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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
ⅰ-4.ジャルニエ城攻略戦
37/327

Chapter33.Empire of Holy war(2/3)

ジャルニエ城の一角を制圧中遭遇した激しい地響き。ただならぬものを感じ、爆破作業を急いでいた。



「爆破急げ」



非捕食者時代の遺伝子に刻まれ、人類誰もが本能的に恐怖するこの音を前に、隊長は冷徹に指示を下した。


いずれにせよ何が出てこようとも死力を尽くして突き進まねばならない。この先にいるのは人間ではなく、兵器である。


破壊してしまえばどうということはない。隊長は拳を握りしめ逃げたくなる心理を封じ込めた。



「了解」


命令の通り、信管は1mロールの爆導線を起爆すると、頭をバットで殴り倒したような鈍い音と共に観音開きの扉は内側へと倒れると塵を巻き上げ粉塵の帯が現れた。


——BRooooOOOOOMMMNNN!!!!!——


身も毛もよだつような恐ろしい雄たけびと共に現れたのは恐竜、否。

4m近くある真っ赤な巨体を携えた火竜(ドラゴン)だったのだ。


なぜ人々は恐竜のことを恐ろしい竜と書くのか。火炎が時折漏れる残虐な牙を持つ目の前の存在がいたからに違いない。


 隊員たちはその姿を見ただけで思わず足を後ろへと踏んだ。悪魔、鬼、地獄。

何とも例えられぬ存在を目の前にして恐怖を抱かずにはいられなかったからだ。






———






「悪魔だ、悪魔がきやがった」


ある隊員は君臨した捕食者めがけてそう言い現わした。

戦車よりもずっと昔に存在した、かつての天敵を目の前にこう言い表すことしかできない。


火竜はまるで獲物を選り好みするようにネズミを見下ろすと、突如火のブレスを吐いた。


突入チームをでたらめに狙った攻撃故、獲物たちは分散し逃げられてしまったが、それが目的ではない。たちまち燃え移った火炎は帯となると辺りを熱の海に陥れるためである!



「野郎!」


恐怖に打ち勝った隊員は四散した先でライフルの照準を竜そのものに向けマガジンを使い切る程の弾丸を見舞う。


肉に錐が突き刺さるような音を立てて命中したが、火竜は反撃とばかりに首を伸ばし的確に火をまき散らす。



「弾かれるお次は刺さるが効かねぇときた!」



火竜が首を向けた途端、隊員たちは地面に転げながら迫りくるブレスを全速力で逃げて火炎の魔の手から逃れた。

怪物は近づいてくる自分たちに対して最低限の迎撃のみにとどまり、どこか遠くに向けて火を吐き出している。


 ふと隊員が後ろを見ると入り口方面が日の帯となって立ちはだかっていた。

今まで相手してきた存在とは一線を画す知性を持つ存在、火竜。


装甲兵器とはまるで勝手の違う存在に戦慄した。フィルムの中の大怪獣を相手にしているが如くまるで効果が見られない。


弾丸は貫きこそするのだが、分厚い皮膚の中に取り残されダメージは期待できそうにない上、こちらを狩り立てるかのように追い込んできている。


 彼は隊長に合流すると目の前の怪物に恐怖しながら必死に伝えた。



「でくの坊な癖してヤツは知性をもってやがる、だから後ろに向かって放火して俺ら追い込んだらクソみたいにデカい口で食う気なんです。」



その顔は軍人としてではなく、一つの命が語り掛けているのだと隊長は感づいた。



「俺たちの手には到底負えないクソッタレに違いない。希望は空にある」



隊長は無線機を震える手でつかみながらそう返したのだった。






————





 突如として現れたこの怪物には突入チームの持つ火器ではまるで対抗することはできなかった。

自動小銃は強靭な鱗と自らの吐き出す炎への耐性を持たせるための分厚い皮膚によって阻まれ


グレネード弾の破片は投げナイフの刺さった的のように深く突き刺さるものの、大きな打撃にはならない。


切り札であるLAWを使用するという事態にまで陥っていた。



 これらの総攻撃をまるでハエがたかったかのように火竜は振り払い、突入チームを餌として追い詰めていた。


彼らも接近だけはされないようひたすら後退する手立てしかなく、はたから見れば逃げているようにしか見えない。



炎を吐き出す際、クロコダイル以上に開く鋭い歯がずらりと並んだ巨大な口を持つ相手に近づけば一口で飲まれるに違いなだろう。



 隊員たちは足止めをし、どうにかとしてこの場から退避するためライフルやMGL140を放っていた。

それも足止めになるか怪しく、特にグレネード弾に関してはまるで砂を浴びせているようでまるで効き目がなかった。



 するとある隊員が我先に入り口へと走りだした。すると彼はチームの輪から孤立したことを確認し立ち膝をつく。


誰一人後ろに居ないことを確かめると背中に背負ったLAWの安全ピンをすかさず引き、発射機を素早く伸ばした後照準器を乱雑に立てると線の入ったモノリス(照準器)を怪物に合わせた。



「ぶっ飛べ!」



LAWのトリガーを押し込んだ。反動を打ち消すための爆風と共にロケット弾が放たれ、避ける隙も与えぬ速さで火竜に着弾した。

彼はただの筒になったランチャーを投げ捨てるとライフルへと持ち替えた。


ふざけた装甲を持つ重装兵ですらこれで地獄に配達できる一撃をもらえばただでは済まないと彼は思っていた。


———WHooooomMMM!!!!






