表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅴ-4. ロンドン海賊殲滅編
293/327

Chapter266. Under the blessing of the Goddess

タイトル【女神の加護の下に】

——エリーシェン島 海岸

火力支援2時間前



撤退を余儀なくされた上陸強襲部隊。

BMP-Tは対戦車ミサイル・機関砲の片方ずつが使用不能、センサー類が損傷と傷だらけで

歩兵は防護力の低いソーサラーを中心に重傷者が発生。



さらに負傷者も出ているなど、原生生物による損害は対ロンドン戦と比べて凄まじいものだった。

火力支援まではどんなに急いでも数時間を有するという。



かくして海岸まで退却していたのだが、そこでも怪生物の魔の手は留まることを知らない。



「おい!後ろに何かいるぞ!」



一人の勇者がBMPの後をつけている「得体のしれない何か」の存在に気が付いた。

細長い、まるで巨大なヘビのような物体は瞬く間に砲塔にまとわりつく。



しかし蛇でも、巨大な芋虫でも何でもない。

何十メートルもある、甲殻を纏った古代のムカデだ!



すかさず市民の会に混ざっていたSoyuzスタッフがM4を構え、長い図体に弾丸を撃ち込む。



BLAT!BLAT!!



「この程度じゃダメか、一体なんなんだ!」



人命を容易く奪うライフル弾を浴びせても、まるで傘についた水滴の如くはじき返された。


それだけではない!


まるでラミアを彷彿するかのように上体を起こし、右にはヤリや鋭利な片刃ブレードを思わせる脚部を構え、左には凶器にもなりうる盾のような足を備えているではないか。



ロジャーは戦慄する。


「こんなにデカいプレウラは初めてだ…!」



プレウラ。

このU.Uに生息する大ムカデの一種で、黒く硬い甲殻に真っ赤な足が特徴の上位捕食者。



竜の子供や小型哺乳類さえも捕食し、時と場合によっては火竜や氷竜とも相まみえる怪物である。


ここまで育った個体は討伐対象にすらなり、ゲンツーのギルドでもちらほらと駆除依頼が届くほど。

ファルケンシュタイン帝国の毒蟲と呼ばれる存在は現実世界の遙か上を行くのだ。













————―












これらの大型生物、俗に言うモンスターとの戦闘では切断魔導「ファントン」が極めて有効。



銃弾が通じない分厚い外皮や骨格を持とうとも、魔法の刃が触れた瞬間分子レベルで切断することができるからである。

それでいて遠距離からも発射可能と、Soyuzを多いに苦しめた。



だが魔竜の不意な遭遇によりかなりの魔導士やソーサラーが負傷したことや、またもや不意打ちを受けたこともあって戦えるのはアーマーナイトたちや難を逃れた兵士たち。



歩兵の次に動き出したのは5式中戦車だった。



「後退しながら右旋回、副砲で狙え」


主砲とはもう一つ別の37mm砲が付いていることがここにきて役に立ったと言えようか。

ただし旋回式の砲塔ではなく車体に固定されているため、丸ごと動かさねば狙えない。



BATATATATA!!!



同時に砲塔固定式の機銃で百足の注意を引き付けながら右折しようとする戦車。

しかし相手は鈍い装甲車や機関銃座ではなく「イキモノ」である。



機銃によって5式の気配を察知したプレウラは、BMP-Tからほどけたヒモのように降りぬけると、ブレードのような毒肢を広げながら中戦車へと牙を剥いた!



あくまでもBMPは捕食のために襲い掛かったに過ぎない。

本格的に危害を加える大きな動体を天敵と解釈したのである!


砲塔に蛇よろしく巻き付くと、内部にいた車長を足が変化したブレードで切り裂いた!


現実世界のムカデの毒牙が脚から進化したものなら、この怪物の毒刃もまた、脚から進化したもの。

その一撃は極めて鋭利!




「グワーッ!!!AH……AGHHHHH!!!!!」



むき出しの神経を思い切り殴りつけたような鋭い激痛が襲う。

この感じは何か極めて悪いモノ、蜂に刺されたのとまったく同じだ!



防盾が施されていたとはいえ、うっかり車長用のハッチに隙間を作っていたのが仇となったのである。



「クソッ……ダメだ、頭が……」



しかも呂律が回らず、身体の自由も効かなくなってくる始末。

傷口は全く持って浅いのだが、骨に染みるような耐えがたい痛みで思考がまるで回らない。



代わりに砲手が無線を飛ばす。



【こちらfifth、車長がやられた!】



「ア……カァアッッ!!!おぉおお……!!!痛ッッてぇ……!!!」



内容には余りの毒痛にのたうち回る車長の声が混じっており、その苦痛は想像を凌駕する。

戦車を乗っていたのに、バチクソデカいムカデに刺されたなど前代未聞だ。



異世界に生息する生物の脅威はこの程度ではまだまだ終わらない。










————―











残されたBMP-T側でも異変が起きていた。



「砲塔旋回不能!」


「どこでもいい、機関砲を浴びせろ!」



獲物として強く踏ん張られ、なおかつギチギチと締め付けられていたこともあって

限界を迎えた旋回装置の配線がやられたらしい。



「とりあえず取り押さえろ!」



BPHoooOOMM!!!! BPHoooOOMM!!!!



ロジャーらアーマーナイトは鎖付きのニグレードを発射し、動きを封じに掛かる。

だが巨大な図体だけあって、何百キロの重装兵が束になってもまだ暴れ続けているではないか。



強烈な重しが必要だ。

いるではないか。



「うおおおお!!!何が蟲だこの野郎!ダンカンこの野郎!」



今、自分の役割を悟った斧マニアもとい、ジェネラルがゲーミング・バトルアックスを掲げながらにじり寄って来た!



