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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
最終章. 神の棲まう城
319/327

Chapter292. Final Stage: Beyond The Shining Rain

タイトル【ファイナルステージ:輝く雨の向こう】


逃亡した動員兵士の群れを突っ切った突入部隊2Fに到達しようとしていた。

想定された上からの打ち下ろしがなかったことからAMOS-VTTから無線が飛ぶ。



【こちらSTAG077からLONGPAT、交代する】



【LONGPAT了解、TANGO008を送る】



本来、AMOSユニットの120mm連装迫撃砲で敵を蹴散らすつもりでいた。

圧倒的な火力にモノを言わせ、焦土にしながら進むのが冴島の考え。



だが実際問題、待ち伏せ攻撃役の動員兵が逃亡。帝国側の作戦が失敗してしまったのである。



それに弾類が榴弾しかなく、あまりにも強力過ぎて主戦力になる味方の兵士を傷つけてしまう恐れがあるのも大きい。


5式戦車は徹甲弾があるが、迫撃砲に贅沢は求められていないのだ。



代わりに来るのはBMPT。



大本になった戦車のボディが大きいために、万が一後ろから攻められた際に盾や敵を追い詰めるのに使える。



ついでにミサイルに機関砲、機関銃が付いて上下左右、自由自在に動かせるのが大きい。



まさに硬い・速い・便利。



前衛・後衛も任せられる頼れる味方にして、この戦いにピリオドを打つ存在だ。



















—―――――――――――














——第2階層





2Fに到達した突入部隊。



しかし恐ろしいまでの空虚さが、このフロアに人間がいないことを物語っている。

ちょうどBMP-Tも合流し、再び進んでいくことに。



ここで兵士がいないと即座に判断するのは三流。

大方敵兵の姿が見えないのは隠れているか、罠が仕掛けてあるかの2つに1つ。



【Copper058からTANGO008、索敵してくれ】



【了解】



目の良い戦車支援戦闘車に敵がいないか探りをかけてもらうが、上り坂であることを考慮するにあまり良い答えは期待しない方が良い。



【TANGO008から各員、敵影発見できず】



やはり実のある回答はなかった。


その瞬間、部隊長が声を荒げる!



「……!——伏せろ!」



既に嫌な予感がしていた兵士が姿勢を低くしていたが、この一言が決め手になった。



———VEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!!!!!!!



一斉に兵士が伏せるのと同時に、熱線が遠方からやってくるのが見えソフィアに直撃する。




その時、不思議な事が起こった。



「小癪な」



飛んできたビームの雨がビニール傘にでも当たったかのように弾かれたではないか!

端的に言えば見えないバリアで防がれた。


人の手どころか魔導であっても、勝手に神に触れようなどおこがましいにも程がある。



そうでも言いたげだ。

兜の奥で口を曲げ、塵でも払うかのように熱線を跳ね除けながら、ゆっくりと進んでいく。



魔導は所詮人間が開発したテクノロジーの一つに過ぎない。

メナキノンはそれを媒介にしてコピーを次々と生み出しているのであろう。



残酷なことに、その程度の足掻きが通用する相手ではない。


()()()()()()



「進め!」



安全を確かめた部隊長は進軍するように命令を下す。


彼とて何が起きたか理解するのには時間がかかった。だが無事なことくらいしか分かり様がない。



どのように理屈をこねようとも、この戦場は道理が通用しない神々の領域。

何が起きてもおかしくはないのだ。



だからこそ考える事を止めて、できる事をする。

それが歩兵としての役目だと信じ、城の石畳に軍靴を軋ませる。










—――――――――――







—――VaaaaRIE!!!VaaaaRIE!!!




次々と光線がはじき返されていく。



歩兵部隊どころか、先頭のソフィアに触れる事すら叶わず、手前で水滴のように吹き飛ばされていった。



一歩、また一歩と近づいていくたびに激しくなっていく光の雨。



魔導の積乱雲の中に閉じ込められてもなお、神に導かれた人々は猛烈な砲撃を受けることなく回廊を登り続けていった。



かの昔、エジプト軍に追い詰められたモーセは海を割って逃げ道を作ったという。

そのような奇跡が、あまりに神がかり的な出来事が。神話が。



目の前で起こっているのだ!

伝説から神話へとはまさにこれ。



想像を絶する。



最早人類の誰一人も理解できないような光景を前に、兵士は言葉を発することも、それどころか考えることすらままならない。



いかにVFXに慣れた現代の人間でも、実体を持った奇跡を前にすれば誰だって固まる。



「……これが奇跡だなんて言わないぞ」



パルメドは自分に言い聞かせるようにバカ二人に呟く。己の中で神はただ一人。

少しこの世界では違っただけ。そう信じ込ませるように。



「じゃあなんだ」



突拍子もなく言うものだから、呆気にとられたグルードはこう問う。



「知るかよ」



けれども進まねばなるまい。それが任務なのだから。













—―――――――――











撃った相手など見当がつく。どのみち魔導コピーしたBMD-4であろう。

メナジオンの効果で消されて焦ったコンクールスが、奇襲でも狙ったのだろうか。



幾度も光を弾き飛ばしながら距離を詰めると、独特のシルエットが浮かび上がって来た。

異様に長い車体に、主砲と脇についた30mm機関砲。



しかしよく見ると幻影のように掴みようもなく、出来の悪いゲームの如く地面からわずかに浮いているのが模造品であることを如実に示していた。



本来であれば砲弾が飛び出てくる場所からおびただしい熱線が飛び出してきたに違いない。



数はざっと見積もって40。

これだけ数を揃えればスコールのような一斉砲火も説明がつく。



「我が軍勢を複製しようとは小賢しい」



ソフィアは酷く苛立っているようで、吐き捨てるように言い放った。

あの中身を実際にこの目で見たことがある。



目の前にいるアレは、外見だけ再現しただけの芸のないハリボテ。



ただあの形をすればよいのだろうと、それだけしか考えのない人間が作った品のない猿真似。



技術者として、神としてのプライドが苛立たせるのであろう。


彼女は無言でメナジオンを一回転し、勢いよく石突を地面に突き立てた!



ZoooOOOOOWMMM!!!!!!



家を根こそぎ剥ぎ取るかのような暴風が吹く様に、オーラが模造BMD-4を襲う。

魔力を消し去られたことにより、たちまち存在を保持できなくなっていく。



幻の中を神が、その後を兵士が突き進んでいった。



VoooOOOOMMMM……



最後には本物の戦車とBMP-Tが通り過ぎることによって、装甲兵器の影はすれ違いざまに書き消えてしまう。



ディーゼルの排気が魔力と空気の境界線を勢いよくかきまぜたお陰で、彼ら突入部隊が過ぎ去った跡には再び空虚が支配するようになる。



何も残らない、神の城。


天への回廊はまだまだ長く、終わりを見せない。


次回Chapter293は5月9日10時からの公開となります。

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