———






 その思いは外れることになった。

火竜は再び身も毛もよだつような咆哮を上げながら煙を押しのけてこちらに迫り始めたのである!



隊員たちは絶望した。最後の手段でさえも足蹴にされたのだから。



300mmの鋼板を貫通するHEAT弾は確かに火竜の皮膚を貫いていたが、熱や爆風に高い耐性を持つ怪物。

相手には針が刺さった程度のダメージにしかならなかったのである。



ここに居る誰しも神に縋りたい衝動に襲われたが、残酷にも聖堂すら神は降り立たつことはなかった。頼れるのは仲間と武器だけ。






————






火竜が獲物を追い、獲物であるチームは後退し続ける戦いは続いた。


突入チームはあらゆる状況、投下される兵器。


そして敵の装備に対抗するだけの頭と武装を持っていた。


だが次元をまたいだこの世界において、凝り固まった現実で想定される事態を超越した光景に彼らは戸惑いどころか恐怖した。


誰しも存在しないジュラシック・パークで訓練を受けているわけではないからだ。


 あらゆる現代携行火器が通用しない巨大な相手を前に突入Gチームは成す術もないように思えた。火竜自体にもヒグマのような知性があるため輪にかけて追い詰められていった。


各員は決して多くない弾薬と銃を片手に何とか竜と距離を取ることに成功した。すると隊長は恐怖の色を振り切った顔をしながら隊員たちに指示を出す。

 


「俺がヘリを呼んで火力支援を要請しこのバケモンを殺す。第一段階に爆発物でステンドグラスを破壊する。第二段階として外へ出てから怪物を誘導する。気をつけろ、ヤツは知性がある。感づかれたら一貫の終わりだ。第三段階はヘリが照準をつけるころ俺に連絡が来る。俺が叫んだら全速力で逃げろ。」



「了解」



隊員たちは各々MGLやAK102とM4、希望のLAWを構えて答えを出した。

その顔には猛獣に臆する愚かなネズミだった面影はない、任務を果たす兵士の顔がそこにはあった。






———






【こちら突入チームGからMOSKVA-Reader.火力支援を要請する。敵目標は火竜、重火器がまともに効かんゴジラだ。壁を破壊し目標地点へと誘導する。出てきたところを叩け。30秒で来てくれ!】



