Chapter216. Common Sense(2/2)
タイトル【コモン・センス】
——地下B2 地下総司令部
上層で戦闘が集結した一方、重装甲のミジューラとGチームと2両の軽戦車らはペノン県将軍コーネリアスが待ち受ける最後の部屋へ突入しようとしていた。
ジェネラルが出撃できるよう広い地下道と言っても戦車が並ぶのには余りにも手狭。
そのため5式とFV101は攻撃を受けないよう本隊と距離を取り、バックアップとして控えている。
歩兵の花道と言えばやはり司令部の制圧であろう。
だが、バージンロードを歩く隊員の顔は険しいまま。
それもそのはず、副司令部での戦いではSoyuz側の戦略を完全にラーニングしていたばかりか、逆手にとって対抗策を取って来たのである。
咄嗟に投げたフラッシュバンで事なきを得たが、これが無ければ間違いなく撤退を余儀なくされたに違いない。
扉前についたGチームが扉を発破しようとした瞬間、見張り役のミジューラが血相を変えて叫ぶ。
「戦車を後退させろ!」
なんと戦車が怪しい光で照らされているではないか!
待っているのは爆裂か流星群、どちらにせよこのままでは死ぬ。
5式とFV101はギアをバックに入れて何としてでも逃げ切ろうとするが、間髪入れず対戦車砲に撃たれたような轟音が辺りに響く。
———GRAAAASHHHH!!!!!——
再び静寂が訪れると、5式軽戦車が鉄くず一歩手前の哀れもない姿になっていた。
【こ、こちらFeather C。主砲・機銃大破。車長以外……負傷。】
数々のジェネラルを葬って来た戦車砲と、軍勢を切り裂く機銃は飴細工のように曲がり、ズタボロになった装甲板が凄まじい衝撃を物語っている。
直撃だけは何とか避けたが、一番装甲が分厚い砲塔正面を掠めただけに過ぎない。
被弾を許そうものなら爆発炎上も辞さないだろう。
それに加え、動かすための乗員も全て負傷し、戦車として役割を果たせなくなってしまった。
そんな状況に気を取られることなく、ニキータはハンドサインを送る。
爆破と同時に隊員がスタン・グレネードを投下。
炸裂した直後トムスがRPGの照準を定めようとスコープを覗いた。
盾を構え、大剣ヴェランダルを持った超重歩兵が二人。中央にいるのが恐らく司令官。
ここで止まればあの戦車の様にやられるのが関の山か。
トリガーを引こうとした瞬間。
照準の先には一人のジェネラルがこちらに向けて剣を向けていた!
「伏せろ!」
咄嗟に武器を捨て、彼は声を上げる。
———BPHooOOOOOOMMMMM!!!!———
強烈な閃光を盾で防いだというのか。
今はそれを論じている場合ではない。
すかさずミジューラがフォローに入るが、剣持ちの大鎧が制圧への道に立ちはだかった。
【儂としたことが此処まで気が付かんとは。コーネリアスの狙いはお前たちだ!】
ペノン県将軍は機動力を限界までに上げるためシールドを捨てて剣を抜き、Gチームに迫る!
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□
戦車というバックアップ手段を潰し、ミジューラを護衛に足止め。肝心のコーネリアスの狙いは最初から「Gチームそのもの」だった。
これまで勝利を掴めてきたのは何も伝説の歩行要塞一人だけの功績とは言い難い。
逆を言えば、特殊部隊を倒してしまえば勝ち目はあるという事実が浮かび上がってくる。
次第に聴覚が回復し始めたコーネリアスは盾を捨てると、背中から柄のようなものを構えた。
すると放水されるかのように光の刃が現れたではなかろうか!
