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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅳ-4 .ペノン城制圧戦
241/327

Chapter214. Must be break through!

タイトル【難関を突破せよ】

ウイゴン暦9月18日 既定現実9月25日

——ペノン城 回廊


膠着した戦線、進まぬ展望を打開するには強硬的に出るのも手。


ここは回廊。遮蔽物が少なく魔法や徹甲矢は素通りして侵入者だけに牙を剥くが、構築した陣地が火砲や銃弾から守る始末。



城に配置された兵は各々連携し、同士討ちにならないように立ち回ったのが功を奏し、絶対的な王者であるSoyuzを阻んでいた。



進まねばジリ貧で死ぬ。


最悪の事態を避けるため、一際装甲の分厚い超重歩兵ミジューラは自ら進軍する壁役を引き受けたのである。



地を揺らしているかのような鈍重なオーラを放ち彼は突き進む。



———BRooOOOOWWW!!!!———



3発の火柱が大盾に直撃、炎が砕け散った。



アーマーナイトと同様の厚さを持つ装甲で軽減されたとは言え、手が焼けてしまいそうな熱波が襲う。


だが決して歩みを止めようとしない。



そればかりか背負った槍筒から一本の手槍を素早く手に取り、一回転させてソーサラーに向けて投げた。


なんと恐ろしい反撃速度であろうか。


流星のように進む矛先は、相手に反撃する間も与えず喉仏に深く突き刺さる!

直後、脇にいた敵もGチームの放った銃弾を脳天に受けて次々と倒されていった。



「出てきやがった」



ゴードンの構えるAKの照準はきわめて正確に憎き妖術師が重なる。

広範囲の敵を吹き飛ばす戦車砲を乱射してもなお、姿を現さなかった敵が大勢顔を出てきている現状。



相手にしてみれば、何発攻撃をあてても怯まず反撃してくるジェネラルが一歩一歩近づいてくるのだ。


脅威以外の何物でもない。



敵の牙城は少しずつ綻びを見せ始めていた。







————————————










Gチームは魔法の余波を受けないようミジューラと距離を置いて奥へと進む。


ソーサラーもゲグルネインでは足止め出来ないと悟ったのか、爆発魔道ヴァドムやギドゥールの嵐を差し向けた。



——BPHooOOOOOOMMMMM!!!!——GRRRRRASHHH!!!!!———



凄まじいエネルギーが城の床材を吹き飛ばし、粉塵が煙幕となって味方ジェネラルを覆い尽くす。



「…その程度では裏切り者である儂を討ち取れぬぞ」



常人なら粉みじんに吹き飛んでいる火力を受けてもなお


立っている!


それどころか敵陣に向けて進軍しているではないか。



驚愕のあまり、退避を忘れた魔導使い達は次々と銃殺されていく有様。

先ほどまで追い詰められていたのが一転。



今度はSoyuzが蹂躙する番だ。



——DONG!!!



逃げようと思えるほど知性が残っているソーサラーも、容赦なく戦車砲によって爆殺と隙を生じぬ構え。


撃っていいのは撃たれる覚悟のある者とはよく言ったものである。



しかし帝国軍もミジューラ同様の歩行要塞を持っている事を忘れてはならない。


一人のジェネラルが片手には大盾を、もう一方には対装甲剣ヴェランダルを手に鉄壁に迫る!



すかさずスコーピオンの照準に引き入れたが良かったものの、小賢しい敵はシールドと得物を駆使して誤射を誘う。



「死ねい」



敵はそんな事お構いなし。


Gチームから浴びせられる銃弾を物ともせず、大剣を振りかざしたではないか!



