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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅴ-1. ナンノリオン編
257/327

Chapter229. Ghost of Armor

タイトル【幽鬼】


ナンノリオン攻略戦の最終局面、2号機カロナリオ指揮を任命されていた権能中将がなぜ戦線に動きがあったと告げて大隊長の瀬戸に命運を託したのか。



それを知るには時間を巻き戻し、視点をナンノリオン城に向ける必要が出てくる。



——午後1時頃

ナンノリオン城 城門前



空挺降下したエリートたちは防衛騎士団と、その中に少数の深淵の槍が混じった敵部隊を一蹴。

ついにナンノリオン県の中枢である、城前まで来ていた。



だが、すべての入り口が固く閉ざされており、また武装化も進められているのは当然の成り行き。


周辺にはシューターからの大槍や少ないながらも隕石が襲い来る状態で、生身の人間が接近できない状態である。



突撃すれば文字通りのミンチになり、固い城壁が侵入者を拒むのが定石になるはず。



しかしこれはあくまでも何もしない場合の話。

全て破壊し、固い城壁に穴を開けてしまえばすべてが崩落する。



Soyuz側は市街地まで呼び寄せていた冴島指揮の機甲部隊、それにギンジバリス港湾に停泊、避難中の重巡洋艦 大田切の援護を取り付け突入に備えていた。



船が用意できたのはベルハトゥの涙に対し、対艦ミサイルによる破壊が見込めないと判断され、武装を使わず退避命令が出ていたことが大きい。



【こちら大田切。これより援護を行う】



右舷後方、魚雷が搭載されている方向の反対側からハッチが2つ開く。

直後。各発射口から爆炎が吹き出し、それぞれ一本の柱が現れた!



——BLASHH!!!!——GRoooOOOOOOooooooomm………



「宝石」の名を冠する対艦ミサイルP-800である。



垂直に射出された飛翔体は弧を描きながら、ナンノリオン城を目指す。










————————————






——午後1時12分

——ナンノリオン城 正門



【LONGPATより各車。撃て】



——ZDaaaAAASHHH!!!DooNNGG!!!!!



