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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅳ-4 .ペノン城制圧戦
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Chapter209. Until the battle

タイトル【戦いまでの下準備】

——ジャルニエ県 ジャルニエ大型機発着場


Tu-95のねぐらこと、此処ジャルニエ飛行場では機体にあるものが積み込まれていた。

兵士が積み込んでいるソレは爆弾どころか、殺傷兵器ですらない。



爆撃前のビラである。



帝都のような民間人が多く住む場所を空爆時に、間違って標的である敵軍人だけではなく住人を巻き込んでしまわないように避難を促す目的がある。



第二次大戦で米軍が日本にばらまいたモノが有名だろうか。



当然向こうの言語で書かれたもので、これもPDFファイルから作られたのだから驚きだ。


肝心の内容はというと、表面には帝都を1週間後に爆撃するのでただちに退避せよと言った簡単なものが。


裏面には迫りくる炎と共に【炎は待ってくれないが、爆撃は待ってくれる】といった標語が記されていた。



———QRRRRRRRRRR!!!!!!———



ジェットエンジンが動き出したかのような轟音と共に、4つのプロペラが動き出す。



4つのターボプロップエンジンが産む莫大な推進力を巨体に受け、まるで自動車のようにターンしていくと、広大な滑走路から飛び立っていった。



世界最速にして世界の破滅を呼ぶプロペラ機。それらを遠目から見つめている人間が一人。

ソフィアである。



祖国、それも生まれ育った場所を火の海にされるというのは複雑な想いなのは違いない。

戦争とはいついかなる時代、兵器が使われても残酷なものだ。



どれだけ言葉で取り繕うとも国家規模で合法化されているか人殺しに変わりないのだから。



ミジューラのような人間は大義を後ろ盾に。ガンテルのような熟練兵士ならば考えないか、Gチームのような特殊部隊のように機械的に処理する言った方法が使えるだろう。



だがソフィアはそれのどれにも当てはまらない。彼女の五感はただの人間に過ぎないのである。

例えいくら神の力を最も引き出そうとも、地に立っているのは喜怒哀楽を持った一個人だ。



だからといって現実から逃避していいのだろうか。

かつての彼女なら整備工場に閉じこもって気を紛らわそうとしていただろう。



しかし今は違う。



炎に包まれる故郷、守るべき人間が次々と打ち倒れ自分が守りたい未来を持った民も焼け死ぬかもしれない。



【圧政から救うはずがこんなことになるなんて】



ソフィアはそんな弱音は口にしない。



アイオテの草原でSoyuzに接触して、政権を奪還してくれと言ったあの日からこうなることは分かっていた。



逃げるつもりはない。すべては自分が悪魔の力を借りてしまっただけ。

その罪から逃げることではなく、一生背負っていくつもりだ。



死ぬまで愛すべき祖国の人間に後ろ指を指されてしまうかもしれない。


それでもかまわない。


神に頼ることなく、自身で見出した固い決意を視線に乗せる。

こんな時に限って別のものが頭をよぎるもので、ふと整備班の面々の事が気になってしまった。



これから人ならざる者に身を置く以上、お世話になった彼らに顔を出せなくなるかもしれない。

今のうちにやるべきことをやっておくに越したことはない。



ソフィアは整備工場に向かった。











———————————————










戦車などを整備は前線に近いベノマスにある工場が担う他、出撃に備えてあらかた補給などを済ませていた事から本部にある作業場はひと時とは言え、閑散としていた。



