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Chapter297. The Soyuz

——虎ノ門Soyuz本部

地下【秘匿】階



制圧後、幾何(いくばく)かして、ロッチナは秘匿の中の秘匿。

地下の何処かも公表されていない空間にて、CEOと談合していた。




しかし独立軍事組織Soyuzは猫探しから国家転覆まで可能とする組織。



核を保有、世界中の紛争を股にかけたと思ったら猫探しや浮気報復まで行う怪しさ満点な集団を世界はまだ認められないでいる。




故にアメリカ・中国、本部を置いている日本の公安や友好国のロシアでさえ監視されている有様だ。



U.U(異世界)の特に重要な案件は全てこのフロアで情報のやり取りが行われることになる。



クラスは最高機密、惑星内にすら漏らしてはいけないという厳しさを持つ。

今回の仕事は整理番号S-22-975。暗黒組織ではそう呼ばれていた。



神の連れて来た異次元からの救い人の正体。




現実世界では軽いものから重いものまで。ありとあらゆる全ての産業を支配する。


もとい地球を表裏で支配している「()()()()()()()」と言えようか。



我々、人類種が行った過ちと蛮行を二度と繰り返さぬように、このように秘匿されているのだ。



地球上のあらゆる場所にネットワークを張り巡らせ、すべての情報はここSoyuzに届く。

まるで人々が団結するように。



ロッチナは世界中、たとえ次元を超えてでもやって来るCEOの目。



彼は制帽をかぶりながら告げた。



「はい。戦闘は終結を迎えつつある、と報告がありました」



[戦後処理だけか]



CEOは果たして存在しているのかどうかさえロッチナは知らない。



どころか知るクリアランスは持ち合わせていない。知った所で碌な秘密ではないことは承知の上。彼は淡々と仕事を続けるまでだ。



「敵文明の軍隊は壊滅状態にあり、治安の維持や国家運営のためには我々が必要となることが予想されたため、治安維持には社会安全軍と現地入りしている部隊で対処します」



「政局に関しては我々の方から新しく政治将校を追加するつもりでいます。本来はバックヤードで葉巻でも吸ってもらいたかったものですが……」



トップと話す時は必ずテキストが表示されるだけである。


それは別においておくとして、戦後はどこの国も情勢が不安定になる。

誰がトップになるのか、政治家は誰を配置するのか。



それに混乱に便乗して暴れてくる連中も少ならからず出てくるだろう。顕著な問題と言えばゾルターン攻略後に出た無数の逃亡兵からなる()()だ。




それらの対策と帝国の未来を担うための参考人を派遣するという。



ロッチナの言う政治将校とは、各国から選ばれた有能で有望な政治家をSoyuzがふるいにかけて選ばれた最高水準の政治家だ。



政治少佐から大佐に少・中・大将まで目白押し。


帝国が暴走する心配はひとまず皆無である。


だが事実は小説よりも奇なり、という事もあるのが世の常。


それが現れた時に考えれば良い。



ロッチナは続いて、Soyuzの賢者たち。CEO-2があることを提示する。



『失礼。私より提案がございます』



[何だ]




『このアンノウン()ユニバース(世界)そのものについてですが。……いずれは明るみになることでしょう。

その際に、かなり厳しい審査を実行した上で大なり小なり、ビジネスに使おうと考えているのです。もちろん、我々(SOYUZ)も……』



『もちろんフェア・トレードで』



冴島に権能が足を踏み入れた新天地、ファルケンシュタイン帝国。

地球上もそろそろ飽和し始めている、そろそろ外宇宙かと囁かれた中での新発見だ。



当然Soyuzも利益にならないものを探すのが無理な話である。

ロシアもそうだが、横浜という無駄に立地のいい所に穴が開いたのが問題か。



羽田から京急と相鉄、さらにバスを乗り付ければすぐ。



あるいは、ほとんど横浜じゃないと言われた瀬谷にあるSoyuz本部基地に殴りこんでくる

こともやり出すに違いない。



各駅停車か急行しか止まらない、あってもなくても変わらない没落しかかった地が一転するのは明らか。



どのみち各国も動き出す。

どこかの誰かが見つけてしまう前に公表しながらも、牽制しなくてはならない。



資源に目がなく無秩序な発展を求める中国。


世界の警察もとい反社会組織のアメリカ。


強欲で貪欲な巣窟のロシア。


過去の栄光に縋り続けありもしない逆転のチャンスを掴もうとしている日本。


良きも悪きも人間次第とはこのことだ。















—―――――――――――










しかし人間という生き物は加減を知らない。



コンクールスのように神に等しいような秀才がいれば、地球は平らだと未だに言い続ける底抜けのバカも存在することを忘れてはならないのだ。



「さて。私ロッチナの話に戻りますが。

さらに現地からSoyuzへ雇用を行ってはいますが、越境雇用も行う考えがございます」



「破壊した場所の復興や支援もすることが決定しました……いつも貴殿からアフターサービスは大事にせよ、と言われておりますのでね……」



さらに異次元人への向けての差別や未知故の排他行為に関してもロッチナは手を抜く筈があるだろうか。


同じ遺伝子を持つ種族というのに、地球上や電脳でさえ差別だの憎しみだのと暇がない。

支援策も同様か。



アパルトヘイトはなぜ起きた?

