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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
ⅰ-4.ジャルニエ城攻略戦
34/327

Chapter 30.Black armor killer(2/3)

前方突入チームは負傷者を出しながらも成果を上げていた。


いかに高度な魔導士とアーチャーを束ねようとも現代自動火器の制圧力には敵わない。

突入チームB,Cは既に迎撃隊を撃破、制圧し捜索の段階に入っていた。



 一方チームCが突入した施設の構築材には多くの石材の上にタールが塗られており、高い耐燃性を有する建物であった。


その一方、敵兵はあまり配置されておらず戦略的価値が薄いと推測されながらも、探査が継続されていた。


まるでサクラダファミリアにでも来たかのような天井の高い堂を突入チームは進む。



端々に建造された白石の像が立ち並び、まるで宮殿のような出で立ちで要塞とは到底思えないほどの光景が広がる。


悪趣味な中東の独裁者の作った根城ではなく、チェス盤のように並べられた廊下を抜けると大きな扉に行きついた。



何かがある、突入チーム総員は誰もがそう感じていた。

文字らしきものが書かれた立て板が扉の頭上にかけられていたが、それに見向きもせず退避後にグレネードランチャーを撃ち込むとベニヤ板のように砕け散る。



 伏兵がこちらを狙っているかもしれない。石像に退避した隊員らはヘッドフォンを装備し、暗視装置の電源を落とす。それを確認した隊長はフラッシュ・バンのピンを抜き、空間に放り投げた。



再び、マグネシウムの白い、白い強光と波長とは思えないほどの音が無人の棟に木霊する。炸裂を確認した瞬間浸水するかのように突入チームが入り込む。


「隊長、ここは書物庫です」


「了解、そのまま捜索を続けろ。俺はやることがある。」


隊員がそう声を上げると隊長は指示を下し、自らの作業に移りはじめた。

 Cチームが突入した箇所は書物庫だったのだ。隊長は城内見取り図を探すように命ずると、端末を取り出し始めた。


これはただの無線機ではない、Soyuz専用端末ソ・USEである!

