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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅴ-3. ゲニフィチニブ要塞戦
274/327

Chapter247. Super Yamato Class BattleShip :Onomich

タイトル【超大和型戦艦 尾道】

———ペノン県ベノマス


きたるゲフィチニブ要塞との衝突。

その入り口であるベノマスにSoyuzの超大和型戦艦 尾道が停泊していた。



ファルケンシュタイン帝国海軍の持つ、いかなる艦を上回る圧倒的な大きさ。

ベノマスの造船所で竜母への改装工事を受けている元コンクールス級戦艦をも子供のように見下ろせるほどだ。



主砲は冗談のような大きさの51cm連装砲が3基6門。脇にはCIWSや連装高角砲がずらりと並ぶ。

各々鋼鉄の猛獣を討ち取っただけはあり、威力や貫通力は言うまでもないだろう。



「あそこまで来ると船どころか島だな」



「奇術師が血相を変えてビビる訳だ」



住人は尾道を指さして口を揃えてそう言うばかり。



それも無理はない。

側舷装甲は嘆きの壁のように高くそびえ立ち、艦橋は禁断の塔のように天を目指す。

それに加え、尾道を動かす乗員たちは雨粒かノミのように小さく見えてしまう。



これを上回れるのはファルケンシュタインの究極兵器こと「オンヘトゥ13使徒」位のもので、いずれにせよ大衆には前例がない。


むしろ映画の撮影セットにしか見えない兵器を見慣れているような人間の方が稀だろう。



だが現在、船の音頭を取る艦長の寺田は不在。

一応ブレーンが空っぽということはなく、代理として副艦長がその座にいるが、やはり気になるのは寺田の居所。



その気になれば世界の港湾都市を廃墟に変えられる数少ない男 寺田は一体どこに居ると言うのか。





———————————-





——ジャルニエ県

Soyuz本部拠点



世界を敵に回してもある程度持ち堪えられる男、寺田は海にはいなかった。

空で輸送機のファーストクラスの椅子に腰かけているわけでもない。


ならば残されたのは陸。

ペノン県にいなければ居所は一つ。ジャルニエ県にあるSoyuzの本部拠点だ!



この頃、大規模な戦闘やら船の補給、整備や調査。時には押し寄せる津波から退避したこともある。

対ベストレオ戦では下手をすれば死んでいたこともあり得るだろう。



だが共通していることが一つ、どのみち「海」にばかり居たことか。

こう考えてみると陸に足を付けて立っているのがむしろ珍しい。



航海士と共にブリーフィングルームに通された挙句、パワーポイントで作成された資料を見ながら会議することなど極めて珍しい。


多くて年に一度あるかないかだ。


早速行われた薄暗いブリーフィングルーム内での会合。

資料に目を通し終えた寺田は意見を述べる。



「モノオキシド河の水深は最大でも18mですが平均値は10.41mだと調査結果が出されている。船を通すにしても、どのみち尾道は無理だ」


「運河の方は平均18.95m。最大では23mという結果が出されていることからまずもって後者でないと遡上は不可能だと考えられる」



結論から言えば「川が浅くて船が通ることができない」の一言に尽きる。

運河の水深がカナリスの証言よりもやや深かったのは、水の力によって蝕まれたからか。



しかし、わざわざ会議が行われ程である。そのまま鵜呑みにして作戦にゴーサインが出る訳ではないらしい。



航海士が口を挟む。



「遡上するにしても、かなり難しいラインですね。理論上可能だと言っても実際に入った場合は違います。波風はありますし、それに砲撃時に座礁してしまう恐れもありまして。このことを考慮すると最低20mは欲しいとは」



