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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
ⅰ-4.ジャルニエ城攻略戦
43/327

Chapter 39. Zero Dark Thirty (3/3)

ついにSoyuzはジャルニエ城の大脳とも言える司令塔への通路を発見。


悪辣な妨害と敵の抵抗が激しく日が傾き、もうすぐで夜を迎える頃になってからようやくジャルニエ将軍ベラ・ホーディンが鎮座する司令室まで迫っていたが、敵側最後の悪あがきとして付近の天井を兼ねる床を爆破されてしまう。


崩落を起こし制圧部隊が進行できない程の大穴が空き、一旦進むことが出来なくなってしまう。



 これにてSoyuzの侵入を跳ね除け、戦闘は膠着状態になったと思われた。



しかし転ばぬ先の杖として、上空にGチームを乗せた輸送ヘリコプターが待機したのである。


また司令室付近の壁がないことが幸いした。


これにより攻撃を加えて破壊するまでもなく、柱間は完全武装した兵士が十分通り抜けられるだけの間隔があったのである。


一度手詰まりに見えた作戦はA・B・Cチームから託されたバトンを引き継ぎ、Gチームによる制圧が始まろうとしていた。







————







 ヘリのローターの関係からそのまま横着けすると墜落する危険性もあったことからラぺリング降下が行われることになった。


訓練を受けていた突入チームはよかったが、一番の重荷であるミジューラに関してはそうはいかない。


限界までヘリが横付けした後にハッチから幅跳びをする形で参戦する、アクション映画顔負けの乗り込み方が実行されることになった。

 


——BATATATA…——



塔にチヌークが近づくとローターの生み出す強力なダウン・フォースが吹き抜けの塵を吹き飛ばしながら、グリーン迷彩の施された空を飛ぶ異形中の異形が横腹を見せて高度を上げてゆくと、降下用のロープが垂らされた。



そして雨露が伝うように隊員たちは降り注ぎ、Gチーム隊員たちは塔の壁に足をつけて着実に降り立った。



【こちらGチームからCareer03。降下完了、爺さんのために出来る限り横付けしてくれ。クソほどに重いからバランスを崩して墜落する危険性もある、気をつけてくれ】



【Career03了解。】



隊長が連絡を済ませると降下地点から隊員たちを引き連れ退避すると、上空のヘリコプターはゆっくりと旋回しながら迫ると、開いたハッチから深紅の鎧が顔を覗かせる。


おおよそ5か6mあるだろうか、これだけの距離を走り幅跳びするというのだ。


柱に衝突したり、距離が足りない場合は地上へと身投げすることになるだろう。だがミジューラの顔はそんな状況でも恐怖の色はまるでない。 



ヘリボンを終えると、後部ハッチを開けてミジューラを投下する行程に移行していた。

航空機は前にばかり視界が優先される上に車のようにバックミラー等はついていない。そのため誘導スタッフによって後方確認が行われていた。



「オーライ、オーライ。10m、もう少し近づけるか?よし、5m!もうこれ以上は無理だ!」



ローターを石に掠めないように後退するという極めて高度な操縦によって吹き抜けとの距離は10mを切っていた。そして安定させるためホバリングを続けていた。



「準備はできてるかい」



まるでパワードスーツと見まがうような鎧に、ぽっかりと小さな頭を出していたミジューラにスタッフは声をかける。

いろいろと説明はされたのだがこんなモノが銃弾をはじき返すのだから恐ろしくてたまらない。


こんな怪物を相手にしてきた戦闘スタッフは何者かと思いながら返答を伺うと



「できているとも」



ミジューラはそう答えると、乗員を格納する空間の端まで後退。


そして息を深く吐きながら籠手の魔具が光るまで握りしめ、常軌を逸脱した重量の図体を揺らしながら陸上選手と見まがうような速度に達していった。


 格納室床を強く蹴り上げて風のように加速していけばヘリは上下に揺れるが彼は足を止める程なく虚空へと向けて走り出す。



力強い足跡はほのかに赤い残光を残しながら後部ハッチから飛び出すと、反応しがたい速度で塔の壁が迫る。



「今だ、高度を上げろ!墜落するぞ!」



彼が華麗に跳躍するとヘリは激しく揺さぶられ、スタッフは死に物狂いで声を上げた。


想像を絶する重量配分の変化に、繊細な均衡で水平を維持するヘリコプターは急いで高度を上げなければ墜落してしまう。


パイロットは操縦桿を思い切り引いて地面にひきつけられようとする機体を上へ向かせると徐々に安定し、そのまま塔を離脱したのだった。


              