キング牧師が「I Have a Dream」の演説をしてもなお、差別は終わらなかった。



まだまだある。

隣国とのいがみ合い、歴史的・民族的憎悪……



列挙するだけで胸糞が悪くなる。



そもそも人類以外の知的生命体すら受け入れられないと、古今東西の創作物やら何やらが示しているのに、馬鹿な人類は受け止められるとでも本気で思っているのだろうか。



更に残酷なことを付け加えよう。



この既定現実世界、東京都虎ノ門が存在する世界にはソフィア・ワ―レンサットのような現人神(あらひとがみ)を立証していないのだ。




神が捌けなければ、人類種代表であるSoyuzが精査するのが筋というもの。

これは世界の警察やその手下では決して出来ない仕事だ。



「それに私どもが発見してしまった責任がございます。世界にも注視しつつ、こちらも。二兎を追う者は一兎をも得ず……とは言いますが、そうせざるを得ないのです」



「私も貴殿もかなり忙しくなりますな……」



[Writing……]



記入中とテキストメッセージに欄に表示が出る。



[CEO-1・2・3・4・5 承認]



「お忙しい中お時間を割いていただきましてありがとうございます。では私は巡礼に向かいますので……失礼」



改めて制帽を整えると、ロッチナは次の巡礼地に向かった。














—―――――――――――













——U.U(異世界) Soyuz本部拠点



「私の姿を見るのは……久しぶりになるかな、中将」



彼が目指したのは横浜の片田舎から広がる異次元空間とその文明。

そこに建築されたSoyuz本部である。何故来たのか、というのは言うまでもない。




CEOたちの意思決定の通知と現状確認だ。



無防備過ぎないか、と思われるかもしれない。

この次元には電波傍受のかけらもないのをお忘れなく。



何故なら、地球上に異世界に繋がるポータルが実在する真実を知っているのは指折の人数だからである。



「……そうなりますな。ではこちらから現状確認の方を。

まず一つ目、敵対勢力の壊滅に成功。政権を奪還することに成功しました」



「二つ目は既にご存じかもしれませんが戦後処理が残っており、現在実行中です」



「しかし懸念材料もないとは言い切れません」



戦ってはい終わり、とは問屋が卸さない。むしろここからが本領発揮をしなければならないのだ。


軍事政権をギタギタにしたまではいいが、軍隊はそもそも国家や治安を守る存在である。




故に()()()()()()()()()()



そこは考えられており、残存している帝国軍兵士ないし捕虜を釈放して賄う。

さらに動員兵は解散、元の生活に戻ってもらうことに。



市民の会には解散命令を出す予定だ。

彼らはSoyuzに友好的と言っても、武装集団であることを忘れてはならない。



おこがましいかもしれないが、帝国に見合った政治・司法・軍備を支えてやる必要がある。

本来であれば相手の国持ちだが、地球の他国につけ入られるスキを与えるわけにもいかない。



「そうだな……私も悪いニュースを聞きに来ている、そちらのほうを楽しみにしていてね……」



ロッチナは続けろ、と言わんばかりに制帽を傾け権能を見つめた……











—――――――――――











「ナルベルン自治区、という場所があるのをご存じでしょうか」



「左様」



「……県に編入しようと考えてはいますが、何分……」


ナルベルン。

多くの隣国ガビジャバン人が住む独立した領域だ。


悪の巣ゾルターンに接していることもあって、悪逆非道組織ロンドンに襲撃や拠点にされ、挙句の果てには悪将軍ラムジャーが好き放題にしようとした前科がある。



往々にしてこのように目が届きにくい場所は軍事政権の復興を見ている者や反社会的勢力ならびに反Soyuz組織の温床となりやすい。



そこで県に編入し、光で照らすのが全うではある。



しかしながら、差別され抑圧され続けた住民は「帝国による再支配」を望まない人間が多い。

Soyuzが来たが故に自由思想が芽生え、現にラムジャーを許さない市民の会が生まれてしまった。



はっきり言って要注意団体指定されている組織がポッと出るような場所。

いきなり支配します、と言ったら何をしでかすか分からないのである。



何処の世界も自由は非常に難しい問題だ。



帝国もそのことはわかっていたようで、あえて高度な自治権を与えたのだろう。


バルカン半島が火薬庫なら、ここは自爆装置付きのガソリンタンク。



カナリスが「あまり関わりたくない」と言ってきたのも分かるような気がする。

現に、派遣している政治将校も編入には余り良い顔をしていなかった。




「この案件、穏便にしなければ消滅させることになりかねない……どこの世界もそうだが、物事は都合よく進まないものだ……」



仕事はまだまだ終わらない。













—―――――――――――











現状確認を終えたロッチナはこう話を切り出す。



「さて、私からも一つ。戦後処理が済んでから……この様子では数年後になるな。この次元の存在を公表しようと私は考えている」



「Soyuzはボランティアではないことは……今更言うまでもないが、我々も色々と利用させてもらう。しかし地球の国々を土足で足を踏み入れるような真似はしない。国籍・所属……何もかもを審査してから通すと決定された」



Soyuzは都合の良い正義の味方ではいられない。今も昔も、そしてこれからも。

だからこそ、無限大のビジネスチャンスを手放しにするわけにはいかないのだ。



人間に欲望がある限り。



「上部の決定には逆らえませんな……それと、専務がそのようなお考えならば是非とも面会して欲しい人物がいまして……」



軍人の定めとは残酷だ。どれだけ権限を与えられようとも、上には逆らえない。

Soyuzが地球を牛耳る存続していくためにも、莫大な資金がいる。



権能もテキストメッセージしか送らないCEOが全うな判断を下したことくらい理解できた。



そこで、ある人物を紹介することに。



「ほう?」



ある人物……ビジネス、いや商才に長けた人間を一人。

お忘れではなかろうか?


次回Chapter298は5月20日10時からの公開となります。

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