現実は物理学の問題のように摩擦係数は0。その他、複雑なものを考えないとするとはいかない。

それに搭載されている51cm連装砲に関しても砲撃時に乗員は退避。


あらゆる機器に爆風から守る防盾が装備しなければ破壊されてしまう凄まじい代物。


これが全て火を噴けば何万トンの船体を揺さぶる事など容易く、勢い余って座礁しましたでは話にならない。



「話を戻しますが、遡上中は常に余裕がない状況なのは確かです。限りなく船体を揺さぶる風が吹かない状況でなければ持ってこれないのをお忘れなく」



何かを配置するのにもこれだけのハードルが立ちはだかる。少しの揺れも許されず、繊細な捌きを要求されるのだ。ただ戦力を届ける、たったそれだけでも。



「だけ」と捉えるか「そうではない」と考えるか。



バラストを全部抜き、出来る限り沈まないよう必要以外の弾薬や燃料を吟味する。かなりの手間がかかるのは明白。

日時的に今からやらないと作戦を遅らせてしまう。



そう考えた寺田は船に指示を下そうとソ・USEに視線を落とすも、作戦の長である冴島大佐が割って入ってしまう。



「水深が深い場所となると、ポイントは絞られてくる。偵察隊からの報告には目を通しただろう。一度に仕留めきれないとこの反撃を受ける、それも主力戦車で構成された機甲部隊が消滅するようなものだ。」



それどころかレーザーポインターを使いながらある物体を指し示す。




「さらに。この5つある四角い構造物だが……究極兵器オンヘトゥ ベストレオに搭載されていた主砲と一致した」


「オンヘトゥ開発班の見解によれば技術検証のために作られた試作兵器だという見解が為されているが、侵攻にあたり最優先で破壊しなくてはならないだろう」



何もかもを蹂躙し尽くす超巨大二足歩行兵器ベストレオ。

その主砲がずらり5門並んでいるという。攻める側にとってみれば悪夢以外の何物でもない。


直撃しなくとも大災害をもたらすような代物だ。

たとえ超大和型であろうとも直撃を受けたが最後、死ぬ。



思わず寺田が呟いた。



「——厄介なことは重なるもんだな」


最初に波状攻撃を仕掛けて即死だけは免れなければならないだろう。



しかしまだまだ安心はできない。


蜂の巣に石を投げれば、熱線で出来たスズメバチの大群がこの尾道に群がってくる。

殺されないためには「常に移動しながら」石を投げるしかない。



巨大戦艦を操りながらネズミのように機敏に動き、それでいながら何十キロ先にある敵要塞の砲台を正確に狙い撃ちにする。


これが太平洋ならいいが、運河という狭苦しい電撃イライラ棒なのが一番のネックだ。



出来るのだろうか。

いや。やれる。



雪だるま式に重なり続ける困難を前に、寺田は決断した。



「確かに厄介事は多いが、誰もそれを不可能だとは言っていないのもまた事実。しかしバックアップが欲しい」



散々死線を潜り抜けていった尾道クルーならば出来る。だがその腕を過信しすぎず保険を掛けておく。



軍隊とはこうしたマンパワーと策謀が重要になってくるのだ。



彼の要求してきた「保険」を前に今度は冴島が渋い顔をし始める。


尾道に匹敵するだけの火力と射程を持ちながら、反撃を受けても耐えられるだけの艦。

唯一の戦艦である尾道以外何があるだろうか。



フリゲートのナジン、重航空母艦の北海は論外として、条件に一致してくるのは重巡洋艦の大田切。装甲があるからある程度は耐えられるが、今度は20.3cm砲の射程が足りない。



何か丁度いいものないものか。



そんな八方ふさがりな状況でも冴島は一切狼狽える様子は見せない。作戦の総指揮を執る彼には、まだ「手」が残っているのだから。


冴島の手にしたカードは一体。






———————————-









——ペノン県ベノマス

——尾道 ブリッジ



艦長寺田の指示を受けた戦艦尾道は、可能な限り身軽にするために重荷を下ろす作業に入っていた。



——Woooomm……——



分厚い装甲版に守られた船倉の奥底で、バラスト水をくみ上げるポンプが蠢く音が響く。

そうして配管に通された水は処理装置を経て、殺菌されてからようやく外へと排出されるのだ。


わざわざ趣向を凝らさなければならないのには訳がある。



錘にするには飲み水以外、最悪汚染されていても船にとってはどうでも良く、海水に潜んでいる貝やカニなどの幼生、それに細菌類など決して馬鹿に出来ない量が含まれているのだ。



