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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅴ-3. ゲニフィチニブ要塞戦
278/327

Chapter251. In Purgatory(1/2)

タイトル【煉獄の中で】

栄光も何もかも、炎にすべて焼かれていた。



ゲニフィチニブ要塞はほとんど戦艦と大差ない巡洋艦サウスパークと世界最大、そして火力の権化と言っても違いない超大和型 尾道の全力砲撃を受けているのだから無理はないだろう。



初めは反撃として魔甲砲から放たれる熱光線が暴れ狂っていたが、艦砲射撃が長引くにつれ確実にその勢いは弱まっていったのも事実。



戦況は少し、また少しと狂っていく。



そうして傾き始めた天秤は観測班の目にも映り始めていた。





——————————-






——観測陣地



戦艦と大火力の乱射要塞との間にあるこの観測陣地では、この撃ち合いの中で、いつ巻き添えに合うか肝を冷やしながら弾着確認を続ける。



最初の頃は文字通り逆鱗に触れたかのような様だったが、お互いの位置が割れたことで多少、消し炭になる運命から遠ざかった。



しかし気が抜けないのは同じこと。スタッフの持つ双眼鏡はただ要塞を見つめ崩れ落ちようとする有様を記録し、報告を繰り返す。



【EYE01からFischer man。持ち場を放棄して逃走する敵兵多数あり。敵要塞は士気崩壊を起こし、相当の混乱を生じている模様】



数多の砲台が無残にも破壊されたのだから無理もない。

どれだけ国に命をささげようとも、誰とて死にたくはないのは当然だ。



もはや意味を成さない暗視装置を切って双眼鏡の倍率を上げて見回すと、まだまだ使える砲からも操作要員が逃げ出しているではないか。



どこの世も誘爆は恐ろしい。

魔力に引火した、としか言いようのない有様がそのことを強く裏付けている。



四六時中、爆発と熱光線が飛び交う要塞。

明かり一つない深夜だというのに、まるで昼間の様に見えてしまうのが改めて恐ろしい。



そんな矢先の出来事だった。



「武器を捨てろ!」



陣地防衛用の機銃を構えたスタッフが声を上げる。



照準の先には逃げ出してきたであろう、砲の操作要員たちがいた。







———————-








【Eye01よりLONGPAT。要塞より逃走したと思われる敵兵3人を確保。回収を要請する】



確保されたのは三人の砲兵たち。

操作に徹するためなのか護身用の武器さえ持っていない始末で、どうやら命からがら逃げて来きたという。


これが交戦意思のある敵だと考えると肝が冷えるが、物事は結果が全て。



しかしこの要員たちは助かったことを良いことに、スタッフに愚痴を叩きつけてきたのである。



「司令部は現場のことを分かってねぇからさ、この世の終わりだよ。そもそもな話、対策してんのかってぐらいなんだ。クソだよこの要塞は。遠くにドカスカ撃ってる奴に爆破かなんかして片しちまえ!」



