50から随時連絡を受けつつ飛行していた。


この近辺まで山由来と思しき霧が渦巻いており、なんとかレーダーのおかげで助かっているようなもの。


電探(レーダー)がなければおおよそ飛行したくはない環境である。



風の流れのおかげで霧が流れ、赤い山肌が露わになってから初めてレーダー上ではなくこの肉眼で見てここは山の上の空であることを実感した。


まさにその時。

光を反射する存在が流星のようにこちらに上がってきたのである!



【Fighter01から各機、地上から敵機を確認、数は4】



その無線を境にゼロたちは霧の中へと紛れていった。


何もかも飲み込んで不可視に変えてしまう天候、それが霧中である。


彼らはそれを利用した、航空戦はどこまでミサイルやレーダーで着飾ろうが基本は視界が命。

霧に紛れてしまえば、こちらに搭載されている電探で探知して狙い撃ちにしてしまえば良い。



戦闘機隊はそうタカをくくっていた。



HMDのない70年前の航空機はF15らと比べて親身になって敵を探してはくれない。

アナログ極まりない照準で敵に狙いをつけて撃墜しなければならないだろう。


キャノピーに神経を張り巡らされて敵を迎撃しようとした時、雷が霧に大きな風穴を開けて機体をかすめた。


【こちらfighter04からfighter01敵からの攻撃を確認。戦闘に移行】


【了解】



大義名分を満たしたように隊長機fighter01へ無線を飛ばすと速度を上げ、このレーダーに映った敵影を追いかけはじめた。すると敵を表すドットは遠ざかってゆく。


所詮はエンジンを持たない存在、すぐさま撃ち落としてやる。操縦桿についた12mm機銃のトリガーを引いた。



———DLAAAAA!!!!——



暫く発射してもなおレーダードットの一つが消えたが、また近辺に点が一つ増えた。


まるでカバーしあうように現れた存在は、相変わらず火球を飛ばすが紙のように軽い機動性を持つゼロにとってはウスノロ球を避けることと同じこと。



機体を右旋回させると、圧倒的レシプロエンジンの力でドラゴンナイトを追い始めたのだった。





—————-









 ダース山頂上に設けられた監視塔ではその一部始終を双眼鏡越しながら見ていた。

竜騎士隊が謎の影に追跡されていることを。

次回Chapter47は12月12日10時からの公開になります

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