帝都を占領する前に、ホンビノス貝やコレラ菌がファルケンシュタイン帝国を乗っ取ってしまっては笑い話の一つにもならない。



逆もしかり。

U.U原産の超巨大エビの赤ん坊を持ち帰らないよう気を付ける必要もある。



ただでさえ検疫に口うるさいSoyuzがこれに目を光らせていない訳もなく、こうして装置を通すに至った。



「主砲の対空砲弾は全部抜きでいいんだな」



「ああ、少なくともいるわけねぇしな」



バラストを放水し少しずつ船が浮かび上がってくる傍ら、乗員が副砲5in連装砲の弾を台車に積んで運んでいた。

箱には養生テープでガッチリと固定され、至る所に火気・衝撃厳禁と記されている。




どこからどう見ても危険物だと一目でわかるお陰で、タバコを吹かす人間やサッカーボールの的にしようと考える輩は近寄ってこないだろう。



最低限の対空装備としてCIWSは必要だが、存在意義が不明な51cm連装用の対空砲は不要と判断されたに違いない。


相方のクルーが何か思い出したのか、台車を引く男に向かって声をかけた。



「言い忘れたが側面の203mm砲はそのままだ」



腐っても副砲である203mm砲は残しておきたいらしい。



「わかってる、変に衝撃なんぞ与えたら俺の骨すらブッ飛ぶかんな……嗚呼おっかねぇ」



準備はまだ始まったばかり。










———————————-







——海上ポータル

アラスカ級大型巡洋艦 サウスパーク



ポータルから飛び出てきたのはゴボウの様に細長い戦艦、いや巡洋艦!


冴島が冷徹に返答できた理由。それはアラスカ型大型巡洋艦の存在があったからに他ならない。



主砲は超弩級戦艦と同じく30.5cm3連装砲を大和と同じ3基9門備える他に、ある程度の装甲と速力を備えている。



魚雷やミサイルなどは一切搭載していないものの、戦艦と見まがうような火力を前にしてみればあってもなくても同じこと。

問題となった旋回性の悪さは舵を増やすという力技で解決し、こうして21世紀によみがえったのである。



言うなれば戦艦でも巡洋艦でもない中途半端な艦。

しかし見方を変えれば、砲撃特化の現代Soyuzためだけに作られたと言っても過言ではない「奥の手」



如何せん特異な船なため、整備や補給に手間取ってしまったのが逆に功を奏した。


時代が変われば、こうして燻っていた兵器が輝き出すこともある。


既定現実世界からU.Uへ出てきた巡洋艦は早速ベノマスにいる尾道へと連絡を取った。



【アラスカから尾道。門を通過】



【了解。座標を送る】



結集していく戦力。戦いは近い……




次回Chapter248は9月23日10時からの公開となります


・登場兵器


超大和型戦艦 尾道

Soyuzの持つ大和を超越した戦艦。巨体に見合わず操舵性が良く、51cm連装砲を備えており

神の名前を付けられた究極兵器すら撃破した「神殺しの戦艦」


アラスカ級大型巡洋艦 サウスパーク

アメリカ海軍の大型巡洋艦。

魚雷などを持たず、巡洋艦としての小回りと弩級戦艦に匹敵する圧倒的な火力を持ち合わせている。

その代償として異様なほど細い船体になってしまったし、時代が進むにつれてミサイルの天下になった今日では役どころが微妙。

しかし、そんな兵器でも砲撃火力が欲しい時には非常に役に立つ。

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