「マジかよ、じゃあぶち抜かれて爆破でもされたら火の海って訳か」



思わずスタッフがそう返す。



これが正しければ、このゲニフィチニブ要塞。


尾道の砲弾自体が並みの地中貫通爆弾と引けを取らないとは言え、火を遮断する防火壁が動作するよりも速く、火の手が一歩先を行くのだろうか。



対策を取っていたとしても、それだけ不安定な魔力中間体を弾として使うには危険すぎるということは言うまでもない。



なんにせよ、遅かれ早かれ大火災が必ず起きることが運命づけられているのだ。



「そうだよ、見りゃ分かるだろ?あんた、司令と一緒で目をどっかで失くしたのか」



それに司令部もそのことを熟知していながら戦闘を続行していることになる。

上層部がヤケになっているとは言え、砲の操作要員が気の毒で仕方ない。



「俺のことをどうこう言うのは勝手だが、その運の良さは大事にしろよ」



そんな敵味方問わない会話が繰り広げられている傍ら、フィッシャー少将と冴島大佐と連絡を取っていた。



【FischerMan 了解】



【LONGPAT了解。捕虜回収に関しては追って連絡する。現状の配置を維持せよ】



【Eye01了解】



観測班の長い一日は終わらない。







——————————








これだけ要塞についた武装を丸裸になるまで破壊すれば、次の段階に移る。



【こちら尾道からサウスパーク。撃ち方止め】



【サウスパーク了解】



こうして砲撃が止むと、今まで相手にされていなかった所、蚊帳の外から連絡が届いた。



【最終弾 弾着確認】



観測部隊が空中を飛来する砲弾が存在しない旨を報告すると、事態は一気に動き始める。



【career01、投下開始】



Career01とは輸送機il-76のコールサイン。

それ即ち。歩兵や戦車の空挺降下、加えて陸上部隊やヘリからの増援部隊が送られてくるのだ!



——要塞上空



奇襲を得意とするエリート空挺兵の投入が遅れたのは、なまじ敵陣が対空能力を持っていたからに他ならない。

退屈のあまり、空飛ぶ鯨は後部についた大きな口がゆっくりと開かれる。



———WEEEL……———



ハッチが開くなり、薄暗い機体内を赤と狂いそうになるほどの極彩色の光が照らし始める。

それでも精鋭中の精鋭は驚くこともなく、淡々と赤い昼空へと飛び込んでいった。


隣のIl-76からは大きな箱状のものが続々と投下されている。



それは乗員を詰め込んだBMD-4。要塞に殴りこむための盾であり矛。

燃え盛る現場の制圧は冴島指揮下の機甲部隊と増援に任せれば良い。



帝都への時間稼ぎのために作られた要塞であることから、長丁場は思う壺。

パラシュートが開き、ゆっくりと高度を下げていく様は飛んで火にいる夏の虫。



ここからが本当の正念場だ。








———————-





——VATATATATA……



一気の数十機のMi-16が飛来する。



同じく火に集まるのは空挺部隊のみならず、通常歩兵を満載したヘリ部隊も含まれているのを忘れてはならない。



彼らに課せられたのは、砲撃のスコールが止んだ合間を縫い、兵員を下ろした後は即座に離脱する過密スケジュールだ。


その中の増援部隊に配属されたグルードは余りの惨状を見てこう呟く。



「こんなんじゃNV(暗視)いらねぇな、骨折り損だ」



何もかもが原型の見えない程に燃え上がり、よくわからないものが爆発する。

そんな光景、各地の戦場を渡り歩くパルメドとグルードにしてみれば珍しくもない。



荷物が軽くなるのは良いことだとしか思わないパルメドは、ふとガンテルに声をかける。



「それは都合がいい。それにしてもお前、いつもの大弓はどうした」



「……入りきらねぇってんで、没収されて銃を押し付けられた。何も没収するこたぁねぇよな」



完全武装した兵士を押し込めるだけ押し込んだこのヘリに、神話か何かから飛び出てきたような巨大な弓は流石に邪魔と判断されたのだろう。


そのことを新品のAK102が如実に物語っている。



兵員を下ろしたヘリは用済みになると、さっさと空の彼方へと飛び去って行った。



秋の夜長だというのに、炎に巻かれた地上はサハラ砂漠のようにじりじりと肌を焼くように熱い。

にじり寄る火災。


足早に制圧しなければ蒸し焼きにされる未来が待っている。


勝利へと傾きつつあるが、戦場に変わりないのだ。









———————-







——BLATATATA!!!!……BPHOOMM!!!



銃声と魔法の残響が要塞を支配する。

恐らく操作要員とは別に、ソーサラーなどがやれ爆発魔導やらを放っているのだろう。



しかし陽炎に隠れて姿が見えず、装甲など欠片もない彼ら歩兵らは魔導士やソーサラー。



それに生き残っていた砲台の射撃に部隊は苦戦を強いられていた。

戦車の援護を取り付けたはいいが、やや時間を要するという。



ユンデルの思う壺で、増援部隊は抗い続ける。



「クソッ!」



爆発を間一髪で逃れてきた歩兵が一人、転がり込んできた。

それどころか雷に隕石、終いには巨大な火柱が追いかけてくる始末。


幸いなことに破壊された砲台の残骸が盾になってくれたが、火力が違いすぎる。



BLATATA!!TATA!!!



