Chapter 43. Der Kongreß tanzt
タイトル【会議は踊る】
あれから一夜が明けると、ついに運命の日がやってきた。
クライアントの証言から現政権代表であるマーディッシュ・ワ―レンサットは航空経路でやってくるということもあり城とハリソンの街に設けられた電波の目。
そして昼夜問わず飛行を続けるA-50によってその影を捉え、本部拠点から出撃した零式艦上戦闘機4機2編隊で取り囲み誘導する順序が取られる。
攻撃態勢に入った場合は撃墜を辞さない為だ。
人力で格納庫から押し出されると、パイロットはプロペラを回す星型エンジンに火を入れる。一瞬白煙を吐くと黒いプロペラが回転を始め、それは真円になってゆく。
そこから生み出された推進力は軽い機体を少しずつ押しながら通路から滑走路へと動き始めた。あたりにはすさまじい風圧で塵と小石が舞いあがる。
【Fighter01、離陸します】
【了解、A-50 が着陸するため2番滑走路から離陸せよ】
【Fighter01了解】
かつてとは違う青交じりの白色の機体は滑走路へと出ると徐々に地上を離れていくとついに空へと旅立つと脚部を格納し巨大な翼を広げそのまま空高く旅立っていった。
戦乱があった草原、森林城塞。深淵の槍との死闘を繰り広げたハリソン、そしてその先にあるジャルニエの城。空から見た地上というのはあまりにも小さく、儚い。
だが目標はその遙か先にいるのである、隊が合流すると速力を上げ半ば迎撃態勢を取りながら県境へ向けて飛行を続ける……
—————
□
A‐50からの報告ではジャルニエ城200km先の低高度にて敵影が確認できたという。
曰く視察に来る時刻、日がちょうど頂点きた頃合いでちょうど正午ごろ。
時刻は10時を過ぎており、報告からするにそろそろジャルニエの城付近にまで接近していることは想像に難くない。
そうして一時間程飛行しているとレーダーを搭載した1番機に反応があった。
【Fighter01から各機、おいでなすった!包囲せよ】
ゼロたちは城先に広がる霊峰の向こうへと飛び去って行った。
霧が広がる霊山に入ろうとした頃、ついにレーダードットは正体を現した。
【こちらFighter02、敵機発見。8騎編隊。——何かの見間違いか知れないがバカでかいトカゲが空を飛んで、そこに小さく人が乗ってる。こいつらなんでしょうか】
【Fighter01了解、包囲せよ】
狭く濃緑色をしたキャノピー越しに8個の点はついにこの目に映った。
拠点襲撃でも見られたこの謎のドット。
連中の正体とはワイバーンに人間がまたがっている竜騎兵。
報告こそ上がっていたが実物を見ると何とも奇妙な光景である。
戦闘機隊は小石を投げられた小魚のように四散すると、霧を翼で切り裂きながら高度を下げ、速力を落としながら機動力にモノを言わせ、竜騎兵隊へと一気に接近し四方を固めたのだった。
帝国側も首もついていない羽ばたくこともないどころか敵味方の区別すらままならない謎の存在に囲まれた以上、親衛隊も黙ってはいない。
端に居た随伴兵は竜具にマウントされた大きなランスを引き出すと首無し飛龍の腹に大げさな程巨大な矛先を向ける。
それを察知したゼロは舞い上がったコピー用紙のように左旋回し、距離を離す。
そんな中でキャノピー内のパイロットはその光景をデジタルカメラで撮影すると、悪戯した子供のように独り言をつぶやく。
「よし、コンデジで報告用はできたな。こいつらとセルフィ―して一躍——いや、コンプラに触れちまう。クソッ」
【聞こえてるぞ。Fighter02、04、威嚇射撃せよ】
———DAMDAMDAMMM!!!!
