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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
最終章. 神の棲まう城
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Chapter288. Final Stage: a most dangerous trap

タイトル【最終局面:最も危険な罠】


M60戦車ベースの架橋戦車が到着する頃、冴島大佐は最終戦に向けての入念な擦り合わせを行っていた。


だが作戦を埋めるピースはまだまだ揃っていない。



その証拠に、中将から彼に向けて連絡が行く。



【BIG BROTHERからLONGPAT。航空写真の解析結果ついてだが、情報部があらゆる手を尽くしても目標地のみノイズが取れなかったそうだ】



【……LONGPAT了解】



冴島は分かり切っていたような顔をしながら了承せざるを得ない。

やはり敵も航空偵察の脅威を知っているのか、しっかりとジャミングをかけている。



やはり、コンクールスという男は相当な切れ者に違いない。



信用できるのはソフィア陛下が記された構造図と、たった一人逃げ出してきた動員兵の証言だけ。




更には図面が正しければ、出入りできるのははね橋を除いて1つの通路だけ。

それ以外は肉抜き穴のように堀の水で満たされ、侵入することは不可能。



しかも城内部・中庭・通路の順に隔壁されており、絶対通らなければならない。

待ち伏せするには絶好の場所すぎる。



どうしようもないことは一旦脇に置き、懸念される場所はできるだけ潰しておきたい。



そのためには地下の昇降機と、それに繋がる未知領域に地中貫通爆弾を投下したいが、位置が不確定すぎる。



どのようになっているかの構造がそこだけ掴ませない辺り、用意周到だ。



悪足掻きしているのではなく、全力でこちらを殺しにかかってきている相手なのは言うまでもないだろう。


悩みの種は尽きない。



恐らく内部は逃亡者が出始めていることから、戦力は残っていないだろう。

だがこの状況下だったら自分は何を使うだろうか。


大佐はそう考えた結果、たどり着いた答えは一つ。



()()()()()()()()()()()B()M()D()-()4()



何も戦力は兵士だけではない。

軍事政権に軍人至上主義となれば、国家元首そのものが戦力になりうる。



破壊不能のふざけた存在で補えば良い。

盾にならないが強力な火力を持つ存在の、効率の良い使い方は()()()()()一択。



逃げ場のない屋内にて一斉砲火を受けたが最後。大損害が出ることは火を見るよりも明らかであろう。



こうなれば神頼みする他あるまい。

だが大佐は天に拝むのではなく、陛下にあることを問う。



「陛下のお持ちの魔封じの神槍 メナジオン。その具体的な能力を知りたいのですが」



少女よりも御仏のようになったソフィアは容易く答えた。



「その名の通りでございます。あらゆる魔導、メナジオンの力を封じる事ができるでしょうが、まだこの身体も未熟。封じていられるのには限度があるやもしれません」



「どうかお忘れなきよう……」



彼女は自分がどんな立場にいるのか分かっている。

城に入れるのならば都合が良い。



「わかりました。その時が来ましたらお知らせします」



目には目を、歯には歯を。

敵がジャミングをかけてくるならば、こちらも考えがある。



神の力を持っているのは何もコンクールス()()()()()()のだから。



戦場とは敵味方、司令官同士の知恵比べ。

隙のない入念な作戦を立案し、大将の首を取らねばならないのだ。



その道は短いようで遙かに長い。














——————————————












作戦は単純明快。



今ある総火力で城壁を徹底的に破壊し、穴をあけて橋を架ける。

待ち伏せ攻撃・ブービートラップなど上等だ。



橋を破壊されないよう注意を払いながら中庭を制圧して決戦に備える。

不測の事態に備えて車両と機械化歩兵のバックアップは揃えておきたい。



続いて戦力を揃え、陛下に魔封じを行わせた後に突入して制圧する。



しかし神の力を手にした人間は、何をしでかすか分かったものではないのも確か。

刻一刻と変わる戦場を臨機応変に対処しなくてはならないだろう。



難しい言葉で飾り付けているものの、所詮は出たとこ勝負。

やってみないと分からないのだ。



もうこの世の常識さえ通用しない戦場ではどうしようもないのである。



一か八か、確率は二分の一。勝てるか、そして負けるか。

冴島は先の見通せない戦いは好きではない。



作戦にあたる時間帯の天気は晴天なり、されどその先は一寸先も見えない。



しかし時間はやってきた。

冴島は一言だけ無線を飛ばす。



【LONGPATから各員。撃ち方はじめ】



さぁ戦いの始まりだ。















————————————











——BoooMM!!! ——BoooMM!!!