———CRAAAASH!!!!———



鈍重極まりない一撃は猛攻を防いできた装甲を容易く破壊してみせた。危機的状況をいち早く察知したスコーピオン車長は無線機を取る。



【Feather EからG-SHIELD。いつでも仕留められるがメガゾード(敵ジェネラル)と爺さんの距離が近すぎる、離してくれ】



【任せよ】



次の瞬間、飛んでくる横斬撃を蹴り飛ばした。

すかさず敵は剣を持ち替え、盾代わりにするもミジューラが恐るべき勢いで懐に踏み込み腰を落とす。



———GRAAMMM!!!!!———



50mmの装甲、総重量3t以上という破壊的な質量と絶大な運動エネルギーが織りなす正拳突きが超重歩兵の胸部装甲に炸裂。



コンクリートの壁をウェハースのように破壊する一撃、思わず敵も距離を取らざるを得ない。



ほんの一瞬だけ胸部を戦車側に向けた時、戦車たちにチャンスが回って来た。



…DONG!!!……BooooOOOOMMM!!!!!———



FV101から放たれた主砲が直撃。弾頭が潰れながら広範囲に広がり大爆発。



生じた特大級のエネルギーが装甲を引きはがし、飛び散った鎧の装甲が超重歩兵の内側、防御力皆無の胸をズタズタに引き裂く!


自らの装甲が逆に死に至らしめる、英国特有の残虐な粘着榴弾である。



仕留めたことを確かめると、彼はすかさず大盾を奪い、ソルジャーキラーを手に一歩。

また一歩と攻撃陣地へ近づいていく。



強固な要塞は綻びから崩されようとしていた。







————————————










——前線後方 機械化歩兵部隊




Gチームとミジューラ、戦車部隊らによる決死の前進によって、目の上のタンコブ(援護射撃)は潰えた。

それでもなお、敵勇者の猛攻は続く。



「クソッ!」



余りの数と攻勢にパルメドが抱えるPKMも息切れを隠せない。

咄嗟に腰元についた巨大なアーモ・バッグから弾薬箱を取り出し、銃底にがっちりはめ込んだ。



その時である。



弾薬ベルトを麺のように引き出した矢先、彼の目の前に殺気が迫ってくるではないか!