グルードや他の兵は何としてでも近づけまいと制圧射撃で応戦するも、銃弾をはじき返すジェネラルが邪魔をする。


これでは砲台陣地を相手にしているのと何が違うのか。



圧倒的な火力と装甲を前にもはや自動小銃では歯が立たないのだ。

これでも良い状況というのだから信じられない。



間一髪で抜け出してきたスタッフにパルメドは声をかける。



「大丈夫か。このままじゃ押し切られる。…やれそうか」



この場において強いのは間違いなく異常な感性を持っているガンテルだ。



「目星はついてる。——アイツだな、こんなドカスカやりやがって」



BANG!BANG!!


AKから放たれた弾丸は見事ソーサラーの脳天を貫き、倒すことに成功。


だが次々と増援がやってきてキリがない。


30発のマガジンをいくつかライフルを持っている兵士と違い、ソーサラーはそれよりも多い弾数を持っている上に、恐らく数は向こうの方が上。



機関銃の様に弾数の多いような火器を手にしていない以上、押し切られるのは明白だ。



もう既に、自動火器が優勢を取れるサービス期間は終わっているのだから。








———————-







強力な魔導を受け続け、兵士の盾となっていた残骸は加速度的に崩壊していく。


時折誰も居ないような方向からも飛んでくることもあって、透明化した敵も迫ってきているのだろうか。


なし崩し的に、ついには新たな遮蔽物を探すために後退を強いられ始めてきた。


そんなジリ貧な状況をSoyuzは許すはずがない。



【Beongae02、援護する】



不死鳥は炎を浴びて蘇る。

火の粉を散らし、まさしくフェニックスのように燃え盛る大地から炎を突っ切って先軍915が現れたのである!



それもたった一両のみならず、T-72などを複数連ねてやって来たではないだろうか!



GAASHHHH!!!!!



優先して排除しなければならない脅威の出現。

すかさず隕石が降り注ぐが、重戦車を凌ぐ防御の前には足止めすることすら叶わない。


当然、仕掛けたからには反撃されることが運命づけられているのは言わずもがな。



ZDaaaAAAAAASHHHHH!!!!!



お返しと言わんばかりに戦車砲が火を噴く!

鉛色の煙が広がっている向こう側からは何も飛んでくることもなかった。



戦車とは本来、歩兵が死に絶えてしまうような攻撃をはじき返しながら「道」を作る存在である。



「進め!」



隊を仕切る隊長が声を張り上げながら車両の背後に付く。

道は開けた。






———————-






——ゲニフィチニブ要塞

空挺部隊降下地点




増援部隊の進軍は遅いままだったが、精鋭の中でも選りすぐった怪物のような練度を持つ空挺部隊相手には足止めは何の意味もなく侵攻を許していた。



BLAM!!!BALM!!!!……DONG!!!



ジェネラルの合間から狙いをつけるために、顔をのぞかせたほんの一瞬。銃弾が脳天に突き刺さり、目減りするかのように次々と倒れていく。


にじり寄ってくる超重装歩兵はすかさず主砲によって即座に排除されていった。



歩兵を支援するBMD-4がついていたとはいえ、装甲車両を操るのは人間。

それだけ練度がモノを言う。



支援砲撃を取り付けると、巻き込まれるような距離にいる敵はこのように蹴散らすが

アリのように湧いてくる相手をいつまでも小銃だの機関銃といったもので倒す訳がない。



彼らには「要塞最深部を制圧する」という大役が課せられているのだから。



内部に乗り込むSoyuzと、それを阻む帝国軍。


炎が全てを焼き尽くす前に、果たして制圧できるのか。


次回Chapter252は10月21日10時からの公開となります

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