隊長がそう命令すると2機は一斉に13mm機関砲を置き換えた12.7mm機関銃のトリガーを引くと、重々しい銃撃音と共に硝煙は空の彼方に消えてゆく。
聞いたこともない酷く鈍重な爆発音に恐れをなしたのか、他の兵は武器を竜具に戻し、中央を囲み、飛行していた。
一体中央には何が居るというのか。隊長がキャノピー越しに垣間見るとそこには全身を紅の地金に金色のエングレーブ、明らかに周りの雑兵とは異なることは言うまでもなかった。
ヤツがこの帝国を恐怖のどん底に叩き落した張本人であることは間違いない。
【こちらFighter01からLONGPATへ。目標を確保、拠点まで誘導します】
その報告がSoyuzジャルニエ城拠点へと伝えられると、完全武装のスタッフたちは発着場付近に集合し出迎えの用意を行う。
殺伐とした形で幕を開けた帝国上層部とSoyuzとの会合。これはまだ序章に過ぎない。
—————
□
ジャルニエの城に半ば圧力をかけながら帝国主導の視察隊が誘導されると、完全武装したSoyuzスタッフの出迎えが待っていた。
また時を同じくして、パラディンで構成された親衛隊も堀の周囲まで来ており、制圧後資材搬入と補強工事が完了していた跳ね橋を渡ると、彼らはジャルニエ城門を叩いている。
隊長の一人がSoyuz警備窓口を見つけると部下に待機命令を出し、一人で馬を向かわせた。スタッフが彼を窓口越しに見上げると、ハイウェイの料金精算をするように馬を降りてこう告げた。
「親衛隊長カールマンと申します。我々はマーディッシュ・ワ―レンサット皇太子殿下の命令を受け馳せ参じている。この通り、殿下が直々に署名した書も存在する。これは正式な命令書である。」
まるで深淵でも覗き込んだかのように真っ黒な鎧を着た騎士が腰を低く挨拶をすると、警備兵に国書を手渡した。
警備兵は封書を開き、内容を確認するとひどく困惑した様子で精査すると、匙を投げたかのように対応した。
「俺らおたくらの文字が読めないんだけどなぁ…まぁいい、読めるヤツに回しておく。」
しばらくして親衛隊と視察団両者が迎え入れられると完全武装したSoyuzスタッフが出迎えた。
敵対的外部勢力はどのような装備をしているのか。
そう殿下は視線をくれてやれば、到底理解の及ばぬモノをつけた兵士がずらりと並ぶ。
鎧の代わりに無機質なプラステック・ブラックのボディーアーマーで覆い、槍や刀剣を置き換えたかのように黒鉄色一色の小銃を装備しているのだ。
その姿は殿下の周りにいる視察団にとってはイレギュラー極まりない。
随伴する竜騎兵や親衛隊の面々ですらその異様な姿に向いていたが、マーディッシュ・ワ―レンサットは一度彼らに視線を向けただけで、それ以降というもの視線は真剣のように尖らせていた。
困惑と好奇に揺れる竜騎兵集団を一括し終えると、これまた奇妙な黒服に護衛された戦艦めいた男が姿を現した。
「私が独立軍事組織Soyuzの現場担当を務める権能義隆です。有意義な時間を望んでいます」
その言い草にマーディッシュはいささか疑問を覚えた。
妹に揺さぶりをかける筈が、なぜこのような装飾のないみすぼらしい緑色の軍服を着た大男が立ちはだかっているのか。
見たこともない身なりからして外患であることは間違いない。
「——私はファルケンシュタイン帝国皇太子であり、そして次期皇帝であるマーディッシュ・ワ―レンサットであります。こちらとて是非とも有意義な時間であることを望んでいます」
両陣営代表者が挨拶を終えると、痛々しい戦火の爪痕が残るジャルニエの城内へと足を運んだ。
外では悪魔の塔のような恐ろしい構造物が建てられ、その周囲には彼らがしている作業の音かとは思うが、地獄の鬼どもが歯ぎしりするかのような轟音が屋内でも響き渡っていた。
「大変に申し訳ない。工事日程の調整が上手くつかないもので」
権能は旧応接室に向かっている最中、工事の騒音に眉間を寄せていたマーディッシュをほぐすよう話を振った。
中将は兵の統率等を見て、皇太子殿下は指導者に適任であるという印象を抱いていた。
それと並行するようにミジューラらの証言が頭を過る。