かつての攻城戦のようにヘリコプターから兵力を送り込む作戦ではなく、この城さえも踏みつぶす飽和火力を背中につけて数で押す戦法が取られた。



100mm・120mm問わずあらん限りの戦車砲が壁に向かって、四方八方から浴びせられる。


たった2種類で済むはずもなく、突撃砲の152mmなどが混じり、この場を飾る最もふさわしい言葉は「混沌」の一言。



次から次へと爆薬の雨が横殴りに襲う。



——BooOOMMM!!!!!——


瞬きをする間もなく、城壁は夥しい榴弾が炸裂し、鉛色の煙へと染まった。



城側も、急遽閉鎖したバリケードはこれら破壊の嵐によってすぐさま崩れ去ったが、冴島はここを突入口としては使用しない。



この戦いそのものが奇襲にある以上、頭から尾まで敵の裏を掻く必要がある。

正規の入り口から突入を開始すれば、当然ながら帝国軍側も待ち伏せてくるだろう。



一口でも動きを読まれてはならないのだ。



【こちら大田切。目標到達まで残り1分】



洋上の巡洋艦からの無線が入った。これで車両が入れるだけの穴が空く。



【LONGPAT了解、着弾後突入開始】









————————————






——中庭


——GRooooomm………BooOOMMM!!!!!——



二発のヤーホントが命中し、ただならぬ高さの煙柱が上がった。

狙いすました一撃が城壁に大きな侵入口を作り、次々と空挺兵やBMD-4がなだれ込む。



だが、城にいた兵士もただ茫然としていた訳ではなく、ソーサラーとアーマーナイトを基軸とした衛兵が殺到。



銃声と重魔導が交差する戦場へ成り代わるのにそう時間はかからなかった。


前では車両と歩兵が弾幕を張り、後方にいる兵が装甲戦力の脅威となる重装兵はもちろん上級魔導士を狙う。何もない空間が爆発するその前に。



装甲の合間から顔を出す魔導手を狙い撃ち、BMDについた30mm機関砲が盾役をハチの巣にするのだ。


奇襲を受けながら、簡易陣形を組みながら出撃できるあたり練度は相当なものだろう。



だがSoyuz空挺部隊が持ち込んだ自動小銃、機関銃、そして車両の主砲と機関砲の前ではあまりにも無力だった。


攻撃を受け止める筈の分厚い鉄板も、想像を絶する嵐の前では紙くず同然。



今まではライフル弾の雨だったが、今度の天気は機関砲弾のスコール。

量も、質も、今までとは桁違いなのである。



少しの防御力と数。それによって生み出される比べ物にならない的火力によって蹂躙されていった。



足止め役として、ソルジャーキラー持ちとニースを手にした二人のジェネラルが出撃し始めたではないか。


だがそれも想定の範囲内。


既に彼ら超重歩兵に対しての戦い方は知っている!



——DASHH!!!!!!——DONG!!!!