ヘリコプターを飛び出したミジューラは柱間をすり抜け、華麗に侵入した。

そのまま勢いを殺すべく、手槍の石突を強く突き立てながら足を赤く光るまで強く踏ん張ると、装甲との間で激しい火花を散らしながら止まることができた。



彼が籠手越しに冷や汗を拭っているとダイ・ハードのような光景を見届けていた隊長が合流すると、暗視装置のヘルメットを隊長へ手渡すとこう言ったのだった。



「儂が盾になろう。ヤツの連れている鉄騎兵親衛隊は儂が蹴散らす。あわよくば、あの将軍も…——この兜はお返ししよう。年寄の傲慢ではあるものの、ここは任せてくれはしまいか」



ヘルメットを受け取る際に彼の顔を垣間見ると、まるで親の仇と決着をつけるような眼差しをしていた。隊長はすべてを察すると、背中を押すかのように確認を取った。



「了解。救援した時と同じで良いんですな」



「——ええ。年寄最後の願いを聞き入れて頂き、何と礼を申したらよいことか」



感謝を噛みしめるようにそう返すと、ミジューラは左胸に右の拳を押し当て一礼をした。これがこの世界での敬礼なのだろう。隊長はそう解釈すると、隊員たちにこう命じた。



「これからが最後の戦闘になる。気を引き締めて行け」


「了解」


それに対して隊員たちはマガジンを替え、グレネード弾を一杯に装填して万全の体制を整えると隊員たちは突入準備を整えた。


 司令室へとたどり着くと外界と隔てる扉をGチームが調べはじめる。

するとあろうことか扉の鍵は開いていた。


罠が仕掛けられている可能性も示唆されたがわざわざ司令官がその罠に掛かって指揮が取れないという間抜けな事態を避けることから、その線は考えから消した。 


 ミジューラが扉を蹴破ると戦象のようにずしり、ずしりとした動きで司令室に押し入ると同時に突入チームは水流めいて突入を敢行する……





—————







司令室の内部はというとヴェルサイユ宮殿を思わせるような豪華な内装を、戦闘用に改造したかのような内装であり、最深部では二人ばかりの重装兵と見たこともない鎧を身に纏ったロボットのような存在が背中を向けていたのである。


そんな光景が広がる中隊員たちは一斉に銃口を向けると、隊長はこう勧告した。



「諸君らの兵は壊滅状態にある、おとなしく武器を捨てて投降せよ」



その言葉に二人の重装兵は糸の切れた人形のように動こうとしないが、奥に居る未知の重装兵が深紅のマントを翻しながらこちらに振り向き正体を現した。


まるでコック棒のように細長い兜の下にはかつて見たことのない装甲を纏い、下半身には長い腰蓑をつけている上に加えて胸までの高さがある巨大な盾を手にしており、まさに鉄壁。


挿絵(By みてみん)



するとヤツは鋼の槍を一回転して持ち替えると、分厚い装甲越しから声を上げる。



「これが反乱軍の正体か。だが私には小細工は通用せぬ。兜もなく、落ちぶれた英雄ミジューラ・ヘン・アルジュボンよ。いくら数を連れてきたとしても恐れるに足らず。ものどもは反乱軍兵士を血祭に上げよ。ヤツは貴様らの手に負えぬ。私が引導を渡してくれよう」