———GASHHHHH!!!!!



あまりの叫びに武器が応えたのか、刃から電撃が迸る。

麻痺毒で自由を奪う側から一転。今度は麻痺させられる側へと転げ落ちた。



DATATATATA!!!!



動きが止まったらやることは一つ。

けたたましいエンジン音を立てながら2号戦車が突撃し、砲塔を素早く旋回させ頭を狙う。


機関砲から硝煙が昇ると同時にムカデの怪物は絶命した。









————―









——洋上

——ヴェノマス号


バイオテックに届け出れば新種認定が下りそうな生物と悪戦苦闘している間、時間はアッいう間に過ぎていくもの。



射殺したプレウラと、あまりの痛みで悶絶する車長と一緒に負傷兵共々、中戦車などを揚陸艦へと回送する予定らしい。



丁度付近で待機命令が出ていた戦艦ヴェノマス号は暇を持て余していた。


というのも主砲のシューターは射程があまりなく支援できないこと、そもそも副砲も届かないことあって何もできないのだ。



やる事と言えば弾着観測か、あるいは連絡バイパス役である。

すると見張り役が、空から何かがやって来るのを察知した。



「艦長、空からようわからんのが来ますよ」



BTATATATA……



昆虫のような胴体、古めかしい尾部。そしてハインドとも全く異なる二重反転ローター。

揚力を産むブレードが空気を切り刻みながら通り抜けていく。



異形の中の異形。その正体は艦載ヘリのKA-27PS ヘリックスD。

つまりその背後にはコレを運用する母艦があるということになる。



「巨大艦、来ます」



海に浮かぶ黒鉄の城。

仏塔を思わせる威圧的なシルエットのブリッジ、それは「大和」ではない。



大和を超越するS-BB 001超大和型戦艦 尾道。



人がミジンコのように見える真の火力は、ヴェノマス号の数倍ともある全長300mという枠でも収まりきらない。



壁とも言える装甲で覆われた51cm連装砲という社が鳥居のように構えられ、夥しい対空砲とCIWSで彩られた祭壇の中心に建てられた長く、太い艦橋。



海の阿修羅が降臨したのである。



かつてファルケンシュタイン帝国に戦艦として配備されていたヴェノマス号を餓鬼同然にあしらう壮大さにヒュドラは息を呑む。



「もう少し規模というものを手加減しないか」



そうとしか言えない。

あの禍々しい51cm砲は遠くでもはっきり分かる。

他級の戦艦やフリゲートは見えるか否か、小細工程度にしか見えないにも関わらず。




破格、なにもかもが桁違い、海に浮く絶対城塞。

陳腐な言い方ではあるが、これ以上のナニカを例えるだけの余裕すら与えてはくれなかったのだ。




初めて遭遇した光景がフラッシュバックする。



その際は威嚇射撃だったが、魔導ではとても出せないような爆音が響き、帆まで水しぶきが上がった瞬間が今でも鮮明によみがえって来た。



華やかさをぬぐって現れた、漆黒の影。

ヒュドラは自分に言い聞かせるようにして平常を装うとする。



「こんなのが敵に回ったら何かも終わる。……そんなこと、あるハズがない。だよね、そうだ」



あまり深く考えた瞬間、恐らくシラフではいられなくなるだろう。

旧日本海軍でも成しえなかった武神にして「神殺しの城」ここにあり。









————―









——エリーシェン島

海岸



要救助者を乗せたKA-27は立つ鳥跡を濁さず、と言わんばかりにそそくさと離陸。

尾道による艦砲射撃は森に向けて行われるらしいが、それでもなお危険が付きまとうという。



余波に巻き込まれないよう、プライベート・ローレンスは海岸を離脱。

戦車類は作戦終了後に回収に来るのだそうだ。

兵士たちは破損された車両の陰で待機するように命令が下っている。



「隊長、例の射撃ってどんなものなんです」



尾道を知らない勇者がロジャーに問いかけた。

陸育ちでかつ、機械仕掛けの神を葬り去った所を見ていない人間であれば知らないのも無理はない。



「正気ではない、とだけは聞いている」



事実ロジャーもその通りで、スペック等はある程度知らされているがイマイチピンと来ていないのも確かだ。



【こちら尾道からロジャー、退避完了したか】



【こちらロジャー、退避完了】



【尾道了解、攻撃開始】



軽く受け答えをこなすと、いよいよ砲撃が始まることとなる。


洋上数十キロ地点にいる尾道から一瞬だけ閃光が走ったかと思うと、数秒後に起きたのは爆発どころか、それも生ぬるい地響きだった。



ZGASHHHHHHHHH!!!!!!!!!!!



歴戦の猛者であるロジャーも四つん這いになって退避行動をとってしまう。

着弾地点は侵入口座標のさらに奥。



加えて砂浜には数百メートル離れているというのに、巻き上げられた土砂が波打ち際までにまで落下している。



砲撃の合間を縫って様子を伺うと、かつて林だった場所は地面がむき出しとなっていた。

人間の手がかき氷の山を匙で掬い取ってえぐるように、51cm砲弾は島を抉る。



30.5cmの艦砲射撃を受けても健在だった大木すら、跡形もなく吹き飛ばすことも容易い。


ロジャーは戦慄した。


味方でさえ巻き添えにしてでも消しさる、巨砲の火力を。


Chapter267は12月29日10時からの公開となります。


登場兵器

・超大和型戦艦 尾道

Soyuzの保有する最終火力投射兵器。

51cm連装砲という常軌を脱した超火力を、21世紀のテクノロジーで正確無慈悲に叩き込む。

寄れば重巡の主砲にも匹敵する20.3cm砲の副砲やCIWS。ダメ押しにVLSを装備。


まさに鬼神。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