国家を牛耳る存在は皇太子とは別の存在であると。
外交役の皇太子殿下が出てきたのは彼には強い政治権力を与えられていない確固たる証拠で、彼を操るパペッター集団は一体何なのか。
ここまででは陰謀論じみた推測に過ぎないが万が一、これが的中していた場合。帝国情勢は中東めいて厄介なことになっているかもしれない。
仮にも皇太子がここまで来るとは人形遣いはSoyuzを相当の脅威と見ているのだ、権能はそう感じていた。
「何を詫びることもないだろう。我々とて改修工事を急いでいればこうもなるのも当然。私とて器の小さい男ではない」
その気遣いに対し殿下はこう返す。
戦闘後であれば大破した家屋の解体のために作業は止めることなどはできない。
いか仕方がないことなのだと理解していた。
それに加えてSoyuzなる組織はこの城を足掛かりにするべく改造を加えていることなど見通していたし、客人が来るにも関わらず工事を続けているということは、この地から剥離することを恐れていることが伺える。
やはり地の理はないのだろう。
強固なジャルニエの城を制圧された以上、戦闘以外で決着をつけねばならないと考えていた。
互いは腹の探り合いをしていると応接間へとたどり着いた。
そこには帝国兵の代わりに武装スタッフが警邏しており、中将が来ることを確認すると静かに扉を開け、皇太子殿下と親衛隊代表たちを迎え入れる。
そして安全を確認した後、いつでも戦闘態勢を取れるよう扉を閉じると警邏体制に戻り会談がはじめられたのだった。
——————
□
国際的傭兵集団と一国家元首との対談、既定現実世界においてはなんと大げさなことだろうか。
だがSoyuzは帝国を脅威とみなし、帝国側も国家体制を揺るがしかねない存在と考えていた。戦艦長門のような体の権能の隣に別の座席にクライアントが座り、対岸には皇太子殿下が腰を掛けている。
運命の対面でも言いたいが、両者間には鉄のカーテンで仕切られたかのように緊迫した空気が漂う。そんな中、皇太子マーディッシュが口火を切った。
「しかしながらガビジャバンの手先ではなく安心しました。隣国は魔化魍量が跋扈する妖怪国家故に何をしてくるか想像もつきませんから」
「—私とて質問攻めにしたいところですが、あなた方が一番気になっているであろう【来訪の目的】に関してお話しましょう。
我々はジャルニエ県が反乱軍と結託した謎の組織によって制圧された、という報告が私の耳に届きまして」
「いかんせん我が祖国も過去の動乱が続き、未だに復興しきれていない部分もありますから、可能な限り事態を穏便に済ませようと考えました。そこで血を流すこともない交渉に馳せ参じた。ということです。
——私情を挟むならばそれ以上はありますが、場が場です。」
時折クライアントに対して視線を向けながら彼は爪で机をたたきながら権能の返答を待った。世の中はギブアンドテイクが常識である。
たとえそれが次元を超えた向こう側の世界であっても。
takeを貰ったのならばgiveをしなければならない。
中将は皇太子殿下の出方を伺うと頬を撫でてから情報を与えた。
「——ここまで丁寧にご説明頂ければ、我々と手お答えしない訳にはいきませんな。我々はソフィア・ワ―レンサット皇女殿下の依頼の元政権を奪還すべく活動しています」
「我々とて来た場所が場所ですから、調査等も兼ねていますが。それに関しては制圧した地域の開拓・開発に関しても皇女殿下の了承を得ています故ご安心ください。」
その言葉を聞いた皇太子は少しばかり眉を上げただけで感情を表すことはなかった。
この一族は肝が大層据わっている人間ばかりなのだと中将は感心していた。
すると彼は権能に対してこう切り出す。
「我々一族のいざこざに付き合っていただいて大変に申し訳ない次第であります。ですが中将殿、いくら強大な武力をお持ちでしょうがこの問題は一族の問題です」
「——帝国領の開拓等に関しては人民の居住地をつぶすような真似をしない限り許容いたしますが、国政に干渉することに対しては控えてほしいものです。国家反逆者集団の始末しなければ帝国の威厳に関ります故。そちら側も拠点が必要でしょうし、ジャルニエの城は譲渡いたします。」
