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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅳ-3. 閉鎖都市【■■■■■】編
221/327

Chapter195. The Knight Strikes Back

タイトル【騎士の逆襲】

秘密工場に突入したSoyuz戦車部隊。


そこは空が常時夕方のように赤く照らされた魔導工場群で、そこかしこに光学迷彩を施された兵が潜む。



二号機の存在は厳重に秘匿され、建造が進む工場の糸口すらつかめないでいたが、北東にあることが判明。



時間を与え過ぎた場合、最悪起動されて全滅か自爆で全て吹き飛ばされることも十分考えられる。6手に分かれた部隊は北東に急行していた。



ボゥール曹長の先軍915とT-55のチームも冴島の命令に従い建造現場に向かう。

道幅も次第に大きくなりはじめてもなお、ゲリラによる隕石と爆発の雨は続く。



軽戦車であれば即座に鉄くずになるような嵐であっても、主力戦車の武装を引きはがす程度でしかない。



「車長、騎兵が出てきました」



「おそらく囮だ。機銃で排除しながら隠れた敵を潰せ」



———BLATATAT!!!ZDaaaaAAAASHHH!!!!



主砲と同軸機銃が唸る。


この手荒な洗礼を受けたボゥールだったが、次第に順応し始め敵が潜む場所が大方分かってきた。

妙な事と言えば道幅が出てきたのか騎兵が出現し始めたことだろう。



【Heavy02、6時方向。敵を発見】



そんな時後ろに先軍915の背後に付いていたT-55が敵を見つけたと報告が入った。


此処までに他の道と合流するような場所はないものの、それなりに幅のある建物間の隙間はある。

恐らくそこから不意を突いてきたのだろう。



すかさず砲身に穴が開いた2号車が砲撃を加えるが何やら様子がおかしい!



———ZGoooOOOAAAASHHH!!!!



耳慣れない異音と共に砲身が千切れたではないか。整備不良、そんなことはあり得ない。

先ほどのソルジャーが放ったニースが砲身に命中し大穴を開けていたのである。


そこに砲弾の威力が重なり、無理な圧力によって断裂してしまった。



【Heavy02、戦闘不能。撤退する】



【Beongae04了解】



こうなれば戦車はただの機銃を積んだデカブツに過ぎない。

足を引っ張らないためにも撤退することを決断した。


後ろから雨のような鉛弾を背に受けながら騎兵を排除。T-55は制圧した隔壁付近へと下がっていった。



頼れる仲間は隣にいる6号車だけだ。次は我が身と思い曹長は気を引き締める。







—————————






——閉鎖都市中心部



この広大な街でも戦車にしてみれば箱庭同然。

機動力の高い先軍915は中心を過ぎ、市街地のはずれにあるドッグへと向かっていた。



相変わらずゲリラの攻撃は留まることを知らないが、足を止めずほとんどの爆発や隕石などを振り切っていく。


最も偏差射撃をしてくるようになったが、分厚い正面装甲に直撃するばかり。

衝撃だけのこけおどしに過ぎなかった。



通路を牛耳るのは二両。左に915、右にT-55といった布陣。

ボゥール曹長は暗視装置にかじりつきながら四方からやってくる敵に備える。



「9時方向に敵」



早速、左の道に戦車と並走する敵を発見。

姿を消していようといまいと関係ない。


くっきりと赤いシルエットがちらつけば敵はそこにいるのだから。



丁度建物があった関係で姿は見えなくなったが、どのみち次の曲がり角で砲撃すれば良い事。

砲塔がぐるりと旋回し次の曲がり角に差し掛かった瞬間、主砲が火を噴く。



———ZDaaaaAAAASHHH!!!!



白煙を濛々と上げていると、鋭い衝撃と共に砲塔内が凄まじい熱気に襲われる。

敵の攻撃を受けたのは間違いない!