時に応じて外部モニタが必要になるが、画像データも受信できる優れものである。



文字が読めなくとも偵察機が撮影した航空写真に類似する場所に見取り図はあると考えたのだ。


 完全武装した突入メンバーは手当たり次第に本を手に取り、文豪のように読み漁りはじめたのである。








————





「クソ、なんだこの零したジュースみたいな恐ろしい文字は。丁寧に挿絵も入ってる。鍋とか肉だの得体の知れない何かに…料理本だコレ!」


隊員は本を読み漁ったところまではよかった。しかし文字という壁が邪魔をした。



思い返せば同じようなコーヒーをぶちまけた後のシミか何かしか見えない文字が記された案内板のようなものがあったことを思い返す。



よく見ると英語の【I】のような主語が使われていなくもないが、アラビア文字の出来損ないにしか見ることができない。


いつどこの文明にも存在しうるだろうエクスクラ()メーション・マークの影も形もない始末で文学の専門家ではない彼らにとって解読できる代物ではなかった。



海運倉庫のように膨大な大きさの書庫を捜索すること30分が経過。


多くの隊員はコミックのように流し読みをしながら隊長命令にあった鍵のかかった扉を探していた。

見取り図の原本を見つけ出すために探索をしているがこれが見当たることはなさそうである。



「ったくどれも読みたくなるクソ料理本しかねぇってどうなってやがる」



解読のできない本の読み歩きをしていると、袋小路に来ていた隊員は本棚から乱雑に本をむしり取ると同じく読み漁っていた。


どれも一文字たりとも理解できないが、挿絵は異常なほど詳細に書き込まれていることもあって目を通すだけでも気がまぎれるものである。



「shit!」



スリングから吊り下げていたAK102が本棚にぶつかったようで彼は不機嫌になる。


隊員は暴言を吐きながら本棚を思い切り蹴飛ばすと、裏から何やらプーリの動く音がし始めたのである。


しばらくすると重々しい本棚が暗がりの蝋燭のように光りだすと、少しずつであるが奥に引き込み、スリットに本棚がしまい込まれた。


なんとその先には古びたものではあるが鍵のかけられた扉があるではないだろうか。



「ニンジャでも居たらぶち殺してやるからなクソッタレ。隊長、不審な戸を発見しました!」






——————





 隊員の八つ当たりによって発見された隠し扉であったが、隊長の指示によって調査が進められることになった。


施錠されていたがSoyuz特殊部隊の目の前には存在しないも同然であり、豪快に別の隊員が携行していたMGL140を発射して破壊しようというのである。



どんな鍵も扉が破壊されてしまえば意味がない。

隊長指示によって退避を終えると、兵士が巨大なリボルバーのようなグレネードランチャーを構えホロスコープを覗く。


赤いレーザーサイトが扉を捉えると強烈な反動と共に弾頭が発射された。



POM———BooMM!!



小さな爆発と共に扉は破材のあつまりと化した。隊員たちが可燃ごみの集まりを踏みつけながら内部に侵入すると、内部にも少ないながらも本が並んでいた。


その様を見た突入チームの一人が隊長に言い寄る。



「本ばかりですぜ。どうしましょ、隊長」



ここにあるのは現時点では解読不能な資料ばかりであり、役に立たないようなものばかりである。書物庫だと思われた場所にも碌な資料がないため期待しても無駄である。


 しかし返ってきた隊長の言葉は違った。


「俺にいい考えと思い当たる節がある。新しい本を探して持ってきてくれ、照らし合わせるものがある。」


 

かくしてその本を持ってきている間、隊長は端末とモニタを操作し、偵察機から撮影された降下予定地点の写真を表示している。すると先ほどの隊員が本を持ってきた。



「なるべく埃をかぶってないヤツを選んだんですがねぇ、俺にゃセンスってのがないもんで」



隊長は本を受け取ると、のページをモニタと見比べながらめくってゆく。右端の羊紙が次々薄くなってゆく。

ページの終わりに近いころに思いがけぬものが目に留まったのである。



「やはりな。これは城の見取り図だ。だが司令室は書いていないか。」




なんと城の見取り図だったのだ。上空から撮影された城の構造と、この紙面に記された図がぴたりと一致し、内部には各施設の内部構造まで記されているではないか。


だがそう甘く事態は運ばないもので、将軍の立てこもる司令室がまるで見当たらない。






———






優勢を保つ先陣B、Cチームであったが、突入部隊Aは異なっていた。


この棟は兵舎を兼ねているようで回廊沿いの扉から敵がこちらに奇襲をかけてくるため、壁に張り付きながら一つひとつクリアリングを行いながら進み続けている。


最初こそフラッシュを炊いた後にドアを蹴破り潜んでいた敵を射殺し続けていたが、どこか不穏な予感が漂う。



敵を阻む障害物としておかれるにはあまりに高さのない椅子や、油の滲んだ紙がそこら中にばらまかれる形で床に散らばっていた。



それに各方面では照明が落とされていることが多く内部は薄暗いという報告がなされている。


だがここでは蝋燭なしで燃えるおかしな蝋燭立てが立ち並んでいた。


隊員が伏兵に気を取られていた中、軍靴で何かを踏みつけたような感触と、多くの金物が床に落ちたような甲高い音が無人の廊下に響く。



「なんだ」



その声と共に城内は薄暗闇に包まれた。照明が落とされることなど織り込み済みであり突入チームは阿吽の呼吸で暗視装置を装着し電源を入れる。文明の力の前にはこのような古典的な罠等通用しない。