殿下は限られた情報しか知らない中将に向けて条件を提示しつつ誘導尋問を仕掛けた。
同じ人間の姿を取っていたとしても部外者は部外者である。
祖国のからくりを隅々まで知られるわけにはいかない。彼の発言に権能は少し考え込むと企業人らしい態度を取った。
「我々は依頼契約を受け遂行する集団であります。一度した契約は解約することはできますが、莫大な利潤を生みだせると知った上層部は解約を許さないでしょう。私とて[ここの]Soyuz拠点代表ですが上層部がそれを許さない以上それに従うまでであります。」
それを耳にしたマーディッシュは両手の指を組み合わせ、落ち着かない様子で咳払い。
契約を遂行するSoyuzと内政干渉を受けず新たな始まりを確固たるものにしたい帝国側の意見はまるでかみ合わず、彼は少しばかり苛立っていたが同時にただならぬ存在であると感じていた。
重税がかけられていたために反逆を企てた農民程度であれば、税を下げるよう表約束するだけで済むのだが、この男とSoyuzという組織は全く違う異様なものを察知していたからである。
「失礼ですが少しばかり見くびっていました。反乱軍の代表者は農園の主であることが多く、感情的なものですから。この議題は後に回し——」
皇太子はSoyuzについて他に知りたいことがあるため、殺伐とした話題から逸らそうとしていると同席していたソフィアが割って入った。
「お兄様、他の家族はどうなさったのですか。」
その瞳は到底、血をつながった家族を見るものではなく親の仇を憎む眼差しだった。
一方で、厳しい眼光を向けられたマーディッシュは平然としていた。
まるで波立つ湖面を眺めるように。
すると彼は唇に軽く握った拳一度だけつけると、中将に対してこう伺いを立てた。
「ゴンノ―中将、しばらく失礼してもよろしいでしょうか?」
「かまいませんが」
文化の差を考慮した権能は石像のように固まった体から答えを出すと、マーディッシュは相手に悟られぬようソフィアに対してだけ、冷笑を含んだ哀れみの顔を向けると酷く他人行儀で答えて見せた。
「妹よ、私は血も涙もない蛮族や鬼畜だと思っているようだがそれは違う。一族は当人の意思で、貴様同様の待遇を受け他城にて生活を営んでいる。何も心配することはない」
「気が高ぶる気持ちはわかる、ソフィアよ。そこで一つ、重要なことを伝える。
——父上は我々が手にかけてはいない。それどころか追跡中だ。…依然として行方がつかめないでいる。療養中の場所だった痕跡はつかめているがそれが一番近づいた情報だ。
…よろしいかな。」
まるで自分を弄ぶかのように振舞う兄にソフィアは思わず口元を覆い、視線を下へ向ける。
最も感情的になってはならない場において、自分の身勝手で動いてしまったことにやり場のない怒りを感じていた。
それを遮るよう中将はあることを問う。
「我々はファルケンシュタイン帝国の情勢についてあまりよく知らない。全土のありとあらゆる地形を知り尽くすことができるが、こればかりは如何せん難しいことでありますからな。我々はあなた方がなぜこのような形で政権を奪取したかをより知りたい。」
皇太子殿下は乾いた唇を舌で潤すと、台本がないにも関わらず中将の純粋な疑問に対してその詳細に至るまで説明しはじめた。
「外から来て間もないのですから、特に最近の政治動向などはなかなか伝わってこないものです。何故皇帝の支配座に軍部が居座ることになったのか」
「父上…すなわち皇帝陛下ですが、第四ガビジャバン戦争後、軍事産業を大幅に縮小したのです。これら軍事物資は県で生産しているわけですから、そこの労働者も解雇せざるを得ません」
「当然軍人も同じこと。多くの民は安定した政治を望みました。
幸せで、文明的な祖国を。形こそ歪ではありますが、皇帝陛下が行う古い体制から脱却すべく我らが政権を引き継ぎ、新たな———」
あまりの戯言にソフィアは思わず立ち上がろうとしたが中将は大きな手を差し出すと黙って引き留めた。