しかし一体どこからどのように、どこに当たったのか。


曹長が熱源を頼りにペリスコープで車体後方の様子を伺う。


「火災だ!」


彼が見たのは凄まじい業火が柱となりエンジンを蝕む、戦車乗りとしては至極恐ろしい光景だった。






——————




馬を含め漆黒の鎧に身を包んだ黒騎士は街を風のように走る。


盾の代わりに大剣を馬の腹に携え、銀の銃2丁を携行した攻撃特化型の上級騎士。



9時方向、つまり左側を並走していたはずの騎兵が背後からの攻撃を撃ち込めたのか。

それは簡単なことで、戦車とばったり出くわした後に急転回。



並走するのではなく背後を取ってゲグルネイン弾を一発撃ち込んだのだ。



こちらも向こうも姿が見えたのはほんの一瞬。速度的に相手は並走して襲ってくると思うだろう。

その意表を突いた形となる。


1両の動きを止め、動けない味方に敵は釘付けだろう。

そう判断した彼は馬を二回小突いて指示を出す。



深淵の槍は騎士だけではなく馬ですら選抜されたエリートだ。

言葉を当然理解し、騎手のサイン通りに動く。


送った指示は突撃と一定タイミングで建物の隙間に入り前進の二つ。



その途端、馬は息を思い切り吐いてロケットのように加速していった。

身体にかかる負荷を物ともせず、もう一丁の銃に持ち替えると路地へと流れ星めいて消えていく。







———————————






その一方で先軍915は火災への対処に追われていた。



【Beongae04からHeavy07。攻撃を受け、火災発生中。停車する。——砲塔を前に向けろ!】



ひっ迫する状況。


今すぐでも消し止めたい気を抑えながらソ・USEで相方に連絡を取るが、報告と車内指示が混ざり合っていた。


敵は右にいたはず、なのに背後から攻撃を受けたのか。


生きたまま火葬されるような温度で燃えているなら、エンジンもまともに動かないのも腑に落ちる。


余計な考えがいくつも浮かぶが、今は推理しているような暇はない。

兎も角鎮火しなければこのデジタル戦車は鉄くずと化すだろう。



【Heavy07了解。先行する】



此処で止まっては部隊全員がやられる。

T-55の車長はそう判断したらしく、砲を後ろに向けながら風のように後を去っていった。



「手玉に取られてんのかよ……」



車長は不意打ちを受けた事もあり、AK片手に車長用ハッチから身を乗り出し、周囲の様子を伺う。

視界の狭さは随伴歩兵で補うのが基本中の基礎。


時にはそうは言っていられない時も往々にしてある。

そう言ったときは自分が目とならなくてはならないのだ。







—————————







敵は曲がり角で勝負をつけてくる、必ず。

今まで戦ってきたカンがそう言っている。


車長は右側に向いて迎撃態勢を備えた。万が一背後から追撃されることも考え主砲は後ろを向けたまま。


「俺が何か言ったら3時方向に砲撃しろ」


「了解」



いざとなれば吹き飛ばせるように砲手と装填手に指示を下すと、黒い影がその姿を現す。



———BLATATA!!!——


「来いよクソッタレ、俺だって戦車乗りだ」



躊躇いもなく銃撃を加えるも、深淵の槍は小銃弾を退けるユンデル式魔甲鎧を付けている事を忘れてはならない。


エアソフトガンのボール弾のように弾き返されるが、動きを止めることが出来る筈。


「しまっ——!」



動きが止められない!



———BZLooOOMMM!!!!!———



馬上の敵が銃を構えたのが見えると同時にハッチに素早く戻ると同時に、戦車砲でも受けたかのような衝撃が襲う。

爆発魔道の力を宿した弾丸が炸裂したのだ!



操縦手が叫ぶ一方で、主砲が火を噴く。



———ZDaaaaAAAASHHH!!!!



「履帯がやられました!」



辛うじて損害はないものの、履帯がやられてたら最後。

戦車は身動きが取れなくなってしまう。


ただ主砲が当たればヤツも砕け散る、そう思っていた瞬間。



ハッチを見上げると、全身を黒に塗った騎士が鎮座していた。

おそらく全て読んでいたのだろう。


旋回する砲塔を察知し戦車砲を避け、状況確認をしている間を見て飛び乗って来たに違いない。



こちらが情け容赦なく銃撃したように、冗談のような長さの大剣を社長に振り下ろす!