 暗視装置には暗がりに潜む敵は昼のように鮮明に見える。

伏兵の発見も容易になっていたこともあり、弓を使う敵兵の蹂躙は進んでいった。



ここからが悪夢の始まりであった。





——————






「隊長、照明は落とされたはず。NVがホワイトアウトします」



ある隊員がそう声を上げた。

この電球照明ではない照明が落ちたにも関わらず、しばらくしたらまた明かりがついているという状況は不可解である。



「…明るいな。NVは不要だろう」



隊長は暗視装置を外し、周囲を見回すとそう命令した。戦闘には問題ないと判断したためだ。それと同時にマガジンの確認を行う。


伏兵のクリアリングに手間取ったこともあり、マガジンの数は残り二つ。

早期決着をつけねばならない、彼は苦虫を嚙み潰したような顔をしながらライフルを構え、最深部へと向かっていった。



 Aチームが攻め込んだ建物の奥にあったのは簡易的にバリケードが張られたホールのような場所。食堂と考えられるが制圧し、敵を追い詰めなければならない。



「俺がフラッシュを焚く、そして吹き飛ばせ」



隊長は行き止まりを発見するとそう命令すると粗雑な防壁越しにスタン・グレネードを投げ込むと同時にMGLを構えた兵士は彼が退避したことを確認すると、素早く照準をつけた後、ためらいもなく発射した。



——KaBooooMM!!!———



白い光と共に炸裂が起きる。グレネード弾は木組みで作られたバリケードを容易く爆砕し、堂口には砂の混じった鼠色の塵幕で包まれる。


しばらく時間が経過し煙幕が晴れ始めた頃、そこにはパワードスーツめいた大鎧をつけた人間のシルエットが現れたのである。



「ようやく出てきたか」


白煙にくっきり浮き上がる、巨大で凶悪な

装甲を持つシルエット。その正体は重装歩兵(アーマーナイト)だった。その姿に隊員たちの脳裏にはブリーフィングが走る。


最大25mmの装甲を持ち自動小銃や50キャリバー(12.7mm弾)の雨をまるで傘のようにはじき返す常識を超えた怪物。


それが目の前に現れた。

重々しい盾を構えていたのだろうか大多数は視界がつぶれていないときている。



「重装兵だ、応戦しろ!」



その姿を一目見た隊長は声高らかにそう叫んだ。突入チームは鶴の一声戦闘態勢に入ったが彼らが見た人間重戦車は想像を凌駕する存在だったのだ。



プレートアーマーは通常5mmでも分厚いとされている。それを6倍、3cmにもなる鋼鉄板で身を包んだ人間はまず動けるはずがない。


一見、的のようにしか動けない重装歩兵にはHEAT弾を撃ち込んでやればいい、隊員たちはそう思っていた。






———





 しかし現実は違っていた。


アーマーナイトはまるでアスリートが全力疾走するのと同じ速さでこちらに迫ってきたのである!


猛獣のような追跡を半ば逃亡するように後退していても、奴らは次々と距離を詰めてきた。


一人二人だけならばなんとかなろうものが、連中は5人も引き連れている!



グレネードランチャーやLAWを当てて撃破するには安全距離を取らねばならず、それをあの装甲の悪魔は簡単に詰めてくる。


止まったら間違いなく重装兵の槍で心臓を射抜かれることになるだろう。

むしろこちら側が狩り立てられているのだ。足止めするためライフルの連射を浴びせようが気休め程度にしか動きが止まらない。



 しばらく棟の入り口方面へと後退していると、強烈な熱波が襲い掛かる。


「火災だ!」


今まで大量に放置されていた椅子や紙切れ、そこにぶちまけられた大量の油はこのために用意されていたものだった。


照明用の灯火を可燃物へと一斉に落とすことによって火災を誘発させたのである


前には強力な重装兵、背中には業火が迫ってくる。ここで勝負をつけねば全滅する。

そのことは目の前の敵も理解しているだろう。



炎の中で死闘が幕を開けた……


次回Chapter31は9月4日10時からの公開になります


・ダネルMGL-140

南アフリカのアームスコー製造の6連装グレネードランチャー。

アメリカ軍が採用しているモデルがMGL-140。


対アーマーナイト用に40mmグレネードの成形炸薬弾(HEAT)を使われることに。

M4のストックとホロサイトが装備されており、高い精度で射撃が可能。



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