働くスタッフは休憩を取っているのか全くと言っておらず、探してようやく見つかったのが道具や設備の点検を行っていたジョンくらいのもの。



「あぁ、嬢ちゃんか。向こうの戦車博覧会に行ってるかと思ってたぜ。久々に顔見たぜ」



「えぇ」



久々にみた馴染みの顔。二週間の間、ただ悶々と考えており整備班に顔を出していなかった。

これまでの逃避ではなく、自分と向き合うために。


しかしどんな形にせよ、世話になった事には変わりはない。彼もその一人だ。



ソフィアは自分の身に迫ることを話すべく口を開くが、すかさずジョンが割り込む。



「それにしても顔つきが変わったな…わかってる、班長から大体聞いてるからな。教えたろ?報連相。アレの要領だ」



「まぁ…そうだな。ウチら整備班は【去る者は追わず来る者は拒まず】って班長がよーく言ってるぜ。宣伝カーじゃあるまいし。

未来なんて俺達ゃ全く分からん。明日地球が滅亡するかもしれねぇしな。

…あ。嬢ちゃんもなにか言いたげだったな。なんだっけ?」



整備班の面々はとにかく情報の伝達が速い。班長が耳打ちしたのだろうか。


ますます真実を言い出せなくなったが、あえてここでソフィアはこう言った。



「BTRのエンジンはあります?整備していない物が好ましいのですが」



「BTRねぇ……初めてお顔を見た時の事を思い出すなぁ。作戦帰りの奴があるからそいつがあるぞ」



時は迫る。タイムリミットをどう使うか。

ヒトである限られた時間にすることは多いに越したことはないだろう。









——————————————











——本部拠点 ヘリポート



滑走路の一部に作られたヘリポートでは城に突入すべくGチームらが粛々と準備を進めていた。


脇には積載される5式軽戦車が懸架一式の装備を装着され、CH-53Eことスーパースタリオンを今かと待ち受ける。



近くには制空権を確保するための戦闘機MiG29が控え、着実に投下してやろうという固い意志がこれでもかと言う程伝わってくるだろう。



如何せん敵に2週間もの準備期間を与えてしまった以上、これからの戦いは苛烈なものとなってくる。


十分に備え尽くした敵と戦うのならば、こちらも本気でなければはじき返される事も十二分にあり得る話。



当然それは城に殴り込みをかけるGチームら特殊部隊も例外ではなく、張り詰めた空気の中で最終調整を行っていた。



敵が強くなってきている場で、突然装備が言う事を聞かなくなっては死活問題。いくら頑丈でガサツな扱いを許してくれるとは言え、AKは精密機器であることを忘れてはならない。



それに相手とて必死だ。

ジャムなど起こそうものなら、敵はそのスキを突いてきて戦死することだって考えうる。



——GRAH!



ゴードンがコッキングレバーを引き、鋼鉄の部品が生み出す乾いた音が響いた。

次にレーザーサイトの電源を入れて正常に動作するかを確認する。



銃本体についている照準器でも十分に戦闘できるものの、突然点灯しなくなれば少なからず動揺する。



特殊部隊とはいえ、そう言った不確定要素を可能な限り減らしておきたいのだ。



その一方、歩行要塞ミジューラは軽戦車乗員とどう連携するか話し込んでいた。

前線では特殊部隊の盾となる役柄であるため、交流自体は少なくない。



やはり歩兵を支えるという役職のためシンパシーがあったのあろうか。



「今度の城塞戦、あんたならどう兵を配置する?」



「うむ。ソーサラーで攻幕を張り、ジェネラルを進軍させつつ耐久のあるアーマーを突撃させるだろう」



「全滅した保険として軍用火竜を投下するのも考えられる。足止めをしている間竜共々吹き飛ばしても良いかもしれん。儂はこうするだけであって、今までの戦いからするにギドゥールの雨は覚悟しておけ」



