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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅴ-4. ロンドン海賊殲滅編
291/327

Chapter264. Ray of hope

タイトル【希望の光】


いよいよ進路を妨げる敵が居なくなったところで、島の制圧に本腰を入れることになったSoyuz・市民の会・ギンジバリス市連合軍。



ヴェノマスに停泊していたラニーミード級揚陸艇 2隻「サージェント・ハートマン」と「プライベート・ローレンス」にも出番が回って来た。



サージェント・ハートマン側にはロジャーを含めたアーマーナイトやソルジャー、勇者などの歩兵が詰め込めている。



一方でローレンスの方は、機甲戦力の5式中戦車や対歩兵用のBMP-T、更には屋内火力支援用の2号戦車が乗員共々積載されていた。



船に乗せられた市民の会所属の兵が支給の高性能双眼鏡を覗き込みつつ、ロジャーに話題を振る。



「隊長、派手にドンパチやってますね」


「そのようだな。……ここまで来るのにあまりに、あまりに長かった」



数十キロ離れているのに途切れることのない爆音、遠方でも見える熱線の雨。

このすべてがエリーシェン島に集約されているのだ。



ゾルターン全域を牛耳り、ナルベルンでの傍若無人な悪行。

ラムジャーと結託しての勢力拡大。


一度は根絶するのは不可能ではないかとすら思えたが、今はあの無人島に全て追い込むことが出来た。



一時は敗残兵と合流され支援を受けた市民の会でも歯が立たないことも。

だがそうやって憎悪をぶつけるのはもうこれで最後である。



ロジャーはどこか名残惜しいのか、しばらく握りこぶしに視点を落とした後、船の汽笛にも匹敵するような大声で部隊を鼓舞した。



「皆、よく聞いて欲しい。

ラムジャーはもうこちらの手にあり、残ったのは邪魔なロンドンだけ。

これがいよいよ我々最後の戦いだ。気を引き締めていくぞ!」



方々から歓声が上がる。

もう盗賊や人身売買におびえなくとも良い未来がこの手に出来るのだ。



各々の士気はこれ以上になく高い。


しかしロジャーは一人の兵士を指さして、呟く。



「アイツ大丈夫か?」


そこにはファルケンシュタイン帝国式のジェネラル、装甲50mmの鎧武者がいるのだが何か様子がおかしい。



「お、重い……」


数十本の投げ斧にバトルアックス、腕には対装甲斧ニグレード。


挙句の果てにハルバードのようなものに、刃がゲーミングPCよろしく光り輝く謎のマサカリを背負っている始末。



さながら武蔵坊弁慶、だが過積載もいい所である。


そしてトドメを周りの兵士が刺す。



「あの斧マニアの事ですか?ジェネラルの昇格試験を受けてないですよ。無免許なのにやせ我慢してるんですよ、腕は確かなんですが無理しなくたって……」



あまりの爆弾発言に流石のロジャーも凍り付く。



「何!?そんなの聞いていないぞ!?まぁ船に括り付けてしまったから仕方がないな……」


しかし時すでに遅し。

波で動かないようガッチリ固定されてしまっているため、今更動向もできない。










————―









——エリーシェン群島洋上



ブリッジ上に居る監視員が見つけた出入口らしき箇所を虱潰しに砲撃していたヤルス・ワ―レンサット。


いよいよ上陸を行うとあって、ギンジバリス提督は重大な事実に気が付いたのである。



本艦が搭載する主砲の大口径 連装魔甲砲。

猛烈な熱量で水蒸気爆発を起こせる程には強力だが、あまりにレーザービームと同じく指向性が高すぎるのだ。



榴弾のように雑に撃ち込んで薙ぎ払うには難しい。



地下壕などの水分の逃げ場がない場所に撃ち込むのならまだしも、地表だと効果は見込めないことが分かって来たのである。



乱暴に例えるならば、虫眼鏡で黒い紙を熱しているようなものか。

一点に対しての貫通能力は非常に高いのだが、散開させるようにするとこの貫通能力を失ってしまうのがネック。



よって提督側から打診があった。



【こちらYALTHからSOUTH PARK。上陸前掃討には本艦は不適。至急、火力支援を要請する】



【SOUTH PARK、フィッシャー了解】



待ち伏せを受けないためにも、大火力で更地にする必要があるのは言わずもがな。

海上戦力を蹴散らした今、最後の締めくくりへと急ぐ。










————―







——巡洋艦サウスパーク



島付近で敵対勢力を吹き飛ばせるのは事実上、巡洋艦サウスパークだけに限られていた。

艦長ケニー大佐の指示を受け、島の表側を砲撃するにあたり砲術長はすかさず修正をかける。



【こちらSOUTH PARKからヴェノマス号。付近に着弾する恐れあり。観測求む】



【ヴェノマス号了解】



「仰角修正、38度。方位300。距離13000!」




脳から脊椎に電気信号が伝わるように、艦長から彼へと指示のバトンが紡がれていく。


砲の角度をより垂直にすることで、弾は高く飛び、ヘアピン状の軌跡をたどって着弾するのだ。



斜めに投げれば遠くに飛び、上に投げれば高く飛んで付近に落下するソフトボールのように。

装甲を纏った船1隻に相当する重さの砲塔がゆっくりと旋回し、角のように突き出た砲身が天を示す。



続いて砲弾は船底の弾薬庫からエレベーターで装薬・砲弾それぞれ別に引き上げられ、地上まで来ると、カラクリ仕掛けのような装置が、砲尾部に滑り込ませて装填は完了。



棺桶のような鋼鉄の栓により密閉されて発射準備が整う。



ZGAAAAAAAASHHHHH!!!!



