表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅴ-4. ロンドン海賊殲滅編
289/327

Chapter262. Pitched battle

タイトル【激戦】

——エリーシェン島沖24km地点

強襲幻影竜母ヤルス・ワ―レンサット



フィッシャー少将の攻撃許可によって、戦場は大きく動き出した。



「1番、仰角修正。収束率そのまま。冷却急げ!2番砲塔、撃て!」



魔甲式の主砲や副砲を取り仕切るヤルス・ワ―レンサット側の砲術長が声を上げ、ギンジバリスから下った命令に答えようと頭脳を全力で動かす。



VEEEEEEEE!!!!!!



巡洋艦・本艦の射程距離に入り、板を重ねた多角形の連装砲から熱線が放たれる。



手前にある収束率の低い1番砲塔からは、ビームがほどけた無数の細い糸となって空に打ち上げられ、後ろに控える2番からは大きな束となって島に向かって照射。



熱線の着弾は実体のある砲弾とは異なり、着弾地点の木々が瞬時に蒸発するため比較的

分かりやすい。



更に急激なエネルギーの塊が降り注いだこともあって、蒸発の後に大爆発を起こした。

おおよそ飛竜等の発進口に着弾し、大破させたのだろう。



さらに主砲による対空砲火も効果があったようで、天馬の羽が焼け落ちて海面へと墜落していく。


運動能力はワイバーンに勝るが、如何せん高熱に弱い弱点が露呈した形となる。



「弾着確認、敵機、撃墜!」



艦載騎の狩るのは速力と機動力の劣る飛竜とあって、ペガサスを落とせたのは大きい。

小さくとも大きな一歩だ。



【こちらSOUTH-PARK。敵機補足。方位 030数12、距離18000】



それでも撃墜できたのはほんの一部で、次から次へと敵が押し寄せてくる。

敗残兵とあって質は正規軍のように高く、また犠牲をいとわない数の暴力こそロンドンの恐ろしい所。



強みが最も顕著に出るのが上空での戦闘だった。








—――――――








——海域上空




レーダーといった計器類を持たない航空戦力である竜・天馬騎士たちが頼れるのは地上側の情報と、己の目だけ。


それに加えて絶えず入ってくる情報が正しければ、敵の兵力は減るどころか益々増えていることになる。



「キリがねぇ」



発艦したペガサスナイトが高速滑空中にマガジンを変えながら悪態をつく。

45連マガジンを既に2本使い切り、残っているのは75発入りのドラムマガジンが1つだけになってしまった。



前線を張ってくれているバカでかい船やヤルス・ワ―レンサットが狙われても多少なりとも自衛できるが、問題は後方で渡船狩りや救助を行っている駆潜艇や旧式戦艦ヴェノマス号。



彼らにはロクな対空兵装が付いておらず、防御力も高いとは言えない。



けれどもここは戦場、静止して考えていられる程の時間を与えてはくれないだろう。


最悪なタイミングにされたくないことが起きるもので、こちらへと突撃し追撃をかけてくるヤツもいるではないか!



飛び交うガロ―バンの対装甲矢を急角度で躱しながらトリガーを引き続ける。



BLATATATA!!



遠近、2枚抜き。

銃弾の雨を受けたロンドン騎手は力なく海へと落下していった。

弓と違い、タイムラグのない自動小銃のアドバンテージがあるからこそ撃墜できたようなもの。



かれこれ8騎を叩き落したがまだまだ敵が出てくる。

こちらも敵によって既に2騎が撃墜されている以上、空の戦況は優勢とは言えないだろう。



なんとしてでも敵基地と化している島の発艦を止めなければ、攻め込むことはできない。



【こちらBONAN01、後退する】



【YALTH了解】



想像を凌駕する熾烈な戦いはまだ始まったばかり。











—――――――








航空隊の後退に際して、島裏へと回り込んでいたサウスパーク側でも動きがあった。



——巡洋艦サウスパーク



途切れることのない騎士団の群れ。



艦載機も無限に動くことはできない以上、同等かそれ以上の数と質相手にしている騎士たちは後退するという連絡が巡洋艦に届いていた。



弾薬や乗っているのが生き物である関係上、馬や飛竜も疲労するだろう。


では船から出来ることは何か、と考えた時ケニー大佐は対空目標をより重点的に索敵するように命令を下した。



「敵機捕捉、方位070 距離4000」



レーダー手からの情報を元に艦長と言う頭脳が主砲を手足のように動かし、すかさず伝達する。



「方位070、距離4000。主砲。1番、2番。撃ち方用意」



「方位070、距離4000。主砲、1番、2番。撃ち方用意」




元から敵の航空戦力は島の裏側から発進していることは分かっていた。


前から出ていないかというとそう言う事もなく、おそらく正面からの攻撃を避けるための策だろう。



次から次へとやって来る増援を止めるには、ここを徹底的に破壊すれば良い。

それだけのことだ。



飛行場を潰すために爆弾を落とすのと似ているかもしれない。


巨大な砲塔が旋回し、柱のような砲身を島に向けて準備が完了。



「撃ち方はじめ」


「撃ち方はじめ!」



ZGAAAAAAAASHHHHH!!!!—— ZGAAAAAAAASHHHHH!!!!!!!!