「——大まかにわかりました。そういうことにしておきましょう」
権能はマーディッシュの文言には多くのプロパガンダ色が入っているものだとわかった。
ミジューラの証言にあった[モガディシュ]の存在が出てこないばかりか生産ノルマに対しても言及することなく帝国の総評へと移っている。
よほど話したくないことか、それとも知られないためだろう。だが一部は証言と合致していた。
戦後に軍需品の需要が低下し、総合的な不利益を被るのは将軍。
モガディシュはおおよそその将軍が結託した集団となれば溜飲は下がる。
大方の嘘に真実を良い塩梅で混ぜ込めば何も知らない人間はそう信じることが多い。
かつてのナチスのように、都合の良いプロパガンダが出来上がるのだ。
このマーディッシュという男、相当に人を動かす能力を持っている。中将はそう認めざるを得なかった。
「そこで話を戻しましょう。本当にこのまま武力的侵略を重ねるのであれば、我々はSoyuzを外患だと公で発表し非合法化の後に排除します。」
殿下は話に戻ると中将に向けて再び念を押した。
「その提案は受け入れることはできない。我々は特段、武力に対しては屈しないもので。私の指示一つで帝都に居る存在全てを消し炭に変える事ができますが」
だが権能からの答えは違っていた。武力的・政治的、謎の陰謀言いがかり。
Soyuzはありとあらゆる圧力には屈することはない。なぜか、その答えは極めて簡単なこと。
それだけの力を持っていたからである。
利益を度外視すれば前時代的首都如き、空を黒く染められるほどの数の戦略爆撃機で焼死体の山を作ることさえ可能なのだから。
加えて屁理屈を許さず、中将による言葉のつるべ打ちが飛んでくる。
「何故それをしないのか。我々は雑な言い方をしてしまえば傭兵集団。利益のとれぬ戦法は赤字を呼ぶ。国益を分配する皇太子殿下にもそのことは身に染みてわかるはず」
「我々の力をいまさら信じられないということはないでしょう。ひと月過ぎる前に県一つを制圧されたのです。私だったら少なくとも下手に動きませんがね。どうなさいますか。」
超ド級めいた男の言葉にマーディッシュは言葉が出なかった。
プロパガンダでも覆しようのない物量と未知の力、それ以上にジャルニエが瞬く間に制圧された事実が深く突き刺さる。
だが外交というものは背中を見せたら骨の髄までしゃぶられることにつながるのだ。
様々な苦難を重ねて作り替えた軍人たちの夢の理想郷がここで崩れ去ってなるものか。
彼は決して表には出さないがプライドというものが煮えたぎっていた。
「——その言葉は、我が崇高なるファルケンシュタイン帝国に対して宣戦布告するという形でよろしいかと。」
彼は少しばかり感情の混じった声で権能に確認を取った。
その言葉が意味するのは戦勝国との全面戦争である。
言い間違いなのであれば今からでも遅くはない。
そう思い中将の顔色を伺い答えを待っていると顔色一つ変えることなく返答が返ってきた。
「あなた方がそれを望むのであれば」
その一言は帝国との全面戦争を意味する。
言葉一つで命運が分かれると言っても良い外交の場において、彼のその毅然とした態度はSoyuz側固い意志を現していた……
—————
□
帝国側の意見とSoyuz側の意見は平行線の一途を辿り、会談は失敗と言っても良い結果になった。
それどころか状況は悪化し、関係は悪化を極めついには軍事企業と一国家の戦争へと突入してしまっのである。
随伴していた竜騎士たちはその様子を信じられないとばかりに顔を合わせ応接間が一時騒然となる。
新時代へと突き進む新たな方面へと舵を切り始めた帝国と古き時代へと戻すよう依頼を受けたSoyuzとの熾烈な戦いの幕が切って落とされたのだった……
登場兵器
A-50
ソ連製の早期警戒管制機。
Il-76という輸送機をベースに作られており、敵戦闘機などを見張る空飛ぶ重警備員。
そういった事もあって、世界中にあるロシアが関わっていそうなきな臭い所に必ず現れる。
学校で悪行を逐一先生に言いつける人が絶対にいたはず。それを航空機にしたような機体だ。