あの光は間違いなく切断魔法ファントン。シルベー城での戦闘で腐るほど見たソレに間違いなかった。
彼らが着用するボディーアーマーを重ねた所で魔法の刃を止められる筈がない。
防刃セラミックを実体のある剣で引きはがし、あのライトセーバーで仕留めに掛かる。
演舞とは違う、最も効率的かつ殺意にあふれた二刀流を前にニキータは呟いた。
「……厄介なことになった」
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□
将軍の脅威はほんの序章に過ぎない。
片手に剣を、片方にはビームの刃を持ったジェネラルがGチームに向けて距離を詰め始める。
思わず放り投げたRPG16に一瞬だけ視線を向けるトムスだが、戦場ではよそ見は厳禁。
視点を敵に向けた時だった。
まるで風の如く距離を詰める3tの超重騎士が迫ってきているではないか!
隊内で最も威力の高い武器を持った彼が、最優先目標として狙われてしまうのは当然の成り行きと言っていい。
50mmの装甲で身を固めた兵は早歩きで精一杯、これだけの速度で踏み込めるのはミジューラ位の化け物。
彼に劣るとは言え、コーネリアスは正に掟破りだ。
それに気が付いた他隊員は40mmグレネードランチャーやライフルで援護するが、雨中の傘の如く弾かれていく。
LAWを使いたいが、命中すれば味方もろとも吹き飛ぶのは確実。
いいモノはそれだけのリスクを兼ね備えているものである。
鏡の様に輝く剣が振り下ろされようとした瞬間、トムスは咄嗟に銃を盾にして軌道を逸らす。
———GEEEEMMM!!!!———
しかし手数は1つとは限らない。
恐るべき速さでファントンの刃がボディーアーマーに触れる。
銃弾の貫通すら許さないケブラー繊維の密林をアイスクリームのように切り裂いた。
間一髪。
最奥のセラミックプレートが魔力を激しく散らして事なきを得たが、これが通常装備だったと考えると今頃スライスされている事だろう。
「これだけでは仕留め切れないか」
コーネリアスはぼそりと呟く。
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□
脅威なのは何も将軍そのものとは限らない。
二人のジェネラルが突破口となりうるミジューラを抑え込んでいた。
2対1、普段なら訳なく鉄屑に変えられるがこの護衛はコーネリアスのお気に入り。
使えるものは全て使い切った今、敵から分捕ったソルジャーキラーなどでは殺し切れないことはよく知っている。
それに奴らはヴェランダルを五月雨の如く振い装甲を殴りつけていた。
貫徹しないとはいえ、対装甲剣の一撃は馬鹿にならない。
したがって受け流す他なく、飛び道具を持たない超重歩兵は動けないままでいた。
「しのごの言ってられん」
一刻も早くコーネリアスを止めねばならないが打開策が思い浮かばない状況。
敵は確実に賢い。
ならば相手の地頭を利用してやろう。
ミジューラは分かりやすく刺突爆雷を抜くと、そこにはすかさず刃が飛んできた。
———ZNaaaAAAPPP!!!!————
圧倒的質量を前に、爆雷の柄が小枝の様に砕けながら叩き切られる。
切り札のアーマーキラーの数は4から減って3。この場にいる連中を片付けるには十分だ。
技を隠すなら技の中。
即座に手にした壁を投げ捨て、暴風のような速度で取り出し弾頭を突き立て起爆。
——KA-BoooOOOMM!!!———
装甲の鳩胸をメタルジェットが貫いた。手ごたえアリ、これでようやく1体か。
余計なところで足止めを喰らってしまったことに変わりはない、いかに時間を失わないかがカギだ。
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□
最後にSoyuzが暴いた箱の中。
そこから飛び出したのは掟破りの災いだった。
早速トムスが餌食になり、ミジューラは手痛い足止めを喰らっており救援に行けない。あと一息、ここでニキータはある決断を下す。
【G Team LEADERから各員、一時撤退せよ】
押すだけでなく、時に引くこともまた勇気。現段階の装備では到底歯が立たない。
既に厄介なソーサラーは弾切れを起こしている以上、数で押せばどうとでもなる。
だがそれはコーネリアスも知ってのこと。
——DAGDSGDAG!!!!!————
追撃だ!