仮にも爺さんと呼ばれ親しまれているが、大本を正せば兵法を学び、数多の戦場を指揮した司令官である。


改めて基本戦術をおさらいするのも決して悪くはないだろう。



「……大方そんなところか。ただ火竜が投下されるのだけは本気で勘弁してほしい。徹甲弾を脳天に一発かませばなんとかなるか…?」



「とにかく。まとめて爆破されるよりも前に速達で地獄に送る必要が出てくるな…。

それにアーマーナイトにはどんな武器を持たせる?」



火竜と言った凶暴な大型生命体が差し向けられれば、撃破に嫌でも時間がかかる。

戦車とは違い、貫通出来たとしても活動し続けるナマモノは厄介極まりない。



どのみちそう簡単に通してもらえそうにないと納得しつつ、戦車長はあることを問う。

接近を試みる重装兵に何を持たせるか。



例えるならロケットランチャーを持てば対戦車兵に、爆弾を持たせれば工兵と言った具合に、兵器と人間の根本的な違いは持ち歩く武器によって役割が変わるためだ。




「接近する兵にはソルジャーキラーと板間に剣。その中にニースやダールを持った兵を紛れ込ませる。それにお主らは【ソーサラーの火力と、スナイパーの射程を持ちながら進軍する重装兵】と言ったところ」



「言わせてもらうが儂よりも脅威と見られても不思議ではない。そのことを十分留意せよ。儂も援護を掛けるが限界に達するやもしれん」



飛び道具を持つ者、持たないもの。どちらが危険かと言われれば前者。

事実を突きつけられた戦車長はがっくりと肩を落としながら決心する。



「…最低でも命をあと3つ持ってこないといけないな。RPGが飛んでこないだけマシか。

でもアンタが本腰入れてる以上、俺達もそれに応えないといけないな。戦車の間合いをくぐって来たヤツは頼んだ」


「うむ」


装甲板でいえばジェネラルと5式軽戦車では2倍もの差がある。



当然ながら魔法を受け続ければミジューラよりも速く限界に達してしまうが、こちらには射程と火力いう強みがある。


やられる前に殺れ。

その言葉がこれほどまでに似合う存在は早々いないだろう。


着々とペノン城を攻略するための策謀が出来上がっていく。










—————————————










「それにしても徹甲弾と榴弾を持ち込む羽目になるとは。ダメなら外の砲兵連中に頭を下げるしかねぇ。今更どうこう言ってられやしないし」



1つでも弾の種類が増えれば偏りなく使用しなければならない。


仮に徹甲弾を切らしたとして、その先にジェネラルが出てきて太刀打ちできませんでは何もかもおしまいである。



これ以上ありもしない事を考えていると憂鬱になると思ったのか、車長はミジューラにあることを問う。



「そういえば聞きたかったことが一つあるんだ、いいか?」



「構わんが」



「たしかアンタ、ナンノリオンの将軍だって聞いたことがある。此処を堕としたらそっちに向かうが…平気なのか?」



作戦が成功すれば生まれ育った故郷を陥落させに向かうことになる。


今まで黙って戦い続けてきた訳だが、同志に刃を向ける事でさえ心苦しいというのに

故郷を攻め落とすとなると、その心労は計り知れない。



これが敵からの奪還なら気持ちが良いが、何分相手は自身と同じ国の人間である。



ミジューラは少しばかり俯いて瞳を閉じてからこう答えた。



「祖国の過ちは正さなくてはならない。例えそれが故郷であったとしてもも間違い続けているのは事実。お気遣いを感謝する」



その考えは不動の如し。


無敵要塞は一度心に決めた事を揺るがす事はない。

後戻りできない事など承知の上でSoyuzと手を取り合って戦っている。



例え故郷を手に掛けることになったとしても手を緩める気など更々ない。


迷いは数十年前に捨ててしまったのだから。



———VEEEEEERRRRRR……———


1機の偵察機OV-10が脇を通り抜け空へと飛び立っていった。


格納庫側では緊急時の増援に備えて空挺戦車を積載したIl-76が控えており、戦いの時間は刻一刻と迫りつつある。



「さぁお出でなさった。うだうだ言ってる暇なんてありゃしねぇ」



ブロンコが出ていったという事は、作戦を行う直前で敵地がどんな状態なのか確かめるため。

一種の予兆のようなものに近いだろう。


ここで一気に畳みかけられるか。



次回Chapter210は7月29日10時からの公開となります。


登場兵器

・CH-53Eスーパースタリオン

重輸送を担当しているシコルスキー社のヘリコプター。この世界においては戦車を直接浮かべて運ぶというなんとも珍妙な立ち回りをしている……

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