弾切れになれば何もできない事を、帝国兵はよく知っているからに他ならない。

強烈な弾幕も限界があるなら、ガス欠になった所を突けば確実に【倒せる】のだから。



透明が故にどこに振り下ろすか知れたものではない。しかしPALは機関銃を適当に振わざるを得ない。



——GAMN!!!——



マシンガンは剣より長し。


剣がボディーアーマーを切り裂くよりも前に、銃のどこかが鎧に当たった。


その途端、魔法のステルス迷彩は鱗のように剥がれていく。



姿が見えればこちらのもの、グルードによって即座に射殺されるのも当然であろう。

物言わぬ勇者の懐から一本の剣が零れ落ちた。



金目になりそうな鹵獲品を前にしたガンテルの手は何よりも早い。



「奴ら丁寧に弾切れ狙ってきやがるな…おっ、コイツは!ヴァドム剣じゃねぇか!しめた!俺らが弾込めしてるから、お前これ使え!」




「どうやって!」



なんたる無茶ぶりだろうか。

アラビアンナイトの世界からやって来たパルメドに、こんなファンタジー極まりない物体の使い方を知っている筈がない。



訳の分からない物体を使えと言っても土台無理な話。



「上に掲げて!気合い入れて叫べ!じゃねぇと出ない!」



言われるがまま彼は剣を天に掲げ、祈りの言葉を天に捧げた。



Allāhu (神は)akbar(偉大だ)!!!!!」



魔法を凝縮した剣は男の言葉にしっかりと応え、刀身をサーチライトめいて光らせた瞬間。




———BPHooOOOOOOMMMMM!!!!!———



魔法特有の爆音と共に、不可視の勇者が爆風で一掃されていった。

その一方でこちらには何の被害も見られない。



ヴァドムとは装甲車を中破させる威力の爆発という特性だけではなく、その爆発は火薬と異なり、あたかも指で指した方向に広がっていく性質を持っている。



止まって大声を出さねばいけない性質上、敵は使いたくても使えない代物だったに違いない。



Ja(ああ…)…Allāhu…ほんとに出るとはな…全くどうかしてる」



「人の事言えんだろ。あんな武器使いやがって」



ガンテルは慣れない手つきで弾を込めた機銃をパルメドに渡す。


突破口は爆破してこじ開けた。今は進むだけだ。









————————————










一難を乗り越えた機械化歩兵とGチームたち。



ペノン城ご自慢の魔力投射部隊と護衛のジェネラル。

増援としてやってきた勇者を全滅させ、司令部へ踏み込もうとしていた。



それでも時折、小雨のようにヴァドムやギドゥール降り注ぐことを脅威と判断したニキータは、機械化歩兵の一部を差し向け無力化を要請。



司令官が居る場所が分からないのにも関わらず、此処まで的確に指示を下せたのには訳がある。



ペノン城将軍コーネリアスと浅からぬ縁があるミジューラ・フォン・アルジュボンその人が構造を記憶していたからに他ならない。



装甲の英傑より各員に向けて無線が飛ぶ。



【狙撃してくるのは騎士将軍ウィローモの仕業と見て良い。妙に手出しを許せば儂が育て上げた「山」は手が出せん。副司令部は棟の頂上、本司令は地下にある。】



【先に射出器側を仕留めなければ、山は引き剝がせぬ。一兵士で大層な口を叩き申し訳ない】




喉から手が出る程欲しい情報を前に文句をつける側がむしろ無粋というもの。部隊からは質疑応答が全く飛んでくる様子はなかった。



提供が一段落した頃合いを見て、トムスは思わず彼にある質問を投げかける。



「ここの頭と爺さんは身内か何かか」



特殊部隊の人間であれば、身内ですら手に掛ける状況に陥ったとしても確実に仕留めねばならない。


一瞬の迷いが命取りだからである。



ここまで深い事情を知っている以上、止めを躊躇う可能性も否定できない。


ミジューラに限って、と思いたいが彼も50mmの鉄板を身にまとった人間。情のひとつ位あるだろう。


その問いに対し、彼はまるで他人行儀めいて淡々と語り始めた。



「否。教官と最高傑作の弟子。それだけに過ぎん。司令の置き方や何まで全て叩き込んだ。故に辿るのも容易いこと」



同じ手の内ならば先読みすることも可能。そこまでは何時もの石像めいて冷静沈着なミジューラだったが、思わぬフックがトムスを襲う。



「今更同胞が殺せぬ、とでも言うと思ったか。…儂が戦いを教える時は必ず【敵に回った】状況を想定しておる。地獄の中ではかつての同志に引導を渡さねばならぬ事も珍しくはないと知っておろう」




世界が違えば、イギリスの超人軍団ことSASを設立していたことだろう。

ミジューラの非凡さと、修羅を生き抜いてきた重い一言が零れ落ちた。



Soyuzも裏切り者や各諜報機関への内通者を排除する任務もないわけではない。


祖国の人間、あるいはつい先ほどまで談笑していた味方にさえも引き金を引けるか。



それが特殊部隊のメンバーとしてあるべき姿である。



「……ここからは私情になる。構わんか」



「ああ」



「調査によればベノマスの暴君を後釜に決めていたと聞く。

人民は為政者にとって宝。それを搾取の道具にする経験乏しい若君を選ぶとは言語道断」



「当人も悪なのも然り。だが祭り上げた人間…コーネリアスにも責任の一端はあるというもの。絶望の未来へと変えようとした罪は重い。」



アツシが過去に今まで行ってきた統治は決して許されるものではない。



それを指摘し、改善できる立場に居ながら「帝国のため」という免罪符を掲げてみて見ぬふりをした将軍も罪に問われるべきだと考えていた。



仮に断罪するのであれば、何も若人一人に全て背負わせペノン県は一方的な被害者だと決めつけてはならないだろう。



殴って間違っている事に気が付かせなかった為政者側にも相応の罪がある。

正義の執行者にしては手が血泥に汚れ過ぎてはいるが、プライドの欠片がそれを許さないのだ。



ミジューラは最後、人の声で問う。



「完全に仕留める前に聞いておくべきことがある。儂に時間をくれまいか」



「ああ。ただどれだけ早く頭を制圧できるかにも依る。インタビュー時間を長くしたいんなら、相応の仕上げをしろってことだろう」


果たして、彼らは引導を渡せるのだろうか。




次回Chapter215は8月3日10時からの公開となります。

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