船の隅々、それどころか空気すら目に見える程揺さぶる音波の津波。

轟音では済まない振動の塊が響いた。



これこそ他の追従を許さない圧倒的、ひたすら圧倒的な30.5cm砲の力。

火薬が爆ぜる力を一身に受けた砲弾は天高く舞い、そして重力に従って落下する。



その先は島の海岸だ!










————―








——ヴェノマス号



兵の陸揚げを行うのは専用にあつらえられた揚陸艦ではなく、なんとこのヴェノマス号。

旧式艦とはいえ、前線で人命救助をしながら軽歩兵を島に渡らせるという使命があるのを忘れてはいけない。



帆の先端に設けられた籠のような見張り台に配置されていた兵が島の様子を伝える。



「あーいますね、ばっちり待ち伏せ喰らってます!……あとなんか退避命令来てますけどいいんですか!?」



何が何でもこの地の土を踏ませるわけにはいかないのか、案の定待ち伏せられていた。

しかし艦長のヒュドラは慌てることも、騒ぐこともなく指示を下し続ける。



「海岸に向けて砲撃用意!艦を盾にして右舷で小舟を下ろす!とにかく回頭急ぐでおま!……は?退避命令?」



相手はたかが人間の兵士。

火力をもってすれば薙ぎ払う程度、訳ないのだ。


戦艦。旧式ということもあって、照準をより早くつけるためには舞台回しの如く、船ごと旋回させて撃つのが鉄則である。



「——ん?なんだったかな?了解。撃ち方用意——」



伝声管に耳を澄ませるヒュドラ。



「だから艦長!やーっばいっすよ!付近に着弾するんじゃないすか」



その瞬間の事だった。




KA-BooooooOOOOOMMMMM!!!!!!



わずか数百メートル先にサウスパークから放たれた砲弾が着弾したのである。

何もかもが鉛色の煙に消え、巻き上げられた土砂が雨のように降り注ぐ。



煙が晴れると、待ち伏せていた人間は跡形もなかった。

生きているものは何もなく、ただの空間しかない。



これこそ大火力の真骨頂。



槍を発射することしかできないサルバトーレ級戦艦とも、熱線を放つヤルス・ワ―レンサットとも次元が違う事をまざまざと見せつける。



遠くで撃っていることは分かっていたが、一発がここまで強力だとは誰も知らなかった。

次元が違う攻撃に、あっけにとられるヴェノマス号のクルーたち。


そんなことも全く知らない、この砲弾が飛び交う世界の住人 サウスパークのケニー大佐から連絡が飛んでくる。




【こちらSOUTH PARK。損害はないな?弾着観測求む】



【……こちらヴェノマス号。損害……なし。弾着確認、目標は完全に沈黙】




冷静を装ってはいるが、世界の違う戦いに混ぜこぜになった感情が隠しきれていない。

さっさと報告をするとヒュドラは甲板に手を突いて、らしくもない声を漏らす。



「ひょえ~~~ッッ!!おっかね~~~!!死ぬかと思った~~ッ!!」


そうとは知らず、揚陸作戦が始まりを告げたのだった……









————―









——エリーシェン島

——海岸



島に上陸するにはヴェノマス号、「サージェント・ハートマン」「プライベート・ローレンス」の3隻で息を合わせて行わなくてはならない。



ヴェノマスから出発した2隻は無事エリーシェン島海岸に接近し、いよいよ荷物を下ろす作業に移っていた。



丁度砂浜ということもあって、足場は良好。



先にヴェノマス号のボートでやって来た市民の会兵士によって、護衛されながら慎重に装甲車類の陸揚げが始まる。



座礁しないように気を張り巡らされながら船尾についていた壁、バウランプを展開しスロープ状に変形し降車へスムーズに移行。



初陣を防御力に秀でるBMP-T、次に5式中戦車に最後尾に2号戦車の順で続く。


この瞬間も気が抜けない。


敵として見たら、満足に動けない揚陸時が絶好のチャンスであるからだ。



待ち伏せを蹴散らしたとしても、アリの巣のように張り巡らされている地下壕からいつ増援が出てくるか知れたものではないだろう。

ロンドンのようなゲリラ戦を得意とするような敵対組織なら猶更のこと。



突如としてBMP-Tに天から不自然な色合いの光が降り注ぐのを、動きの遅い斧マニアが偶然発見したのである!



「て、敵だッ!!」



この世界では当たり前になった、杖を使った典型的な遠距離攻撃だ。



すかさずロジャーら魔導反射装甲を身にまとったアーマーナイトらがカバーに入り、収束した光は術者の方に向けられる。



BPHoooOOOOMMM!!!!


直後、何の変哲もない茂みに爆風が襲った。

有無を言わさず、BMPの砲塔が旋回して情け無用、血も涙もない機関砲を掃射し敵を排除しにかかる。



DAMDAMDAMDAM!!!



巨大な薬莢が砂浜へとばら撒かれ、やがて元の沈黙へと帰す。



【こちらロジャーからSOUTH PARK、YALTH。火力支援を要請する】



【SOUTH PARK了解】



【YALTH了解】


敵の本拠地に殴り込むということは、裏を返せばホームグラウンドに自ら足を踏み込むことになる。



ロンドンの得意な戦術が最も発揮されるエリーシェン本島。


もう弱かった賊の集団はない。



次回Chapter264は12月23日10時からの公開となります


・ラニーミード級揚陸艦

「サージェント・ハートマン」「プライベート・ローレンス」


アメリカ海軍の揚陸艦。350tの貨物および11人の兵員を搭載し上陸戦をしかけることができる。

重量の増す市民の会の皆さまを搭載するのにも選ばれた。

外洋を航行できるだけの能力を持っており、力強い戦場の生命線と言える。


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