退避したことを確認した上で、兵士が取り出したRPG16とBMD-4の100mm砲のコンビネーションによって兜を貫かれ絶命した。



押し返しながら空挺部隊の兵士は城内へと攻め入るのだった。







—————————————






——城内



ついに屋内に突入したSoyuz。



内部はアーマーナイトやジェネラルのような重装歩兵を通すために広く、車両を通しても問題ないだけの幅がある。


ただし、遮蔽物は見られなかった。

いざというときの盾はBMD-4にやってもらうのが最適だろう。



遠方からは3連ランチャー「ニース」を持った重装騎士がちらほら見られる。


またソルジャーがマスケット銃を持っている姿も見られた。


更にここで戦闘している中で、アーチャーやスナイパーなどは全く見られず、全てこの銃士で置き換わっているようである。



向こう側も司令部に入られまいと装甲と対装甲戦力を温存していたと見て良いだろう。

銀の銃の貫徹能力は50mm。空挺戦車の防御力では撃破されてしまう。



【こちらGreen Gnome13 敵対戦車兵を優先して排除する】



銃を持っているのは装甲化されていないソルジャーばかり。

おそらく重装兵に気を取られている隙を狙って車両を撃破するつもりなのだろうか。



それが正しければ、真っ先に銃士を倒さねばならないと判断したらしい。



【Green Knocker了解。各員、敵重装兵を全て撃破せよ】



部隊長がそう答えつつ各員に指示を出すと、ついに最後の戦いが幕を開ける、はずだった。








——————————————







Soyuzの歩兵部隊はついに城内回廊に到達。

途中、地下への道が発見されたことで二手に分かれ司令部を探索することに至る。



これまでの戦いでは上か下か、どちらかに司令部があったからに他ならない。

各々車両が配属され、準備は万端。



——城内地下




地下へ至る道でも敵の攻撃は横殴りで襲い掛かる。

これだけ強力な火力が配置されているということは、此処が司令部で間違いはないだろう。



——BANG!!!BLATATA!!!!——



合わせてAKによる三点バーストや車両の同軸機銃で敵を抑え込みながら、空挺兵は奥へ奥へと進軍を止めない。


屋内制圧チームの親玉である彼らにとって、閉所での戦闘はむしろホームグラウンド。



また、数も揃っている好条件も相まってローブを身にまとった敵兵は次々と倒されていった。

そんな矢先。



——Zoom……Zoom…——



火炎柱と雷と大差ない電撃を掻い潜った彼らの前に立ちふさがったのは、4人の超重歩兵ジェネラルだった。



兵の消耗を抑え、援護と言わんばかりにやってきたのである。


地響きで埃を舞い上げ、盾を構えて迫る姿はまるで戦車のよう。



よく見れば3人とも兵士殺しを持っているものの、一人はニースを持っている。

撃たれれば空挺戦車が危うい。



兵の一人がRPG16を取り出し、味方を前に出させた。距離は取れており誤爆の心配はないだろう。



——ZDANG!!!!——



すかさず爆音が木霊する。

HEAT弾は大盾をすり抜けて頸部に直撃。飛び道具持ちの超重歩兵は地に伏せる。



そんな時、BMD側から無線が入った。



【こちらGreen Gnome08 援護する】



【了解】



歩兵の装備だけではこれら50mmの怪物相手には分が悪いと判断した車長は、いよいよ強力な主砲を使う気になったのである。



砲塔が鋭く旋回、狙いを定めるや否や100mm砲と同軸に設置された機関砲が火を噴く。



——DAMDAMDAM!!!——



その威力は絶大。


ジェネラルも盾で防ごうとするが、段ボールの様に貫通していくばかりか衝撃でシールドが弾き飛ばされてしまう。



遮るものは何もない。

兵の持つRPGと主砲が共に寸分狂わぬ精度で放たれた!



二人を同時に始末するも、もう一人残っている事を忘れてはならない。

だが、最新型のBMD-4は自動装填装置内蔵のハイテク車両。



赤外線暗視装置で探し出し、もう一発で確実に敵を殲滅。



敵を徹底的に踏みつぶしながら進んでいく。








———————————————







——城内上層部



上へと通じる通路は警備も薄く、司令部が置かれていない事を察知した兵士たちは引き返そうとしていた。



その際にただならぬ殺気を感じ、兵の一人が振り返るとそこには今までに見たことのない紫色のジェネラルが立っていた。



この男こそ、ナンノリオン将軍にして全ての黒幕。コンクールス本人。



今までに見たこともない神聖な槍と盾。身体からは藍色のオーラがにじみ出ている。



蹴散らしてきた中にこれだけ重装甲の存在は居ない。

すかさず脇に居たスタッフが退避し、対戦車兵が我先にとRPGを打ち込む。



——KA-BooOOOMM!!!——



あろうことか鎧をすり抜け、壁に着弾。


しかし軌道を逸らすだけの横風は吹いておらず、狙いはレティクルの中央に収まっていたはず。

他の兵もAKや車両の主砲で応戦するも、まるで効果が見られない。


攻撃がすり抜けているのだ!



まるで実体のないホログラムを相手にしているに等しい。



その鎧の幽霊はゆっくりと近づきながら軍勢にこう告げる。



「ほう。これがSoyuzなる力か。我々の育てた国がここまで蹂躙されるのも納得がいく」



余裕を見せる亡霊にスタッフは混乱し始める。実弾が効かない、正にこの世の不可思議を目の前にして動揺しない人間などいない!




【こちらGreen Knocker。通常兵器が通用しない敵と遭遇!】



【LONGPAT了解、撤退せよ】



勝てない敵にいつまでも足止めを食う訳にはいかない。

冴島は撤退を指示したが、もう一方、地下司令部へ向かっている部隊からも連絡が入った。



【こちらGreen Gnome08!実弾が効かない敵と交戦中!】



これが正しければ地下と地上、同じ紫鎧のゴーストが現れたことを意味する!



【LONGPAT了解、突入部隊は全員撤退せよ】



一体何が起こっているのか。











———————————————










奇跡、幻影。すべては魔導技術を駆使すれば可能だ。


「「我が名はコンクールス。ナンノリオンの将軍である」」



機関砲、主砲、ライフル弾の雨。


ありとあらゆる総攻撃を受けてもなお、実体がつかめず砲弾はすり抜けていく。



全てはこの男を歓迎するクラッカーの様にしか見えない。


その脇で幽霊はBMD-4に近寄り、辺りを雨が降っているかのように見回して呟いた。




「「ほう。これが話に聞く異端の兵器か。ようやく実物が見れた。捕獲しようとも何時も逃げられていたものだからな。これが見られただけでも収穫としよう」」



そして再びゆっくりと歩き、攻撃されながら近くの空挺兵へ近づくとスリットから指導者的な声色で


語り掛ける。


「「君たちの勝利を認めざるを得ないようだ。帝都で待っているぞ、Soyuz諸君」」



一言を告げると、亡霊は掻き消えてしまっていた…


次回Chapter229は8月19日10時からの公開となります。

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