火薬と金属片の百花繚乱。

散りかけの桜が散るように、夥しい機関砲・戦車砲・迫撃砲に機関銃と色とりどりの花びらが一斉に飛び掛かる。



鉛色の華が城壁をあっという間に埋め尽くし、面影すら見えない。



「ミサイルは使うな、主砲と擲弾銃(グレネードマシンガン)のみで対応しろ!」



先軍915の車長であるボゥール曹長は鋭く命令を飛ばしながら、暗視装置の向こう側を覗き込む。

爆発に摩擦、あらゆる熱を帯びているのか壁に穴が開いているのかも知れたものではない。



あれだけ撃ち込んでいるにも関わらず、火の手1つすら上がらないのは驚きだ。

流石に短距離弾道ミサイル(スカッド)を100発近く撃ち込んだゾルターン城の格上だけはある。



ミサイルは貫徹力特化で破壊力はそこまででもない。


手数が強みの915にとって札は少しでも取っておきたいのだろう。

冴島大佐は何が起こるか分からないと暗に言っている。



誘導ミサイルでしか始末できない、どうしようもない相手に取っておきたいのだ。



ZRaaaaAAAASHHH!!!!!DANG!!DANG!!DANGG!!!!!



後方からはCV90の40mm機関砲に歩兵戦闘車らの攻撃が飛んでくる。

そして役目を終えた巨大な薬莢が滝の様に流れ落ちても、なお石壁は綻びを見せないではないか。



まだだ。破壊した()()()()()()()




未来的で不安定なシルエットのAMOS-VTTも背後からひたすら撃ち続けるが、乱射は禁物。



一発砲撃するごとに激しい揺れでもみくちゃにされながら、車長は動じない。



「間隔を開けて砲撃せよ。撃ちすぎるな」



元はと言えば小さくて軽い車体に、無理やり連装120mm迫撃砲モジュールAMOSをねじ込んでいる車両。



モジュールが優秀で、やろうと思えばマシンガンのように乱射し続けることだって出来る。

しかしそんなことをすれば最後。


唯でさえ重心不安定な車体のバランスを崩し、横転してしまうだろう。


一発撃つ事に質の悪い冗談のように揺さぶられるのが何よりの証拠だ。



情け無用、容赦無用の集中砲火が城壁を揺さぶる。












————―――――――












——城内

中庭昇降機




兵士が呟く。

地表で待機し続ける彼は、地下から上へ()()が届いたかを見守る重要な役割を担う。



「きたな……」



壁を今か今かと突き破ろうとする動きは、空気の揺れとなって地面を揺さぶる。

つながった堀の水面は波立ち、こうして地面に立っていても振動が伝わる程だ。



強固な城壁は、文字通り煮ても焼いても破壊できない代物。だがこの力の入れようからして、突き破られるのは時間の問題であろう。



戦いの気配を察知した兵士は地面に設けられた伝声管に向かって叫ぶ。



【上げてくれ!蒸気バルブ最大10!移行は急速落下にて送り返せ!】



【そこから固定解除後、バルブ10から0へ。そこから5で10秒保持、2まで落として次だ!】



敵の勢いは猛烈としか言いようがない。今からでも準備をしなければ恐らく出遅れるのは確実。

兵士のした指示は急速落下という離れ業。



まずはロックを解除。

重力に任せてかごを自由落下させ、上に突き上げる蒸気の力で落下スピードを押し殺して着地する。



一歩間違えればエレベーターそのものを破壊しかねない曲芸だ。



彼らファルケンシュタイン帝国兵士も意地がある。方法を選んでいられるだけの猶予はない。ただ、やることをやるだけだ。



そんなことを考えているうちに射出時のラッパが聞こえ、勢いよく地下から何かがやってくる。



VAAAP!!!!———QEEEEEE!!!!!



蒸気の抜ける音と共にカゴが地上に到着し、急いでロックをかけて扉を開いた。



「よぉし、行ってこい。あとから俺達もついていくからな」



エレベーターから出て来た()()に言葉で背中を押すと、出切ってから周囲を確認する。



扉は閉じた、積み荷はない。誰も近づいてはいない。


脳内にあるチェックリストに印をつけ終わったと同時に、声を上げた。



【ロック解除!バルブ10から0、よろしいか!】



【了解】



支える力を失った貨物カゴは一気に地下奥深くへと消えていく。

覚悟はもう、出来ている。


次回Chapter289は5月3日10時からの公開となります。


登場兵器

・スカッド

ソ連が開発した短距離弾道ミサイル。

1tもの炸薬が数百キロ先から飛んでくる、恐ろしい兵器。あらゆるものを問答無用で吹き飛ばすが、

ゾルターン城は約100発近く撃ち込まれてもなお、原型は残っていた。



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