鉛色の大爆炎と共に、衝撃波が船全体を揺さぶられた。


巡洋艦サウスパークが持つのは破格の30.5cm砲で、火力だけで見れば戦艦にも匹敵する恐るべきもの。



これが2門6基、一気に火を噴いたのだから堪らない。

放たれた巨大な砲弾は火の鳥の如く島へと飛んでいき、距離を縮めていく。



何キロも飛翔した後に、遠方に大きな柱を上げた。

数十キロ離れた艦上でも観測できるのだから、恐らく着弾した側には甚大な被害を与えていることだろう。



これこそ大型巡洋艦が為せる業だ。



「弾着確認」


しかし大佐は抜かりがない。

敵機が出てくるということは、まだ発進口が生きているか、別口があるということ。



「次、敵機索敵急げ」



「敵機捕捉。方位045、距離39000」



ここで空飛ぶ騎士を叩き落すか封じなければ、後方にいる船が危うい。










—――――――










——後方

——ヴェノマス号



後方につきながら兵を陸に渡すため、島へ接近しているヴェノマス号だったがあるものに遭遇する。



「ヒトです!艦長、どうしましょう?」



「引き上げないといかんでしょ、引き揚げ開始!」



ヒュドラの司令一つでボートが下ろされ、天国から垂れてきた蜘蛛の糸かのように救援がやってきて引き上げにかかった。

甲板に収容すると、どうやら市民の会所属の艦載騎であることが判明。



「死ぬかと思った、ドラゴンナイトの奴はそのまま沈んで助けられなかった……!」



初めに墜落した二人の騎士のうち、竜騎士の片割れは重量からか着水後に助けられなかったという。

どういう運命を辿ったか、言わなくても分かる。



口にするだけ酷だろう。



「仕方がない、あの鎧じゃどう足掻いたって無理に決まってる」



クルーはずぶ濡れの騎士に励ましの言葉を投げかけた。


竜とペガサスでは積載量に大きな差があり、ワイバーンは速度と機動性の代わりに鎧の強化を行って耐弾性を。



一方、軽装で機動と速度を取ったペガサスだが、洋上に墜落すればどちらが優位なのかは火を見るよりも明らかだ。



【こちらYALTH、敵艦発見。距離4000、数3。13-1、4-1。ヴェノマス号近辺。1隻撃沈】



そう無線が飛び込んできた直後。

ヤルス・ワ―レンサットから、こちらに向け後方の3番砲塔から強烈な熱波が飛来する!



VEEEEE!!!!!



光束は距離数キロに迫っていたロンドン所属のフリゲートを一撃で蒸発させ、残った部分が海中に沈んでいった。



「す、すげぇ……」



Soyuzの使う榴弾でも粉砕あるいは、火災が起きることはあるが、まるで初めからなかったかのように消失するのは強力な魔甲砲を搭載しているからだろう。



「絶対ヤバいヤツだよアレ」



それなりに実戦を積んでいるヒュドラも驚きを隠せないが、戦場は刻一刻と状況が変化することを忘れてはならない。



これまで敵艦の存在が確認されていたにも関わらず、艦艇からの報告が上がらなかったのは大回りして討ち取れるものから沈めるため。




速力と機動力に秀でたフリゲートだからこそできる手だ。

しかも射程距離に入らないよう絶妙に距離を取っていたところをギンジバリス提督が察知、即座に沈めたのである。



【こちらYALTH、冷却中につき対処不能】



しかし、これだけの巨砲だけあってクールタイムは長い。

このようなエネルギー砲は通常の艦砲とはかなり異なり、装填の代わりに長い砲身の冷却時間を要するのだ。



【こちら13-1。敵艦を発見。距離——】



【こちら4-1。敵艦発見】



救助で足が遅くなっているヴェノマス号に渡船と対空戦闘で手一杯の4号・13号駆潜艇。


頼れるのは1隻しかいない。


【Monty Python了解】


そんな白羽の矢が立ったのはモンティパイソンだった。










—―――――――










——駆逐艦モンティパイソン



【敵艦発見。方位140。数3。距離3800。24ノットで航行中】



水上レーダーで反映された結果をクルーが報告する。

バラバラに配置されていないあたり、裏をかいてかく乱をかけてきたのか。



考える間もなく次から次に情報が舞い込んできた。



【敵艦より敵機接近、方位140。数5。距離3500】



ロンドンの運用するフリゲートは元来、防御をかなぐり捨てて機動力の高い「海上汎用プラットフォーム」としての性質を持つ。



やろうと思えば簡易的な空母にすることも可能なのだ。


空と海、両方の脅威に晒されながら艦長は決断を強いられる。



「針路140、取り舵一杯。機関全速。対空戦闘用意!」


「針路140、取り舵一杯。機関全速。対空戦闘用意!」



艦長は腹を向けてスキを伺っている敵のフリゲートに垂直になるように指示を下した。

相手側からしても向かってくる敵艦は最大限の脅威とみなす筈。



5機程度ならば囮になり、対空レーダーを備えるサムナー級であればドラゴンナイトなどザコ同然である。



ここが正念場だ。

Chapter263は12月17日10時からの公開となります。


・登場兵器

13号・4号駆潜艇

潜水艦を撃沈するために爆雷を投下するための艦艇。

潜水艦がいない帝国においては多用途船として運用されている。

主武装13号は高角砲、4号は40mm機銃と陸上・対空への武装はそこまで強くないものの、彼らの存在は必須である。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