———ZDaaaaAAAASHHH!!!!………BoooOMMM!!!!———



あわや殺されると思った刹那。

その鎧が目前で砕け散った。どういうことか。


【Beongae04。排除完了】


主砲口からは音速の5倍で駆け抜けるAPFSDS弾が放たれ濛々と白煙が立ち上っていた。

エンジンを派手に燃やされてもなお、先軍915は決して沈黙してはいなかったのである。



【こちらHeavy07。履帯破損につき走行不能。】


【了解。先行する。】


残されたのはボゥール曹長の915だけになった。





————————





装甲部隊は深淵の槍による猛反撃を受けこれまでにない損害を出しつつも、前進することを止めない。



砲身に過剰な圧力が掛かって戦車砲が使い物にならなくなった戦車はT-72が2、T-55が3に。


履帯が完全に切断され行動不能になったのがT-72と55。

これに加え砲身が割けてしまった先軍915が1両ずつ。



この中には火災で丸焦げになってしまったものもいる。



ボゥール曹長の915は時に焼かれ、雷を撃ち込まれ爆発に巻き込まれ続けた結果、外付け武装はほとんどが剥がれ落ちていた。


無事鎮火したため車体と砲塔後部は真っ黒に焦げている有様。



無数にある手数も奇跡的に生き残ったイグラーと同軸機銃だけ。

一件満身創痍に見えるが、戦車砲と心臓部であるエンジンは無事だったため一心不乱に建造ドッグに向う。



ちょうど居住区の中間を切った辺りだろうか。

人が住んでいるような建物は次第に減りはじめ、その向こうにはおびただしい数の足場が姿を現した。


天井に達する程高いソレは廃屋に茂るツタを思わせるには十分。



中に何があるか垣間見ることはできないが、考えるまでもない。

2号機が作られた現場に違いない!



「正面に敵、騎兵です」



「踏みつぶせ」


砲手から報告が上がる。

赤外線越しとペリスコープで確認すると色が黒くないただの騎士だ。

曹長は跳ね飛ばすよう指示を下す。


後には工場の制圧援護を行わなくてはならない。

こんなところで無駄弾を使ってはいられなのだ。



重量差80倍。

軽自動車と40tを超える戦車では勝負にならなかった。


——BPHooOOOMM!!!———


たとえそれがソルジャーキラーを受けても変わることではない。

圧倒的な質量が馬とその上の騎手を粉砕しながら撥ね飛ばした。



冗談のような吹き飛び方をした騎士は壁に打ち付けられ鎧がアルミ缶のように拉げており、その中身は想像することは止めておくべきだろう。



迫る建造ドッグ。

この地下都市は此処の為だけに存在していると言っても過言ではない。



近づくにつれベストレオ2号機だけではなく周辺には細々とした部品でも組み立てているのだろうか、街中の工場とは一線を画す異様なコンビナートがあることが分かる。


それに敵も街にいることを止め、工場を防衛するために引き返し始めていた。



黒い騎兵の姿を見えず、冴島大佐や他戦車が苦難の末に全滅させたのだろうか。



【LONGPATから自動車部隊各車、突入開始】



冴島から戦車隊が通って来た制圧ルートを通って突入を開始せよと命令が下る。

ようやく戦いは折り返し地点を迎えたことを意味していた。


いくら火力で破壊することができても制圧が出来るのは歩兵だけ。

主役の座を譲り、今度は援護を主体とする裏方に徹する。



槍先が突き刺さり、ついに落ち武者のような姿になりながらも915は先を急ぐ……

次回Chapter196は6月10日10時からの公開となります。


・登場兵器

銀の銃

最高ランク、銀等級のマスケット銃。

50mmの鉄板を貫通するゲグルネイン弾は貫通して燃える、恐るべき魔法の「徹甲焼夷弾」

極めて高い性能の代償は異常なまでの高価格なのだが……。

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