その言葉にミジューラは手槍を構えるとこう切り返した。



「——よくもまぁ言ってくれる。良いだろう、将軍(ジェネラル)ホーディン。儂が引導をつけてくれようぞ。隊長殿、悪いが重装兵の排除は一任したい。」



帝国軍とSoyuz、旧王政の英雄とジャルニエの希望を背負った将軍。

複雑に絡んだ因縁が両者熱くぶつかり合うジャルニエ城最後の戦闘が今ここに始まる。



そのゴングが鳴らされると共に、すかさずMGLを持つ隊員は素早く重装兵の頭に照準を定め、引き金を引いた。

退廃的な爆音が指令室に響くと共に一人の重装兵は死体と化す。


だがもう一人の重騎士は盾の影響かそのまま活動し続けていた。




奇怪な鎧を着た将軍ホーディンはミジューラとの一騎打ちを行うべく地響きを立てながらゆっくりと進む。


重装兵の強固な防御力をさらに凌駕する装甲を身に纏い、また隙間を狙われないよう徹底的に密閉した新型の鎧を装備している。それがジャルニエ将軍ホーディンである。


完全無敵に思える鎧にも欠点があった。

たださえ重いアーマーナイトの装甲を強化したため、非常に重い。


防御力のさらなる向上のため、動くための隙間さえ埋めてしまったことも重なり、歩くことくらいしかできないのである。


将軍がこちらに一歩一歩迫るたびに軽い地響きが発生し、ホーディンとミジューラだけの緊迫した空間が広がってゆく。


選ばれた重騎士が訓練を受けることによって初めて使いこなすことができるジェネラルの新型鎧の防御力はミジューラが一番知っていた。


 

——Zoom—Zoom——



ホーディンは歩くこと位しかできないとは言ってもひどく威圧的な空気を纏い、地面と指揮官の証であるマントが靡いたその時、ミジューラは一気に間合いを詰めると手槍を将軍の脇腹めがけて突き立てた。


そこから装甲へ潜り込ませ、てこの原理で引きはがそうとした。だがどこにも引っかかる場所がないどころか手槍の先がバキリと折れてしまったのである。



「その程度の鈍ら如きで勝てると思うとはな。落ちぶれたな」



ホーディンは先がかけた手槍を巨大な盾で挟んで封じると、そのまま体をねじり挟まれた槍を振り払った。


当然ミジューラ自身もこの程度の小細工が効くとは思っていない。


腰をねじらせると、そのまま片手に握られた鋼の槍をこちらへ振りかざし追撃を与えようとしてきた。


動き自体は察知しており盾で上手く受け流すと、槍の間合いから離れ様子を伺う。

装備差によって着実に追い込まれている、そのこと自体は元ジェネラルであるミジューラが一番理解していた。



強固な装甲、そして決め手とならない攻撃力。


解決策を何としてでも捻りだすため、彼は深い思考の海に入ってゆく。どうすれば良いものか。強大な壁に向かって頭をひたすらに回す。



覆すことのできない防御力と質量の差、そして自身の攻撃力の貧弱さにミジューラは着実に追い詰められていた。


恐竜的な装甲厚と可動部を殺した作りによって歩くこと位しかできないジェネラルの新型鎧によって即座に止めを刺されないだけまだ有情である。









————






 このまま嬲られ血祭りに上げられてしまうのだろうか。


歴戦の将軍にはまだ手は残されていた。彼は背中から残り少ない新たな手槍を引き抜くと、床の石材にヒビが入るほど力の限り踏みしめ槍をホーディンの右手めがけて投擲したのである。



通常の人間が投げたとしても、車のフロントガラスを用意に貫通可能な破壊力を持つというのに、魔具によって生じた重機同然の馬鹿力により投げられた槍は、将軍のガントレットに握られた得物をはたき落としたのだ。



 それからというもの、ミジューラの反撃は続く。まるで電光石火の如く盾を構え、走り出したのだ。


盾を構える暇も与えることなく無防備なジェネラルに向けてありったけの質量と速力を全てぶつけたタックルを見舞う!


あまりの衝撃からか盾は弾け飛んだが、重装兵を上回る分厚い装甲故かその攻撃は鎧自体を打ち砕くことができなかった。


そんなことは関係なく彼は鉄拳を振るいあげ、兜に向けて繰り返し殴り始めたではないだろうか。



「この反乱分子めが——!」



狂気じみた行動に思わずホーディンはミジューラの拳をつかむと歯を食いしばりながら食ってかかる。

辛うじてその拳を払いのけると、彼は背中に手を伸ばし最後の一本を引き抜くと同時に渾身の裏拳をぶつけた。


——Zoooomm…


地面に細長い装甲の塊が転げ落ちた。度重なるすさまじい衝撃に錆びて劣化した留め金は耐え切れなくなり破断。

ミジューラは鋭く槍を回転させ、矛先が喉に触れるよう突き付けると冷たくこう言った。


「これが経験の差だ。——儂は敵を嬲る趣味などない。投降せよ」


周囲にいた護衛の重騎士はGチームによって排除が完了しており、抵抗するだけの兵はこの城には残っていなかった。Soyuzに勝利が訪れたのだ。


次回Chapter40は10月31日の公開となります


・ジェネラル

アーマーナイトがさらに訓練と筆記試験をこなして昇格する超重歩兵。

関節部まで埋めてしまったことにより動きが鈍いが、装甲厚は2倍の50mmを誇る。

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