隊長は無線機に向かって必要な事項を告げていくにつれ、感情を露わにしながら無線機を握りつぶしかねないほど強く掴む。もはや予断は許されないのだ


【MOSKVA-Reader了解、MOSKVA03・04、聞こえたな。10秒でそちらへ向かえ】



【MOSKVA03了解。急行する。10カウントも不要】


作戦は大きく動き出した。





————






 辺りは熱波に満ち始めていた。。入り口を兼ねる出口は火の帯で塞がれ迫りくる壁のように勢いは増してゆく。


上空に待機していることもあってガンシップの到着には時間はかからないだろうがそれまでにしなければならないことは多い。


 手始めにステンドグラスを破壊するためある兵士は安全ピンを引き抜き、ランチャーを伸ばし照準

を立てた。


「退避―ッ!」



LAWのファインダーに聖堂の壁を取り込むと、発射機を持った隊員は竜の咆哮に負けじと叫んだ。

すると周りにいた人間はクモの子を散らすように一斉に壁から離れてゆく。



そのことを確認するとトリガーを握った。ロケットモーターによって急加速した弾頭は安定翼を開きつつ聖堂の壁に着弾し、炸裂。


戦いは不向きな聖壁は朽ち果てたかのようにガラスの破片をばらまいて崩落した。




 それでもヤツをおびき出すには大きさがまだ足りない。



それに気が付いた隊員たちは、追撃と言わんばかりにグレネードランチャーを撃ち込み突き崩していた。

あの怪物程度なら半端に割れたガラス程度なら突き破れると考えた隊員は残っていた切れ端を砕くことはせず大きく残っている窓を砕く。


防弾ガラスのようにヒビが入ることなくステンドグラスは花火のようにはじけ飛ぶ。


彼らは次の段階、火竜をおびき出す段階へと移行した。


書籍上ではそう書くことだろうが今の隊員たちに理屈などない。命を生きながらえさせるリレーのように紡がれてゆく。


おびき出す門を作った以上、次は化け物をおびき寄せなければならない。受け取ったバトンという名の使命を胸に武器を背負って駆け抜ける。


「クソッ!こんな時に!」



空になった最後のマガジンを投げ捨てながら隊員は思わずそう叫ぶ。抵抗できなくなった時点で希望は絶たれるだろう。



 その声に別のMGLを手に下隊員が反応すると彼にMP5Kを投げ渡した。



「俺のを使え!俺にはまだある!」



「わかった、最高の釣り餌になってやる!」



生きてやる、あまりに根源的でシンプルな理念だけがGチームを突き動かしていた。



怪物映画はついに最終段階に達する。


弾切れを叫んだゴードンと武器を投げ渡したトムスはそのままヤツをおびき出す重要な任務を託された。彼らは退避するチームメイトを援護しながら陽動を仕掛ける。



「俺の20%はバーガーキングで出来てる!食えよこのクソ野郎!」



「最近5キロ太った!食うなら俺たちだ、食うなら肉だろ!」



トムスとゴードンは錯乱の境地に達し、時折MPを天井に乱射しながら叫び倒す。逃げる隊員たちを火竜が追跡を試みるたび、ジャンクフードに対する中傷を吐き連ねながら銃を乱射し、視線を自分たちに向けさせ続ける。



「マクドナルドは陰謀だ!」



ありもしないことを喚き垂らしながら拳銃弾ばらまき終わった頃になると退避は既に完了していた。

隊員は皆待機し、隊長は無線機を片手に攻撃指示を待っていた。すべての作戦はこの二人に賭けられている。



酒樽の底を抜いたように弾薬が消えていく。



当然この程度の柔らかい鉛弾は火竜の前では石ころ同然。

ついにマガジンも撃ち切るとMP5Kを投げ捨て、ホルスターからマカロフを抜き、頭に向けて放った。使える手段はろくに残っていない、されば残っている分をこき使うまでである。



——BANG!——



苦し紛れに怪獣めがけ撃ち込んだ弾丸は、一度竜の鱗に阻まれ跳弾すると火竜の目に直撃したのだ。怪物は新たなトラウマを植え付けるような世にもおぞましい咆哮を出して苦しみ始めた。


目に石ころをぶつけられて痛みを覚えない高等生物はいない。



「掛かった!」



トムスは大声を上げると、二人は破壊した壁へと逃げていった。勝負は燃え上がるようにデッドヒートを繰り広げ始めた。






————





火竜の逆鱗を触れるどころか吹き飛ばした今、その巨体から生まれるすさまじい力をふるいあげ餌を追いかけ始めた。


4mもなる体とそれを支える強靭な四肢から生み出される榴弾のような破壊力を用いれば聖堂の壁は砂で作られたかのように足蹴にされ、吹き飛ばされる。


二人は怒り狂うギドラを相手に恐れることはなかった。

それ以上に任務を達成しなければならないという使命感が本能的恐怖を打ち砕いたからである。



走る、ただ走ってガンシップの火力支援を得られるグランド・ゼロに向かってただ突き進んだ。隊長はその様子に固唾を飲み、見定めていた。



 二人の英雄が爆心地から逃れたのを確認すると静かに、そしてはっきり聞こえるよう無線機に喋りはじめた。



【吹き飛ばせ!】



その指示が届くころ、火竜が周囲から吹き荒れる風にひるみ、その元凶を見上げた。


そこには今まで追いかけてきた餌はいない。


飛龍のように空を飛ぶ竜に似た2つの異形、Mi24Vが待ち構えていたのである。

新たなる脅威に火竜はおののくことなく、新たなる天敵に向けて火のブレスを吐き出す!


ハインドたちもただ浮いているだけではない、パイロットは対戦車ミサイルの発射スイッチを親指で潰すように押しこんだ。


——BLASHHHH!!


シュトゥールム・ミサイルは竜の吐き出した煉獄を突っ切るようにして飛翔すると、火炎を吐き出すため口を大きく開けた火竜の口腔で起爆した!


それだけではない、ガンポットからは戦車すらズタズタに射抜く23mm機関砲の嵐が怪物の全身を八つ裂きにしていく。



【こちらMOSKVA-03、敵目標を撃破】



白煙が晴れた頃、火竜はナイフを突き立てられほつれた麻布のような残渣へと成り果てていた。人類が怪物相手に勝利を収めた瞬間である。



 しかし彼らのフィルムがFINの文字を出すことはない。突入チームGのミッションはまだ残っていたのだ。[重要参考人物の救出」という重くのしかかる任務が。

LAW

正式名称「M72」

アメリカ製の使い捨てロケットランチャー。それなりに強く、軽くて量を持ち込んでも苦にならない。

使い終わったら再利用できず、反動を打ち消すための爆風「バックブラスト」には気を付けて。

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