魔甲真空剣の刃を揺らしながら、有り余る装甲を抱えて地を走る!
何としてでもスキを作らねばあのライト・セイバーで血祭りにあげられてしまう事だろう。
当然狙いは指揮官、非実体剣の狙いはつまるところニキータに向けられた。
四方八方から銃撃が飛ぶも、その小さな弾丸はドイツ中戦車の装甲にはまるで意味を成さない、一見して無駄な足掻き。
彼、周りにいる隊員全員が将軍の籠手めがけて一斉に狙いを定めているではないか。
——QRAM!!QRAM!!!……BRASH!!!!
滝を登るかの如くライフル弾は手首から指に、そして剣を貫き火花が散る。
いかに分厚い鉄壁に身を包もうとも、武器そのものは丸裸同然。破壊する事自体は容易だ。
不意に出来たチャンス。Gチームは無駄にしない。
思わず真空剣を投げ捨てるコーネリアスに対し、逆に追い打ちをかける。
CLANK!!!!
銀の剣も数多の銃弾に晒され砂糖菓子のようにへし折れた。
兵装破壊を確認したニキータはハンドサインを出し、トムスは取りこぼしたRPGを担ぎ上げスコープを覗く。
武器を失ったペノン城最後の要塞は手を特殊部隊らに向けるが、ロケット弾と魔法どちらが速いかは明白。
直後、護衛の超重歩兵の背中に大穴が空き、残されたのは武器を失った金属塊ただ一人となった。
「直ちに投降せよ」
G-Team LEADERの冷たい声が木霊する。
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【G Team LEADERからLONGPAT。拠点を制圧しました】
隊長ニキータが城外で連絡を取る傍ら、武装解除されたコーネリアスがミジューラに大槍を突きつけられて連行されていく。
魔導による砲撃に対して何らかの対策を取らねばならない、そう思いながら冴島に連絡を取っていたのである。
【LONGPAT了解。こちらも動き出そう】
【了解】
機甲部隊を引き連れた大佐は遂に工場地帯を突破、帝国第二の都市ナンノリオンに迫る予定だという。
何があったとしても絶対止まらず、何もかも踏みつぶす無停止進撃ドクトリンにより県が陥落すれば帝国の勝ち目は完全に無くなる。
ベストレオや試作2号機のような禁断の兵器オンヘトゥを保有していなければ。
どちらにせよ、戦闘が集結した直後と同じく油断をしてはならないのは同じだろうか。
警戒を続けながらもニキータは手にしたタバコを口に咥えて火を灯す。
休みを取っていた者とそうでないものが入れ替わり、しばしの休息を取っていた。
一見して趣向品に見えるが、彼にしてみれば気力を保つために行う充電のようなものに等しい。
また、分煙と言いながら敵を見張る意味合いもある。
人間ほど何をしでかすか分からない生き物はそういないからだ。
肺に残っていた澱んだ空気を一気に吐き出し、紫煙と共に循環させる。
愛煙家にとって最高のひと時だが顔色は釈然としない。
わかばなるプレーン同様のシガーのせいではない、この感覚は敵が迫っているものに非常にそっくりだ。
既に敵が降伏したにも関わらず。念のためクリアリングをしたのを忘れたのか。
自問自答を繰り返していると、ふと辺りがほんのりと暗くなった。
夏も終わり天気が具突きやすいのがこの頃、雲が出てきたのだろうか。
そう思った彼は天を見上げた。
広がるは雲が太陽を覆い隠し、今にでも泣き出しそうな曇天。
水分をそれほど含んでいないのか、色は鉛色で雷を落とすことはないだろう。
これからナンノリオンに進むSoyuzにとって未制圧地はなくなった、あとは全て踏みつぶすのみ。
そう上手く進むのだろうか。
次回Chapter217は8月5日10時からの公開となります。




