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Chapter298. Businessman from U.U

タイトル【異界のビジネスマン】


「やぁ」



VIP捕虜収容所に向かい、ロッチナに挨拶してきたのはシルベー将軍のカナリス。



コーヒーをすすり、とてもではないが戦争捕虜とは思えない扱いにロッチナは困惑せざるを得ない。

しかもマグカップを手にしているが、メインカラーの黄色であしらわれている。



「わざわざここのトップからのご紹介いただき有難うございます。僕もこうしてSoyuzさんの専務さんに会えるとは思ってはいませんでしたのでね……」



少し理解が出来ない様子を見抜いたカナリスは、口元をにやけさせながら追い打ちをかける。



ロッチナとしてみれば、なかなかこの手の人間に遭遇していなかったこともあり、どう出てくるか分からず、様子を伺うことに。



「あ、ああ……。参考までに自治区周りの話をして欲しいが……」



黄色いザッカーバーグはその質問に鋭く切り込んだ。



「ま……そうしてもいいけれども、世の中は等価交換という言葉が存在するのをお忘れなきよう……」



「色々と話は聞いているけれども、うちの領土でしたいビジネスとやらを聞きたい。まずはそこからだ」



世の中ギブ・アンド・テイク。

対価ナシには労働できないように、情報も渡せないというのが常識である。



カナリスのスタンスはいつもそうだ。



Soyuzという組織のことだ、そこの礼節はあの生け捕りにされて死ぬよりひどい目に遭っているラムジャーとは違うとはいえ、相手は初対面。



どちらも探りを入れている状態に過ぎない。




これこそが言葉での戦争だ。













—―――――――――――












統治や政治方針の最終決定権はソフィア・ワ―レンサット陛下にある。

最終的に決めるのは神だと言うが、れっきとした自我を持つ人物だ



領土の孤島である自治区に対する決定権も彼女に委ねられる。繰り返しいうが、最終的に決めるのは陛下御自身。


ある意味、身勝手かもしれない。



「Hum……とんでもなく弄るようだねぇ。しかし改めて聞くととんでもない計画だ」



「だが……これくらいの夢があった方が作り甲斐があるってもんじゃないか」



相当な計画が練られているが、これはあくまでも非確定な計画である。



絵空事は突飛な方が面白いのは現実でも良くある話、それが叶った時に得られる利潤を考えるのはとても楽しい。



妄想するだけで白米が食えるのと同じことだ。



「さてと。いい夢を見せてもらった礼だ。ちょっとばかし、おさらいしようじゃないか」



「あそこに住んでいる人間はガビジャバン人。あの軍隊にはウジ虫だのなんだのと言われてきた。人間はもちろん武器・拠点だらけで尚且つ……()()()()()ことにやたらうるさい」




あそこにいるのは敗残兵の第二、第三世代の人間たち。

第四次戦後、居場所がない故に帝国に居場所が無くなった人々の地である。



そこにたまたま古代文明が眠っているだけで。



「ま~……僕も正直、国として関わっている感じはするよね。そこんとこは神様がどうするかを決めるんだろうけど、覚えといて損はないと思うよ」



更にカナリスは透かしたような眼差しでこう言い切った。



「とはいうんだけども、今の帝国に居る、女神様には政治経験がないから君たちが横槍を入れてくるんだろう?どのみち……」



そんな問いかけにロッチナは冷たく返す。



「軍事機密だ」



Soyuzには世界を容易く滅ぼせる「実力」

ドミノ倒しのように破滅を齎していく「世界の秘密」


両方を兼ね備えている闇の組織。


国でも、主義主張、ましてや正義の味方ではないのだから。


人類種そのもの、それがSoyuzなのだ。



「ふふふ、それでいいさ……君を()として使う人間の気持ちがよくわかる。実に優秀だ」



カナリスは不気味に微笑む。














—―――――――――――












電車に揺られて横浜本部拠点に着くまでの間、ロッチナは少しばかり今回の案件について振り返ることにした。



航空機でもチャーターすれば良いのだろうが、五反田から横浜本部基地に用がある場合は電車が便利。


急がば回れ、とはよく言ったものである。朝方の殺人的ラッシュが玉に瑕なのだが。



それはさておき。


新たなる発見は人類にとってどのような影響をもたらすのか。

なんとしてでも、以前に発見された新大陸のようにさせてはならないのは言わずもがな。



そこでの驕り高き振舞いや蛮行の数々は記憶に新しい。

駅のアナウンスが流れる。



『———次は大崎、大崎です。りんかい線、羽沢横浜国大方面はお乗り換えです』




この立派な駅のように、あの国にも発展してもらわなければ色々と都合が悪くなる。

そこで問題になるのはSoyuzが残した()()だ。



戦争というものは罪なき人々にあらゆるものを押し付ける。

憎悪と言った感情的なものは勿論のこと、埋設した地雷の撤去や不発弾処理。

破壊された建造物の復旧作業にインフラの再整備と治安維持。



今回での案件では取り立ててゾルターン県の被害が甚大だと聞く。



ただでさえロンドンという犯罪組織の総本山だというのに、敗残兵の野盗化による急激な治安悪化と武器の大量流入。



自治区を下手に突けばあっという間に紛争地帯へと早変わりしてしまうだろう。




一度芽を出される前に手を打たなくてはなるまい。くすぶる火種を潰さねば。

政治将校たちの指導で何とかなる範囲なのだろうか疑わしいのはさておき。



ロッチナは電車を乗り換えて、平日昼間の電車に座り込みながら考える。



『———この電車は相鉄線直通、特急……』



席に座り直すついでに考える方向を変え、今度は帝国全土に目を向けてみよう。

政情不安定、4度にわたる隣国との戦争による確執。




野蛮な組織。

それこそSoyuzがどういうものかも知らない、山賊に毛が生えたような集団が帝国にのさばるかもしれない。



圧倒的な武力による治安維持は急務だ。



わかっているには分かっているが、あまりに手を付ける箇所が多すぎるため整理するのも時には重要である。


今のファルケンシュタイン帝国はタカの羽と脚をむしり取ったような状況。

政治・軍事・司法、全てが崩壊しかかっているとも捉えられる。



ガビジャバンはそこが上手くいかず、無政府状態と学術旅団からの調査報告書が浮かんだ。



ソマリアのような血を血で洗うような地獄にしないためにも。人間が人間種として暮らせる社会にするにも。

想像を絶する仕事量をこなさなければならないのは言うまでもないか。



こういった裏方の仕事自体、大衆受けはしないだろうが、統治はパフォーマンスでは決してない。



だが帝国には未来がいる。

政治将校と、神の代行者【ソフィア・ワ―レンサット】という存在が。



彼が乗っている電車が本部拠点最寄り駅「瀬谷」を通過してしまうとのことなので、再び乗り換えて横浜本部拠点へと向かうことに。



2つの駅に停車した後、無事ロッチナは最寄り駅にたどり着いた。



そこからさらに車を走らせねばならないのだが、惑星規模の秘密を抱えている軍事基地に利便性など求めてはいけない。



「さてと……」



予めチャーターしてあったレンタカーを使い、基地まで車を走らせる。



この先が異次元世界。



つまるところ、あらゆる人間が恋焦がれるファンタジー異世界の入り口であることは今の所彼しか知らない。


そして、備忘録が始まるのだった……


次回Chapter298は5月24日10時からの公開となります。

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